不毛地帯 (1) (新潮文庫)

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著者 : 山崎豊子
  • 新潮社 (1983年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104157

不毛地帯 (1) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • フジテレビ開局50周年記念ドラマとして放映していたドラマの原作本である。私が山崎豊子作品を読むのは昨年の「華麗なる一族」に引き続き2作目。
    元大本営参謀の壱岐正が第二次世界大戦後に軍事捕虜として旧ソ連に11年抑留された後、商社に途中入社して活躍していくというストーリー。

    抑留の悲惨な描写はドラマでは冒頭に軽く触れただけだったが、原作本では第一巻の前半を占め、非常に生々しく、読んでいて苦しくなるほどである。
    旧ソ連側は、壱岐達敗軍の将に対して戦後の国際裁判で有利な言質を得ようと迫るものの、国のためを思い妥協しない。その態度が悲惨な抑留生活を生むのである。戦争を知らない世代の私からすると「何故国のためにそこまで突っ張る必要があるのか」と考えてしまう。旧ソ連の意向通り適当に話を合わせれば、すぐにでも釈放されて家族のもとに帰れるのである。何度もそのチャンスがあり、時には同じ建物に妻子が訪問してきたこともあったのだが、ことごとく棒に振ってしまう。私ならそんな真似は出来ない。国のためより家族のためを思いたいものだ。私が戦中に存在していれば、軍人にはなれなかっただろうし、非国民と呼ばれていた類いかも知れない。

    後半は商社編。壱岐は40代半ばにして商社のイロハを一から学んでいくのだが、活躍は次巻以降に期待である。
    それよりも、登場人物の中で私が最も好きなのが近畿商事社長の大門一三。仕事に対する精力的な姿勢と豪快で気持ちの良い性格は字面で見ただけで惚れ惚れしてしまう。大本営参謀時代に培った組織力を見込んで、商社実務素人の壱岐を採用したのは大門である。

    その大門の豪快な言葉を引用してみたい。

    大門の娘
    「お父さんって、どうしてそんなに働くの?オーナー経営者じゃないから、儲けたって自分のものになる訳じゃないし…」
    大門
    「わしは損することが嫌いや、商売で損することは罪悪やと思うてるから、一体、人間一人の能力でどれだけ儲けられるか、地球を駆け巡って試してみたいのや」
    →まさにゲームを楽しむ少年である。

    大門の妻
    「あなたって人は化け物やわ、人並み以上に精力的に仕事をし、女遊びも人一倍し、家のことなど放ったらかしやのに、ちゃんと子供の気持ちを掴んで、なんて人かしら…」
    大門
    「なんてこともない、要は本気で仕事をし、好きな女遊びでリラックスし、家へ帰って時間があったら子供を可愛がる。至極単純で原始的なやり方をやって来ただけのことや。」
    →男性ビジネスパーソンの多くがこの生き方を理想とするなのではないだろうか。と思ったが、最近はそうでもないか。そこそこに仕事をし、そこそこに人生を楽しみ、家庭を大切に考えるビジネスパーソンが増えており、現在は少数派かもしれない。実際に私もそうである。

    綿糸市場の仕手戦で大惨敗し5億の穴を空けた金子綿糸部長の処遇について、壱岐に語った言葉
    「人が財産という点では、軍隊も商社も本質的に似ているが、人材の値段が違うんやから、賞はともかく罰では違うてくる。軍隊は一人一銭五厘で集めて来られるから、失敗した奴は腹を切らせるか、階級剥奪してどんどん新しい兵を補充すればこと済むが、企業は限られた資金と扶養家族の手当まで上乗せした人材をフル回転して儲けんことには成り立っていかんのやから、一回や二回失敗した言うてクビにしたら、効率悪いこと夥しいし、他の社員も萎縮してしまう。一枚の辞表でことが済むと考えるのは安易過ぎる。損をしただけ、どうしたら取り返せるか、それこそ、まだまだ血の小便や、蟻地獄の苦しみやろ。けどそれをやりおおせ、次に儲けさせたら、金子の取締役は請け合いや。企業には潔い玉砕は許されんのや。」
    →従業員を大切にする、まさに日本的経営の好例である。株主などのステークホルダーのため短期的に結果を求めるアメリカ型経営が、日本でも持て囃されて久しいが、失敗した者に挽回のチャンスを与えるような器の大きい大門社長の爪の垢でも煎じてみてはいかがだろうか。

