花のれん (新潮文庫)

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著者 : 山崎豊子
  • 新潮社 (1961年8月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104034

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花のれん (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 商いに生きた女興行師の生涯を描いた、直木賞受賞作。

    楽な方についつい流されてしまう弱い夫を持った多加の、誇り高く、魂を削って商いにすべてを捧げた生き様が圧巻です。
    正直、そこまでする?という程の努力と気遣い。

    多加の才覚ももちろんありますが、事業を大きくしていった根底にあったのが、人との縁でした。
    たしかに運もあったんでしょうが、人との縁を作るために、待たずに行動していったところに運を呼び込む鍵があったように感じます。
    人との縁を作るための多加の努力がいじらしい。
    最近こんな風に脇目を振らないで何かをひたむきに頑張るってことがないな・・・とふっと自分を省みたり。

    多加は自身の生き方を、独楽に喩えているんですよね。
    “わてみたいな商売人は、独楽みたいなもので、回っている間だけがたっているので、動きが止まった途端に倒れますねん、商人て何時まで経っても、しんどいものだす“ (p257)

    多加の人生は辛いことも多くて、決して楽な人生ではないし、本当に走り続けることしかできなかったんでしょうが、そうすることでしか手に入らないものは確かにあるだろうし、ある場面は涙なしでは読めません。

    この小説の魅力の1つは、なんと言っても大阪弁。
    商業言葉である大阪弁の、なんとも複雑豊富なニュアンスを持つ巧みな言葉であることか。
    本当に言葉が美しくて、特に商いの交渉場面は必見です。

    商いに生きたとはいえ、損得勘定のみを考えるではなく、常に「人」を大切にしていた多加の生き様は、いつの時代も人の心に響きます。

  • 大正から昭和にいたる大阪の寄席を舞台に、一からはじめた世界で、席主としてどん底からのし上がっていく「御寮人」多加の半生を描く痛快小説。
    最初は細やかな文体と大阪弁と寄席独特の用語が馴染みにくく少し読みづらかったのだが、慣れるてしまうと、上げ潮な展開もあってとても面白かった。
    山崎豊子さんらしく詳しい下調べに基づいていると思われ、寄席の世界についての描写もとても興味深かった。
    大阪商人の才覚とど根性があますことなく描写されるのだが、独特の大阪弁の言い回しが大変面白く、商魂の中にも和やかな雰囲気を醸し出している。
    多加の周囲でそれぞれ活写される登場人物もなかなか楽しい。儚い心を抱く市会議員の伊藤や息子久男との微妙な関係など、商売の合い間にみせる女性多加の人間味あふれる心の葛藤や、多加を助ける番頭のガマ口をはじめ芸人や客との会話など商売を彩るエピソードが盛り上がり、全体として豊かな人生を描き出せたといえよう。
    笑いを商売しているだけあって、物語全体としても大らかな楽しさに満ちており、ずっと続いていてほしいと思った小説であった。

  • 「暖簾」を読んだ方は是非セットでこちらもどうぞ。

    先代から継いだ呉服屋を寄席道楽に耽って潰してしまう、あまりにも頼りない夫を支えて大奮闘する女興行師の物語です。いっこうに商売に身が入らない夫に呆れ、いっそ道楽を本業にしたら働くかもしれないと一縷の望みを託した多加の勧めで寄席を買った夫は、冒頭で借財を残したまま妾宅で死亡します。控えめで大人しかった多加は他人の好奇の目をふりきるかのように、前作の「暖簾」父子もびっくりの気迫で金儲けに邁進します。

    金持ちになって見返してやりたいわけではなく、ましてや芸事が好きなわけでもない主人公は、ただただ反射神経だけで毎日を切り抜けていきます。そこには未来も正義も救いもあったものではないのですが、絶望している暇もないほどの爽快なスピード感です。そして何かに取り憑かれたかのように商売をする間も、人情の機微を忘れず、お客さんと芸人さんと使用人たちを大切にする多加には自然とお金が集まってきます。

    目まぐるしく飛び交う大阪弁は、えげつなくずけずけと言い合っているようでも見苦しくなく、テンポよく商談がまとまっていきます。大阪弁の威力に圧倒されること間違いなしです。「暖簾」に引き続き、生粋の大阪人を自負する著者の思い入れの強さを感じた作品でした。

    女主人公ということで、淡い恋心、息子とのすれ違い、息子が頼りにしている女中に対する嫉妬なんかもちょこちょこ挿んであるものの、やはりメインは女商人のど根性。細腕で采配をふるう多加を見るにつけ、頭下げて這いつくばって恥も外聞も捨てて、商売で身を立てていくとはどういうことかを、ひしと感ることでしょう。戦前の上方の寄席小屋や大阪商人の世界が生き生きと描かれていて、春団治、松鶴、エンタツ・アチャコなど、芸人さんが実名で登場しています。漫才・落語に詳しい方にもおすすめです。

