- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104416
感想・レビュー・書評
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再読。
大きな仕事が2つ。
軍での思考方法で冷静に手腕を発揮して立派に商社マンになった。
戦闘機のほうは政治絡み、中東戦争のほうは部下が不平も言わず自在に動くほどのリーダーシップ。
仕事から離れてのシベリアの帰還者との集いはぬくもりが良いですね。
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やたらとリアルな情景が目に浮かぶのは最近観た映画のせいではなくて作家さんの力量のおかげだと実感
川又さんの最期が忘れられない -
自衛隊の次期戦闘機候補でラッキード社を推す近畿商事は、グラント社を推す東京商事の強力な売込みに苦戦します。「空のギャング」とあだ名される鮫島に度々出し抜かれながら、壹岐は自らの信念を曲げ、過去の軍歴で培った人脈を駆使し、ラッキードを強力にプッシュします。
そしてその商戦のなかで親友川又を追い詰め、死に至らしめることに。
そして時が経ち、入社から8年という短さで常務へと焦心し、社長直属の「業務本部」の本部長として全社にまたがる経営戦略を立案しますが、早すぎる出世への嫉妬や、旧来からの社風を軽視するように見える壹岐のやり方には反発も小さくなく、思うように成果を上げられないことも度々です。
「近畿商事のため」と身を粉にして働きながらも、社内からも理解されずに辛い結果をかみしめることの多い壹岐の辛さは想像に余りありますし、自身の感情をひた隠しにして会社のために力を尽くそうとする壹岐の強さ、またそのプレッシャーをこらえきれずに妻にあたってしまう彼の弱さ、壹岐という器の大きな男に対して自身のプライドを傷つけられたと感じて反発する同僚たちなど、社会の不条理な在り方が余すことなく描かれている作品です。
戦闘機受注や、中東戦争によるスエズ運河の封鎖による船舶市場の高騰をめぐる商戦は、経済だけでなく政治や外交も絡む複雑な部分もありますが、一つひとつの状況が丁寧に描かれていて、経済・外交についての特別な予備知識が無くてもしっかりと理解することができます。
企業人として次第に成長している壹岐ですが、国のために働き続けた軍人としての人生の次に歩む、「第二の人生」の在り方として、商社マンの自分の働き方が果たして国益にかなうものなのかどうか、という悩みを持つ壹岐の姿は、渋沢栄一が良く主張していた「私利私欲ではない、公益のための事業を追求することの重要性」と一致するような気もします。 -
山崎豊子の新聞社出身という、その精緻な表現が好き。
わたしも行ったことのある、感じたことのあるニューヨーク、ロサンゼルス。こんな表現は思い浮かばなかった。けど、そうそう!と手を打ちたくなるくらい的を得てる。
「壹岐は眠れぬまま、ベッドから窓辺へたって行った。周囲の灯りは消えていたが、屹立するビルの上に、上限の月が蒼い光を放ち、九階の窓から見下ろすビジネス街は、人影も車も殆ど見えず、ビルが黒々と影絵のように林立し、墓地のように森閑としている。」
「南国らしくメインストリートにフェニックスが大きな葉を茂らせ、白い壁の建物と陽に焼けた人々を見ていると、スペイン風の情緒が感じられる」
「壹岐が言葉の継穂を失っていると」
----後半-----
社会人になった立場として不毛地帯を読むと
壹岐のビジネス手腕がとてもかっこよく見える。
事業本部を設立し、
営業部門をヒアリングする部隊、
海外動向を探る部隊、
時事を取りまとめる部隊、
社内外の情報が全部壹岐に入るようになる。
さらにメモには結論は5点まで
根拠をアペンディクスにまとめることとし、
迅速に判断していく。
働く者たちの意志もそがない。
わたしも、常駐リーダーとして
壹岐のように俯瞰して指示を取り
部下を気概を持って働かせる、
そんなリーダーになりたいと、
やりがいのなかった仕事なのに、
先週は少しだけ楽しくなってた。
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大切なものは無くしてからわかる。
内助の功。
後悔してからでは遅い。
いつも大切にしよう。 -
舞台が商社であるだけに、日本国内に留まらず世界レベルで話が展開される。それゆえスケールの大きさを感じる。特に、第三次中東戦争を巡る商社同士の戦いは展開もスピーディで面白い。
東京商事の鮫島は、主人公の壹岐の視点で見れば悪役だが、鮫島の方から見れば壹岐はこれまで長年苦労して築き上げてきたものを一気に掻っ攫いかねない存在で、だからこそ壹岐をライバル視し必死で戦っているのである。
そういう意味では、鮫島もまた正義なのだ。 -
シベリア編からの流れで読んでしまいます。
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2019.10.4 読了
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第2巻ではシベリアから帰還した主人公が本格的に商社での第二の人生を始める。相変わらず圧倒的な筆力で引き込まれます。
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私は総合商社に就職しなくて良かったと、あまり物語に関係のない感想を密かに抱きながら読んだ。仕事に対する姿勢は尊敬ものやと思うけど、人が死のうが生きようが、はたまた自分たちの仕事によってどこかの地域の人々の暮らしがどう変わろうが、物事を稼ぐための商機という基準でしか捉えられないような人間には私はなれない。