    おまけに、繊維担当役員の一丸常務が壱岐と初対面時に語った言葉も印象的であった。
    「しかし人間、順応の動物や、商社マンいうのは仕事を覚えたら最後、止められん面白い仕事ですわ」
    →自身の仕事について、こう語れるのはビジネスパーソンにとってこれ以上ない喜びではないだろうか。私もいつか、今の仕事でこう語れると良いのだが。

  •  極寒のシベリア収容所で11年生き抜いた元、日本軍大本営参謀、壹岐正が無事に日本へ帰還し2年を経て、近畿商事に嘱託として勤務することを決心するまでが1巻の内容である。著者の取材が正しければ、シベリア収容所とはこの世の地獄のようなところである。

  • 沈まぬ太陽や白い巨塔にならぶ、全4巻の大作でここでも山崎豊子の取材力には感嘆するばかり。前半は、シベリア抑留の話で、後半は元軍人が商社に勤める話となっており、シベリアでの強制労働、砂漠での石油開発などの話が中心となっている。個人的に、沈まぬ太陽ほど主人公に感情移入はできなかったが、前半も後半も主人公が生きる世界を深いところまで描いているので、話の内容には引き込まれる。山崎豊子の中でははずせない作品。

  • 全4巻読了。途中でダウンするかと思いながら読み始めたら、壱岐正の魅力もあり止まらなくなった。フィクションをどの角度からみてもノンフィクションだろ!に錯覚させる達人。冬に修行のように読む。

  •  敗戦、そして、即時停戦の大本営命令を携え、満州の長春(新京)、シベリア抑留へ。戦後、辛酸を舐めた元大本営参謀の戦後の来し方を描く小説。
     著者の言かは定かではないが、数多登場する旧軍人に対し理想の軍人像を投影しているきらいが強い。また、主人公には明確なモデルがいるが、シベリア抑留や戦後の処し方は複数の人物から反映されたものらしく、当然だが人物造形はフィクション。全4巻中の1巻。
     シベリア抑留生活から近畿の繊維を主力とする商社入社、次期防空戦闘機納入を巡る商社幹部・防衛庁の暗躍のさわりまで。

  • シベリアでの拘留生活の厳しさ、歴史を知ることが出来た。商社で働くものとして、世界の動向を把握し、日本の国益になり、そして世界の発展に繋がる仕事、一つ作り上げたい。


    一言よく人を生かし、一言よく人を殺す

    自分と会社の10年後を考える

    仏教の根本は、共生の精神。自分のためだけの生き方ではなく、自分の生き方が人に感銘を与え、人に幸せをもたらせる自他共に生きる共生の心が存在しなければならない

    生きて歴史の証人たれ

  • 山崎豊子さん初挑戦…
    難しいかなーと思ったら、以外にすんなり読めた。 読みやすく編集いただいてるんですね!(゚_゚)

    シベリア拘束の部分がとにかく辛かった。何度か私の中で壱岐さんは死んでいた…でも生きてよかった。

    商社マンになったとたん、話ががらっと変わって、違う小説読んでいるかとおもった。。こっちのほうが難しい。。商社わからん。。
    とにかくじっくり読み進めようとおもう…
    そのほうが面白いもんね…

    さて会社の図書コーナーで続きを。

  •  暗くて、重くて、また難解で、ページを繰る手がなかなか進まなかったけど、知っておくべき事実が多く書かれていた。
     「戦争は悪」漠然と考えていた。
     地上戦の悲惨さ、原爆の恐ろしさ、特攻隊など犬死した人が多くいることなど、よく聞く戦争の話はあるけど、それを画策した政治家や作戦を立てていた軍人がいたこと、またその人たちの運命まで考えたことがなかった。
     その人たちにとっては一口に戦争が悪なのではなく、「敗戦が悪」なのだ。
     俘虜となり、11年間も(!)人間として扱われないなんて、気が狂わずにいるほうが難しいだろう。
     その描写は生々しく、まるで著者はその様子を具に見て描いたのではと思うほど。

     過去は変えられないけど、将来は変えられる。
     過去を学ぶのは、反省するためでも暗い気分になるためでもなく、将来ほんの少しでも過去より賢い選択をするため。
     こういう本こそもっと世に知られるべき。

  • 山崎さんの本は面白い

  • 戦後直後から11年間シベリアで捕虜になりその後、帰国してからは商社に勤めだす。
    主人公が回想するシベリア抑留の悲惨さと、商社マンとして社会の中で闘っていく姿に、時代の流れや人々の気持ちの揺れに考えさせられるものがある。
    過去(シベリア回想)と現在(商社勤務)の緩急をつけた表現がみごとである。

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