約束の海 (新潮文庫)

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著者 : 山崎豊子
  • 新潮社 (2016年7月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104515

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約束の海 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  •  海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と民間船の衝突事故は、過去最大の惨事となった。正義感あふれる主人公・花巻朔太郎は、多数の遺族を前に自責の念にかられ、自らの進退に悩む。一方的に海自側を批判するマスコミ。思いを寄せる頼子との関係はどうなるのか。
     と風呂敷を広げきったところで、続きを読みたい気持ちが行き場を失う。2013年、山崎豊子は数々の名作(ほとんど読破した、してしまった)をこの世に残し、そして本作を最後まで書き上げることなく鬼籍に入られた。改憲の議論が高まる今だからこそ、最後まで読みたかったという思いと、最後まで読めなかった分著者が残してくれた問題に自分なりに向き合ってみようという思いが同時に押し寄せる。

     『戦争は絶対に反対ですが、だからといって、守るだけの力も持ってはいけない、という考えには同調できません。
     いろいろ勉強していくうちに、「戦争をしないための軍隊」、という存在を追求してみたくなりました。
     尖閣列島の話にせよ、すぐにこうだ、と一刀両断に出来る問題ではありません。自衛隊は反対だ、とかイエスかノーで単純にわりきれなくなった時代です。
     そこを読者の皆さんと一緒に考えていきたいのです。今はその意義を再び考え直すタイミングなのかもしれません。』

     あとがきで、このような言葉を残されています。憲法を改正したら徴兵令が復活する、自衛隊の海外派遣は武力の行使だから違憲だ、そんな簡単なものなのか?とは常々思っていたこと。実際にあった「なだしお事件」から海自を一方的に批判したマスコミのようになってはいけない。感情的にならず、全体を見る目を養い、自分の国をいかにして守るべきか、平和への追求を忘れないでおこうと改めて思った。

     本作で、海上自衛隊の潜水艦隊という存在とその役割に興味を抱いた。そもそも存在自体を全然知らなかったけれど、北朝鮮のミサイル問題をはじめ、今も国のために暗躍しているんやろうなあ。
     知ることは思考の材になる。山崎豊子という尊敬する作家が残してくれたものを、自分の一部にしていこう。

  • 1988年に起きた「なだしお事件」をモデルに、自衛隊の潜水艦に従事する花巻朔太郎を主人公に物語が展開。この作品は3部作予定が作者の逝去により1部での発表となったようですが、巻末のシノプスを読むとこの物語の壮大さが伝わってきます。「戦争と平和」がテーマであるとのことで、自衛隊のあり方や現在の世界情勢も視野に入れて、憲法第9条の改正で揺れる今だからこそ、もう一度考えるよい機会となりました。作者の膨大な取材の量に圧倒され、返す返すもこの先が読みたかったと思いました。

  • なだしお事件の描写は、「沈まぬ太陽」の日航機事件に比べるとそれほど鋭くはない。今後の戦時のエピソードがクライマックスになっていくと期待される中での絶筆。期待される内容を読めないのは残念だが、この年齢でもこれだけの構想を練り、取材し、書き始めた作者の意思と情熱に脱帽。絶筆の作品に、今後の展開の可能性を示すスタッフの記録が記載されるというのも、この作者の作品ならではかも。

  • 骨太な文章、人物の心情の細かな描き方、もう最高な山崎節です。未完が本当に残念だけど、巻末に先生と編集部の今後の展開についてのメモがついているので、想像力にまかせていろいろ考えるのが楽しい。

  • 初めて山崎豊子の未完の遺作を読んで、一冊も読んでいなかったことを本当に後悔。

    なだしお衝突事件を軸に、現代の防衛を担う自衛隊、多くを語らぬ帝国海軍士官の父、民間人と自衛隊との温度差や相互理解の不足を描いた作品。
    ご存知の通り、未完であるが、充分に未完部分を補ってくれる、著者の構想シナリオがあり、読者が展開やラストを描かせてくれる。

    著名な作家というのは、読者のために、様々なストーリー展開を構想するのだと、思ったのは、本当に発見であった。

  • いつになっても色あせない、本物のプロ山崎豊子さんの遺作。あとがきまで読んで本当に感動。
    プロであるのはもちろん、本当に好きだからこそ物書きができることの喜びを感じる。

  • 読み切れませんでした。

  • 亡き山崎豊子さんの未完の作品
    続きが読みたかった

  • 自衛隊の潜水艦と民間の船が衝突し、多数の死者が出た事故をきっかけに、自衛隊の在り方を問う話。山崎豊子ならではの世界。
    残念なのは、三部構成の予定だったそうだが、残り二部は未刊のまま、山崎氏が亡くなられたこと。
    編集チームの補足により、氏がいかに丁寧に取材をされ、一連の小説を書くのに膨大な時間をかけられていたことがわかり、改めて、これまでの数々の作品の重みを感じるとともに、読み直してみたくなった。

