- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104379
感想・レビュー・書評
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本日読了。
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最後は怒涛の展開だった。
学術会議選挙に勝ち、医療裁判や学内の政治に多忙な日日を送る財前に遂に病魔が…
最後は本作らしい結末だった。 -
通勤途中の電車内で読んでいたので、眠い日や飲み会があったりして遅々と進まなかったけど、この巻は勢いよく、外出時は早めに家を出て現地で読んだりしていた。
今読んでも全然面白かった。
タイトルが白い巨塔とあったので、大学病院の医療関係者の権力争いの様なものが中心だと思ったが、加えて医事紛争裁判がその割合を大きく占めていた。
裁判は互いの主張も理解出来るので良い悪いでは簡単に片付けられないけど、原告は進める過程で嘘偽りなく事実を事実として証言し、被告は名誉や権力を得るために事実を捻じ曲げる証言をするが、自分だったらどうだろう。
この様な選択は多くはないけど何度かあった。
普段の生活でも思いもしていない事を言い忖度する事もあった。
子供の頃に両親からいつも言われてた「人に迷惑を掛けてはならん」を思い出す。
今は定年を迎えたので全てが昔の話だ。 -
結末のバックにベートーヴェンの『荘厳ミサ』が湧き上がるように書き込まれてあり、救われた気がした。
解説にもあるようにそこに作者の意思もあるのだろう。
一人の人間として悪者といえども心の震えはあり、いつ滅びるかと不安にさいなまれている生き物なのだと。
当時(「白い巨塔」が連載されていた頃)、社会派小説は流行っていて私は松本清張氏を多く読んでいて共感や憤りを経験していたにもかかわらず、今回はまいった、あまりの臨場感に。
どろどろした人間関係に憤慨して読んでいると、胃がん手術のリアルさ、医師の頭の下がるような執刀の様子。かと思と法廷の緊迫したやりとり。大阪の商人のドラマチックな展開。
悪人の代表のような財前五郎、ヒューマニズムの、あるいは神のような存在の里見脩二。わかりやすい描きかたに舌を巻く。うーん、その他の登場人物もしかり。
「生み坊主のようにぬるりと頭をひからせた」財前の舅の又一。「鶴のような痩身」の解剖の大河内教授などなど。まるでアニメのようといってもいい。
しかし、作者山崎豊子氏は取材、予習と大変苦労された。だから内容に齟齬がないのだろう。また、一旦、第一審までで筆をおき、二年後続編を書いたということは、読者の反響、社会的影響によるという。
やはりすごい小説だ。大反響だったことは知っていたが、やっと私が読めた感。 -
大学病院を舞台にして繰り広げられた権力闘争、医療過誤の法廷闘争の幕が降ろされる最終巻。あとがきによると本当は三巻までで終わっていたはずが、読者からの反響の大きさにより続編として書かれたのが四、五巻に当たるという。前半だけで終わっていたら、これほど静かな読後感があったかどうか。
法廷闘争第二審の最中、あまりの財前の横暴ぶりにそれまで偽証を繰り返していた証人が自分の言を撤回する。しかし物証がないため信頼性に欠けるとされた時、「シヨウコアル」との電報が届くシーンは心揺れた。
悪逆を尽くした財前だったが、最後の最後は医者としての本分に立ち戻る。あらゆる面で遅かったのだけれど。
初読時は、医療過誤についても財前が絶対的に悪いと感じていた。でも読み返してみると、これで医者が悪いとされたらやりきれないかも、と思うことも。
もしも財前が手術後に一回でも患者に面会し、家族にも優しい言葉を掛けていれば訴えも起こらなかった気もする。実際家族も、「患者に対して不誠実な、人間味のない診察しか」しないことを一番問題視していたわけだし。
第二審結審後からの急展開、最後のページまでは他の用事が一切できないほど夢中に読んだ。名作。 -
ハイボールがよく出てくる。
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さすが、不朽の名作といったところか。
病院だけではなく、大学内の権力闘争、裁判と。
たくさんの要素が複雑に絡み合う。
このはなしが、文学部を舞台に~などでは大分難しいだろう。
テーマのチョイスも素晴らしい、
このあとで、動画サイトで田宮二郎版をみるとまさしく財前がそこにいた。 -
232
本書が刊行されたのは1965年。当時は今ほど医事裁判はなかった。なのにこのリアリティー。加えて、著者が医療関係には全く素人であるというのに、綿密に取材され出来あがった本書。凄いとしか言いようがない。
同著者、読了2作目。 -
環境に左右されない確固たる自分自身を持った生き方に勝るものはない、里見医師。 対照的に、毀誉褒貶に振り回され、名誉と欲望を求め続けた財前医師。
環境に適応することを目的に生きるのか、それとも使命に生きるのか。
自分に甘く生きるのか、自分に厳しく生きるのか。
一番大事なものは自分か、それとも自分以外の何かか。
周囲には利害に群がる人間か、それとも心から信頼し支えてくれる人間か。
花森ケイ子
「あの人はすごい人やわ、もっさりした服装をしてぼさっとしてはるけど、心の厳しさというのか、何か侵しがたいものごあるわ、私みたいにどんな一流会社の社長にも、有名人にも体をはって、操縦しようと思えばできないことのない人間でも、あの人だけはどうにも歯が立たへんわ、だから、あんたも誰に勝っても、最後は里見さんには勝てないのと違うかしらー」
弱い自分に打ち克てる人こそ、最も強き人なのだろう。