二つの祖国(二) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104461

感想・レビュー・書評

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  • 収容所を出た賢治は、教官として米陸軍日本語学校の教官となった。
    一方、両親と娘は、忠誠テストに背きツールレイク収容所に送られた。
    父が夢を見、努力してきたアメリカでの暮らし、日米開戦により家族はバラバラとなり、不幸な形で再会することとなる。


    物語だから、賢治とその家族の元にばかり色々なことが起こるのは仕方がないこと。
    でも、どれもあちこちで起こっていたことと思うと胸が苦しくなります。
    エミーもなんで自分で不幸を呼んでしまうのか。賢治の奥さんなのだから、幸せになれたはずなのにと歯がゆい思いでいっぱいです。

    終戦を迎え東京裁判へ。
    三巻に続きます。

  • 日系二世の天羽賢治の弟の勇はアメリカの軍隊に志願して一兵卒として、ヨーロッパ戦線で戦っていた。
    勇が所属する、三十六師団四四二部隊(日系二世部隊)はテキサス大隊の救出に向かわされる。
    275人のテキサス兵を救う為に、日系人は200人以上が死亡し、約600人が負傷した。
    ここでも日系人は虐げられていた。
    勇は死亡し、認識票のみが、ツールレークの隔離収容所に居る天羽の家族に渡された。
    勇の葬儀には、天羽乙七、テル、賢治と同じ収容所の大野保と長男夫婦、娘だけだった。
    乙七の胸にはヨーロッパ戦線で戦死した四四二部隊の息子の表彰と勲章の授与式が、鉄条網の中で行われたことに対する怒りと屈辱があった。
    一方、日本軍の立石小隊に属する、弟の天羽忠は最前線のルソン島リンガエン湾に送られる。
    天羽賢治はアメリカ軍第六軍第一軍団に属し、リンガエン湾の六万八千人の上陸部隊とともに上陸する。
    そこでは、死亡寸前の日本兵の口から、忠がいることを知る。
    後に、忠と賢治は、戦場で遭遇する。賢治は誤って弟を撃ってしまった。
    忠を捕虜として米国の陸軍病院へ送った。結果、弟の命は取り留める事ができた。
    忠は、祖国日本を裏切った兄が許せなかった。兄弟の心にはシコリが残った。
    カバルアン・ヒルから日本軍は撤退し、アメリカ軍六師団第二十連隊長のアーノルド大佐は戦闘終了を告げた。

    ーーウイキペディアよりーー
    第二次世界大戦において、1941年12月22日に本間雅晴指揮する日本軍がルソン島侵攻の際にリンガエン湾に上陸した。1945年1月9日にはダグラス・マッカーサー指揮するアメリカ軍が、ルソン島侵攻の際にリンガエン湾に上陸した(リンガエン湾上陸(英語版)、1945年1月6日 - 1月9日)。

    ーーヘンリー・アーノルドーー
    アーノルドは1945年6月16日の日記に「アメリカでは日本人の蛮行が全く知られていない」「ジャップを生かしておく気など全くない。男だろうが女だろうがたとえ子供であろうともだ。ガスを使ってでも火を使ってでも日本人という民族が完全に駆除されるのであれば何を使ってもいいのだ」と書いている。6月17日の日記には「マッカーサーはさらなる日本攻撃にB29を使う我々の計画への理解が足りていなかった。ジャップの30か所の都市部と産業地域を破壊したうえで侵攻地域となる場所には一か月ごとに20万トンの爆弾を投下し侵攻する日には8万トンを投下することをちゃんと説明したらマッカーサーも気に入ったようだ」とある。7月23日には「スターリンとチャーチルに『現在のペースでB29が飛び続ければ東京には何も残っていないことでしょう。そこで会議することになりますね』と言った」とある[12]。民間人を無差別に虐殺した汚名を後世に残すことになった。

    ーー「日刊まにら新聞」Webからーー
    一九四五年一月、鹿児島県出身者で構成される旧陸軍歩兵第七一連隊所属の大盛支隊約九百四十人が丘に陣取り、米軍の艦砲射撃や爆撃にさらされ約二週間で八百人強が戦死した。

    広島に原爆が投下され、太平洋戦争は終結した。
    天羽賢治は米国戦略爆撃調査団の一員として、広島に派遣される。
    広島の惨状を目にした賢治は、呆然とした。灰燼に帰した市街を見て、涙で目がかすんだ。
    敗戦国日本における東京裁判の米国通訳モニターとして賢治は参加することになる。
    ……
    リアルに綴られる、フィリピン ルソン島での忠の目から見た、日本軍の惨憺たる様子に、戦争の虚しさを感じた。
    物語は三巻目へと続く。

  • 同じ人種、日本人として生まれたのに、その時代、場所が違うだけで差別を受け、命の重みが違うかのごとく扱われる。この自分が生まれる僅か数十年前の今住む日本と過去に住んでいたアメリカで起こっていたことなんだと。今現在を生きる平和ボケした自分の小さな先行きの不安など些細な妄想に過ぎないんだとも。

  • 2巻は主人公が暗号解読官として戦場に出向く話。
    末弟もアメリカ兵に志願するが、ヨーロッパで戦死する。

    そして、主人公は、日本在住の日本で徴兵されたもう一人の弟とフィリピンの戦場で再開する。
    血を分けた兄と弟が敵味方に分かれて戦場で出会うという最悪の場面が現実となってしまった。