  • 2017年5月24日読了

  • 未完の遺作。
    自衛隊の在り方を通して戦争を考える話。
    本当に最後まで読みたかった。

  • 20170430
    未完の作ということもあり、読後はあまりスッキリとはしない。父子の会話にて、1人生きて帰ることに対する父の贖罪の思いに戦争の怖ろしさを感じた。

  • 常に戦っているが、何も起こさないことを常とされる。
    戦争、自衛、矛盾とも思える枠の中でどう考えればいいのか。

    (以下抜粋)
    ○非常事態が起きた場合は、呼び出されることがある。
     そのため休みの日でも、連絡が取れ、
     二時間以内に艦に帰ることのできる範囲内での行動が、
     暗黙のうちに義務付けられていた。(P.95)
    ○小説として花が咲くまでには、ここから実際の原稿執筆に合わせて、
     更に数回の取材が行われ、言葉一つ描写一つをより磨き上げ、
     少なくとも三回以上は書き直していくのが常であった。(P.402)

  • 未完であることが、本当に悔やまれる

  • 絶筆!!続きが読みたい!

  • 自衛隊、潜水艦、そして国防と戦争。自分が普段全く意識せず、知ることもない世界に、引き込まれるように読み進めていった。
    膨大な資料、取材、そこにきちんと小説としてのストーリーが重なって、本当に偉大な作家だったんだと改めて思う。
    第二部、第三部と、ぜひ読んでみたかった。

  • 山崎豊子の遺作。海上自衛隊の主人公が、漁船との衝突事故から国防とは、自衛隊の存在意義とはを考え苦悩する。第2部も読みたかっただけに残念でならない

  • 作者没によって話の途中で終わってしまった小説に出逢ったのは2作目… 事前にわかってたら読み始めなかったのに。ドラマ鑑賞などでなく、山崎作品をまともに読んだのはこれが初めて。サスペンスでもないのにしっかり取り込まれてしまい気付いたら朝だった――という、本の虫としての至福の時が味わえる。

  • 山崎豊子版『戦争と平和』の帯タイトルに惹かれて購入。執筆の途中で逝去された為、一部完結のみしか読むことが出来ないのがとても残念。『約束の海~その後』に収録されているプロジェクト編集を読み進めると、膨大な資料と取材に基づいて執筆されていた山崎豊子さんの作家魂が伺える。まさに人生をかけた作家さん。

  •  1988年7月23日午後3時38分、横須賀港沖で海上自衛隊潜水艦なだしおと、民間の遊漁船第一冨士丸が衝突し、第一冨士丸の乗員含む乗客30名が死亡した。
    まさかこの事故が山崎豊子の最後の題材になるなんて…私にとっては忘れられない事故なんです。いえ、別に被害者の遺族とかそんなんじゃない。この一報を知ったのは夫とのデート中でした。まだ結婚前のことです。もちろん携帯もネットもない時代。待ち合わせてすぐに入った店のテレビの速報で知りました。私はすぐに会社へ。デートはおあずけとなりました。そして会社に到着した私は、そこで大失敗をやらかしてしまったのです。張り切って会社へ行ったけど、行かない方が、何もしなかった方がまだよかった…ぐらいの大失敗です。
    読んでる間は苦しかった。こんな大きな事故だなんて、そのころの私は自覚がなかった。自分のやったことの重大さがいまさらのようによみがえる。もし長編になって、この事故に終始するならば読むのをやめていたかもしれない。
     

    「約束の海」は第1部を書き上げたところで、山崎氏が亡くなり、残念ながら未完となってしまいました。山崎氏と編集プロジェクトが残した取材メモから第2、第3部のシノプシス(あらすじ)を付け加えてくれている。「約束の海」は第1部を書き上げたところで、山崎氏が亡くなり、残念ながら未完となってしまいました。山崎氏と編集プロジェクトが残した取材メモから第2、第3部のシノプシス(あらすじ)を付け加えてくれている。それによると、後半は花巻朔太郎の父和成の話へと移行する。和成は真珠湾攻撃で奇襲攻撃を仕掛けた特殊潜航(人間魚雷)として潜水艦に乗り込み、アメリカ軍に捕まって捕虜第1号になってしまいます。死んだ仲間の乗組員9名は九軍神として国葬になるが、彼は生きて帰り、自責の念にかられるも、トヨタのブラジル社長として人生をまっとうする。
     後半は100倍興味深い。最後まで読みたかった。残念です。

  • 『正義のあり方』

    この作品についてのキャプションは大体の人はもう知って居るだろうし、わざわざ私が書くことはないと思う。

    物語は一つ一つを丁寧に確認するように、一度壊してまた組み上げるかのように、雨雲が広がるがごとくゆっくりと進行していく。

    なにが正しかったのかわからない地獄のような場所で。未完の作品の評価なんてできないけれど、最後に彼が求めたものは確かに光だった。

    この先がない以上、なにもいうことはない。面白かった。

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約束の海 (新潮文庫)の作品紹介

海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。マスコミの批判、遺族対応、海難審判……若き乗組員・花巻朔太郎は苛酷な試練に直面する。真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。自衛隊とは、平和とは、戦争とは。構想三十年、国民作家が遺した最後の傑作長編小説。

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