  • 吉本の創業者、せいをモデルにした話であるが、作者の創作がなせる最後である。 凄く古い本ではあったが、テレビで
    ドラマになると言うことで、ちょっと読んでみた。やはり波瀾万丈の時代と活躍で、あの時代を生きたことがよく分かる。今の吉本の基礎を作った人であるとこの本からも読み取れた。結構終わり方も良い。

  • 吉本興業を起こした女主人 多加の物語。女である事が、今よりずっと不利であった時代に、その才覚と根性で笑の世界でのし上がっていく。大阪弁でポンポンと物語が進んで痛快だが、ラストは悲しい。仕事に全てを賭け、好きな人と結ばれる事も諦めた。戦争の陰が大きくのしかかり、全てを失ってしまう。その後が知りたい。

  • 最初は面白かったんだけど。
    うーん

  • 2017/08/15
    次の朝ドラと同じ人がモデルになってるってことで読んでみた。
    大阪弁の響きがいい。
    人に笑いを届けるために、ここまで人生をかけて働いた女性がいたなんて。
    今当たり前にあることが決して当たり前ではないんだということを改めて思う。

  • 大阪船場女商人,喪夫之後一個人獨立繼續寄席的生意,發揮商才和商魂到極致,但是也放棄與伊藤之間可能的幸福和與兒子的相處時光,不斷被時代和心中的商魂推著前進。之前讀山崎的書情節都相當有趣因此過度重視情節,但沒想到這本書潛藏的吉光片羽的文學性令我相當感動,或許這是一個很適合作者的題目。多加和伊藤之間情愫也寫得相當出色,再來是角色造型和勇猛的商魂和寂寞、哀愁,都讓讀者很順利地對她產生感情移入,是相當傑出的塑形,而旁邊的配角例如ガマ口、師匠們、伊藤、茶子....等等都令人印象深刻,大阪弁的對話活靈活現,閱讀過程很是享受。這本書絕對是本名作。

    此外,這本書解說特別提到作者曾說的大阪弁的性格,很適合商業談判,以標準語來說會太過露骨尖銳但是加上大阪弁獨特的柔軟和まだるさ以及融通無礙的巧妙的曖昧,就可以圓滑不衝突地達到商業目的,但是對於心理獨白、ラヴシーン就很弱,用大阪弁來獨白,就會失去心理上的緊迫感(哈姆雷特的那段話就無法用大阪弁來說了)。作者的這個發現饒富興味,方言的生命力和個性,總是無比地吸引著我。

  • 「取り落した仕付け糸の端を、ぴいと抜き取った」
    155頁は感激で深い意味を持つと感じ入った。
    白の喪服・・・・もはやこの日本には、これを着る人は居ないだろうと思う。その意味を知る人も…
    山崎さんはド根性物は書けても恋愛ものはきっと書けなかっだろうナ 唐突的に登場する伊藤でそれを感じる

  • 吉本興業の創業者、吉本せいをモデルにした多加の一代記。プロの経営者の生き様が溢れ出す。

  • P319
    直木賞 受賞作品

  • 20160416
    徹底的に商いに全てをかける姿はなかなか真似できるものではない…。。

  • 2015年4月26日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「咲く」。

  • 最後まで読んだとき全身が粟立つのを感じた。ここまで一人の女性が全てを投げ打って商いに身を投じられるものなんだろうか。多加の女性に対する視線はいつも冷ややかで芸人たちに対するそれとは真逆にある。確かに彼女は一代で途方も無い財を築き上げたのだが、それって本当に幸せだったのだろうか・・・と考えてしまった。女手ひとつの成功譚などとキラキラした言葉でくくってはいけない様々な悲哀が描かれた素晴らしい作品だった。
    『白い巨塔』、『華麗なる一族』の次に私の山崎豊子お気に入り作品にランクイン。

  • 第39回(昭和33年度上半期) 直木賞受賞。
    吉本興業の創業者、吉本せいさんをモデルにした作品だと言われています。大阪弁がこんなにも面白いものだということを、この作品を通して知りました。大阪弁は商いのことばともいわれますが、大阪弁が持つ独特な訛りが大阪という町で生まれ育った人の根底を作る文化だと思いました。大阪弁で怒れば、怖さが増し、褒めれば温もりを感じます。特に、登場人物が使う大阪弁でのお礼の言葉は、大阪人にしか使えない言葉であり、大阪人の気持ちを見事に表す言葉だと感じました。作品の内容も女性の商人で活気あふれる様子が手に取るように感じますが、大阪弁の面白さを最初から最後まで楽しめる作品という印象が強かったです。