    主人公の誤射により弟は足を負傷するが、結果的にそのおかげで命拾いする。が、2人の間に埋められない溝が残る。

    本巻の最後は、広島の原爆投下で幕を閉じる。
    広島に日系二世が多数在住していたという話は驚き。彼らは祖国アメリカに最悪の形で殺されたようなものである。

    1巻から一貫して違和感を覚えるのは、主人公の妻が身勝手な女として描かれていること。
    確かに多少ワガママな部分はあると思うが、現代の視点で見ればわりと普通なこと。
    当時の感覚では、妻は黙って夫に従うのが良い妻であるという価値観だったのだろう。

  • 『ReallyYou?』この辺だけ何度も読んでしまった。。

  • 自らアメリカ軍として、戦場行きを志願した天羽賢治。
    賢治の弟、忠は日本軍として招集されていた。
    同じ戦場にいる兄弟。
    徐々に近づく距離。
    緊迫の日々。
    戦場で対峙した兄弟。
    互いの存在が知れたとき、互いに何を思ったのか。
    そして、運命の1945年8月6日午前8時15分。
    広島への原爆投下。
    焼けただれた人。
    何も無くなった大地。
    賢治の目に、日本は、広島は、どう映ったのか──

  • 山崎豊子『二つの祖国』新潮文庫 読了。太平洋戦争に翻弄される日系アメリカ人、二世たちの物語。主人公は両国を祖国とするアイデンティティを模索し、苦悩と葛藤を抱えながらも善く生きようとするが、その信念と良心ゆえか虚しい結末を迎える。克明に刻まれる東京裁判は本作の真髄のひとつだと思う。
    2017/10/18

  • 1巻でもかなり過酷な状況であった「日系二世」たちだが、戦争が進むにつれ、さらに凄惨の一途を辿る。
    二つの祖国の間で揺れ動く者、片側に阿る者、立場を崩さぬ者、全てに一切の区別なく、その苛烈極まる運命に飲み込まれていく。

    戦争や原爆投下後の生々しい表現等、読むのが辛い場面も多々あったが、それでも先を読みたいと思わせる筆力は流石の一言。

  • この巻でもっとも心に残るのは、やはり天羽家三兄弟のあまりにも酷過ぎる運命ではないでしょうか??  日系2世というまさに本書のタイトルどおり、「二つの祖国」を持つ三兄弟が、たまたま太平洋戦争突入時に何歳でどんな教育を受けどこにいたのか?という偶然性も手伝って、1人は米軍兵士として、もう1人は帝国陸軍兵士として、そして長兄として常に二つの祖国を強く意識し続けた最後の1人が米軍の語学将校として戦争に巻き込まれていく・・・・・。  その非情さには言葉もありません。

    家族だからと言って誰もが同じ哲学、同じ思想というわけにはいかないのは、どんな時代であれ、そしてどんな境遇であれ、必ずしも珍しいことではないと思うけれど、彼らの場合はあまりにも残酷です。  まして、末弟の勇君はヨーロッパ戦線だからまだしも、長男 & 次男は同じ戦線に赴き、戦場で顔を合わせることになるな~んていうのは、平和ボケ時代の KiKi には想像さえできなかった出来事でした。  初読の時にはどちらかというと「小説特有の悲劇性強調型プロット」として読んでしまったこの境遇が今回の読書では「実際にそういうことがあったかどうかということ以上に、残酷な人間性の黙殺の象徴」として胸に迫ってきました。

    三兄弟のお父さんの描写があまりにも痛々しい・・・・。  彼は「自分のためにも家族のためにも良かれ」と考えて移住を決意し、移住後も苦労を重ね続けて、善良に、そして真剣に生きてきただけの人だったのに、人生の後半で第二の祖国からは人種差別で受け入れられず、祖国に帰ることもできず、収容所内の同じ日系1世の人々の姿にも違和感を覚え、収容所内の遺体処理係として時を重ねていきます。  その姿には、ファッションではない「ニヒリズムの極致の姿」が表れていると感じました。  そしてそんな父親の姿を見守るしかない賢治の苦悩も心に響きます。

    そうであるだけに、その後の賢治の選択には常に彼の抱える「矛盾」が溢れていて、読んでいて辛いものがありました。  ある意味では弟二人のように自分の「帰属」を宣言できる若さがまぶしく感じられてしまったぐらい・・・・・。  もちろんそんな彼らも己の存在をかけて戦っているわけで、何とな~く生きているようなところのある現代の私たちには想像できないような困難と日々向き合っているわけではあるんですけどね。

    そして原爆投下。  8月になるとTVでは毎年のように放映されるあの「きのこ雲」。  アメリカで当時、どれくらいの人たちがあの悲劇の実態を知っていたのかは甚だ疑問だと思うし、二つの祖国の間で身も心も引裂かれた1世、2世の人たちがそれを知っていたのかも、不勉強な KiKi はよく知らないんだけど、祖国日本と父の死後日本に帰国した母・妹を捨てて身も心もアメリカ人たろうと努力してきたチャーリーであってさえも受けた衝撃の大きさが胸を抉ります。

    さて、第3巻は東京裁判です。

    (全文はブログにて)

  • 1巻に記述

著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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