  • 直木賞受賞作とはいうが、それほどのものではない。淡々とした印象。人も地味だし、ストーリーも地味。創作でもいいから、もっと恋愛模様などがあっても良かったかな、と思う。

  • 読み出してふと、「山崎豊子作品は毎度モデルになる人物がいるよなぁ。この作品もそうかしらん?」と調べたら、吉本興業の創設者(夫が創設であるが、実質彼女が創り上げたものだ)だった!新喜劇大好きなあたしとの縁を勝手に感じつつ読んだ。大阪・船場・商人街…目から活気が伝わるテンポのいい展開。多加の先見の明、判断力、冒険心。どん底から大成功への駆け上りが気持ちよかった。こんな人になれたらなぁ、、度胸のない自分と比べて辟易してしまった…。
    議員:伊藤との何とも言えない微妙な関係が甘くも悲しかった。伊藤との結末に多加は後悔していたけれど、彼女の選択は間違ってなかったのではないかな。情熱家だけに恋にも燃えて、仕事が疎かになった気がする。頭の中は常に仕事のこと。伊藤も含め息子や、身近な人からしたら決して良いことばかりではなかったであろう。最期は多加が希望していた通りに逝く。すごいパワーの女性だ。

  •  吉本興行創始者の自伝ならこれでよいはずなのだが・・・『不毛地帯』やら、なんだかんだと読んでしまうと、どうも中途半端な感じがして物足りない。自伝小説の枠を超えて、これから吉本興行(らしい)はどうなるのということろに興味がわく私なのである。

  • 知らない時代背景、特に戦前〜戦時中の物語は苦手なのだが、ありありと想像しながら読めたのはやっぱり山崎豊子氏の筆力なのか。
    当時の通貨価値や、白い喪服を着る意味など、調べながら読んだので時間はかかったが、学び多き一冊、楽しかった。

    あとがきにもあったが、多加さんのまさに「ド根性」に頭が下がる。
    その商才は本当に素晴らしいもので、運も後押ししてどんどん商いの街大阪でのし上がっていく。
    最初は亡き夫の残した借金のためだったが、息子も、恋した相手も、全て二の次にして商売にのめり込む姿は少し女性としては淋しい人だなあと思ったり。
    最期の白い喪服の幻影を見るシーンなんて切ないったらありゃしない。
    時代が時代だけに難しいのかもしれないが、あれもこれもと欲張って生きたっていいじゃない、と思ってしまう。

    しかし、私も自分で自分の商売を始めた矢先だったので学べることも多かった。
    出すお金を惜しまず、誰に食べさせてもらっているのかを意識しながら商っていこうと決意した。

  • 大阪商人として生きることを決めた女興業師の生涯

  • 吉本興業の創始者がモデルだといわれているこの小説。漫才は大阪発祥など、だから漫才にこだわっているのかというよしもとの姿勢とかをこの小説からみてとれた。
    よしもとの芸人は必読の書じゃないかと思うのだが、どうだろうか。

  • ひらひらと舞う花のれん。
    煽られながらも可憐にそこに佇む。

    (以下抜粋)
    ○そらそうや、二流の寄席で金も無いのにそないせんでもええのやろ。
     そやけど今のわては、なんでも肥料をせんならん時や、
     肥料の足らん処からはろくな産物出来しまへん。
     肥料が出来て、苗がつくまでがしんどいのや。
     わてが煙草一本の楽しみもせんと節約して祝儀切るのは、
     この苗をつけたいさかいだす。
     芸人衆への祝儀切るのはわての商いに資本入れているので、
     一つも無駄になれしまへん。
     切って、切って、切りまくって、南で一流の寄席をもたんことには。(P.91)

    ○師匠、わての一番辛いことは師匠のような名人を失うことだす。
     わてのように師匠たちの芸で商いさして戴いております者には、
     名人の死はかけ替えのない損だす。
     普通の商いの損は、何とか自分の才覚と努力で取り戻せますけど、
     芸をもったまま死にはる名人の死は、どないしても取り返しがつきまへん(P.168)

  • 戦前の時代に、1人の大阪の女がど根性で商売をしていく物語。始めの辺りは、ふがいない亭主との一連が「夫婦善哉」を彷彿とさせ、また未亡人となり二夫にまみえない決意を表明してからのど根性っぷりは、「風と共に去りぬ」のスカーレットのよう。大阪のエッフェル塔、通天閣を買うくだりは、ぐいぐい引き込まれた。

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