約束の海 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104515

感想・レビュー・書評

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  • 山崎さんが続編を書いていたら、
    おそらく、
    「国際紛争を解決する手段としての戦争を永久に放棄した国家が、
    尖閣諸島の問題にどう立ち向かうのかを真正面から取り上げるだろう」
    から、かなり考えさせられる物語になったんだろうなあ、と思いました。
    山崎さんの続編を読んでみたかったな~。

    昭和の最後の時代にあった、潜水艦なだしおの衝突事故をモチーフにしてます。
    こうして何十年かしてから振り返ってみると、当時の報道の問題点なんかも
    よくみえてきます。
    相当量の知識がないと、活字報道を鵜呑みにして感情的になっちゃうよね~。
    勉強大事。
    20161231

  • 『正義のあり方』

    この作品についてのキャプションは大体の人はもう知って居るだろうし、わざわざ私が書くことはないと思う。

    物語は一つ一つを丁寧に確認するように、一度壊してまた組み上げるかのように、雨雲が広がるがごとくゆっくりと進行していく。

    なにが正しかったのかわからない地獄のような場所で。未完の作品の評価なんてできないけれど、最後に彼が求めたものは確かに光だった。

    この先がない以上、なにもいうことはない。面白かった。

  • 1988年の「なだしお事件」がモデルなんですね。圧倒的な取材力はさすが。

    ただただもう、著者の作品が最後という想いだけで読んでました。第1部が完成し、本当は何部構成を想定していたのか。続きが読みたくても読めない辛さ。

    これまで、どれだけ山崎豊子作品に心を動かされたことか。主人公と一緒になって憤りや葛藤し、絶望したことももちろん感動したことも多々。著者の作品で戦後の歴史を知ったといっても過言ではない。今自分がここまで本が好きになった理由の一つは豊子先生です。これからも、大事に大事に再読していこうと思います。

  •  海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と民間船の衝突事故は、過去最大の惨事となった。正義感あふれる主人公・花巻朔太郎は、多数の遺族を前に自責の念にかられ、自らの進退に悩む。一方的に海自側を批判するマスコミ。思いを寄せる頼子との関係はどうなるのか。
     と風呂敷を広げきったところで、続きを読みたい気持ちが行き場を失う。2013年、山崎豊子は数々の名作(ほとんど読破した、してしまった)をこの世に残し、そして本作を最後まで書き上げることなく鬼籍に入られた。改憲の議論が高まる今だからこそ、最後まで読みたかったという思いと、最後まで読めなかった分著者が残してくれた問題に自分なりに向き合ってみようという思いが同時に押し寄せる。

     『戦争は絶対に反対ですが、だからといって、守るだけの力も持ってはいけない、という考えには同調できません。
     いろいろ勉強していくうちに、「戦争をしないための軍隊」、という存在を追求してみたくなりました。
     尖閣列島の話にせよ、すぐにこうだ、と一刀両断に出来る問題ではありません。自衛隊は反対だ、とかイエスかノーで単純にわりきれなくなった時代です。
     そこを読者の皆さんと一緒に考えていきたいのです。今はその意義を再び考え直すタイミングなのかもしれません。』

     あとがきで、このような言葉を残されています。憲法を改正したら徴兵令が復活する、自衛隊の海外派遣は武力の行使だから違憲だ、そんな簡単なものなのか?とは常々思っていたこと。実際にあった「なだしお事件」から海自を一方的に批判したマスコミのようになってはいけない。感情的にならず、全体を見る目を養い、自分の国をいかにして守るべきか、平和への追求を忘れないでおこうと改めて思った。

     本作で、海上自衛隊の潜水艦隊という存在とその役割に興味を抱いた。そもそも存在自体を全然知らなかったけれど、北朝鮮のミサイル問題をはじめ、今も国のために暗躍しているんやろうなあ。
     知ることは思考の材になる。山崎豊子という尊敬する作家が残してくれたものを、自分の一部にしていこう。

  •  主人公の花巻朔太郎(はなまき さくたろう)は東都工業大学と防衛大学を受験し、防衛大学に合格する。
     防衛大学入学には兄姉の反対があったが、元海軍軍人であった父は反対しなかった。
     花巻朔太郎の乗る潜水艦「くにしお」は観光用の遊漁船と接触し、遊漁船を沈没させる。
     民間人30人の死者を出す大事故だった。
     朔太郎は過酷な試練に苦悩する。
     東洋フィルのフルート奏者の小沢頼子と出会い、恋心を抱くが、事故の遺族への弔問や海上自衛隊からの聴取に時間を取られ、頼子と会う機会もなく、頼子のことは忘れようと煩悶する。
     当時の自衛隊は金食い虫の役立たたずと、国民から疎まれていた。
     国民の知らない所で国防の任務に携わっているのに、理解されない自衛隊とは、なんなのか?と自問自答するうちに、事故の処理が一段落したとき、朔太郎は自衛隊を辞めようと思い至る。
     そんな中、過去を一切語ろうとしない父が、旧帝国海軍の真珠湾攻撃時に日本人捕虜第一号となった事実を知る。
     自衛隊の存在意義、かつて米国と戦った父の日本、戦争と平和について考える朔太郎の煩悶。
     本作は山崎豊子の未完の遺作となって、3部構成の1巻目で終わっている。
     頼子とのロマンスの結果は? 父の捕虜第一号となった、その後は?
     自衛隊を一時は辞めようと思った朔太郎のその後は?
     いろいろと未完のまま終わっているので、もの足りないものとなったが、山崎豊子が病床の身で、力尽きるまで書き続けた本作は、生き続けていたら、間違いなく長編大作と成ったでしょう。
     本作も実際の事故を起こした潜水艦「なだしお」関係者、自衛隊、遺族、米海軍など、沢山の取材および、膨大な資料に基づいて書かれている。
     偉大な国民作家の遺作となった本書を読んで良かったとおもう。

  • 山崎豊子さんの遺作。
    海上自衛隊のエリート潜水艇員、花巻朔太郎は勤務中の事故により自衛官であることの意義に悩み自衛隊の辞職を考える。彼は帰国した父の過去を知り、戦争と軍団の意味について考え始める。
    大作になるはずの本作、巻末の構想の部分や秘書の方の話を聞き、お話の全容を読みたかったと感じた。時代を超えて楽しめる作品を生み出す素晴らしい作家さんの作品、コンプリートしたい。

  • 骨がある文章を読みたいなと思う時に手に取る作家のひとり。

    海上自衛隊の潜水艦が遊漁船と接触し、遊漁船に乗っていた乗客がたくさん亡くなった「なだしお事件」をモデルに、あまり知られていない平時の潜水艦のミッションや、潜水艦乗りたちの生活、さらには、第二次大戦真珠湾攻撃に関連する実在の人物の人生も織り交ぜて、戦争とは…平和とは…軍事力とは…と作者の問題意識が見える小説でした。

    もともとは三部構成の予定だったものが、著者が亡くなったことで、第一部のみになったとのこと。第一部は潜水艦事故をめぐる物語。第二部は、捕虜第一号だった、主人公の父親が捕虜として過ごした時代の物語。第三部は、父親の人生をたどった主人公が自分の新たな人生に向き合う物語で構想されていたようです。
    第一部のみで完結しているこの本の後半には、出版社の編集チームが、膨大な取材をもとに当初想定されていた三部全体の粗い骨組みを整理して収録してくれています。また、長年、著者に寄り添って作家活動を支えた秘書の方の寄稿もあり、著者がどのような経緯で、どんな思いで自衛隊の小説を書こうとしたのかなども明かされていて、この後半を読めば読むほど、二部、三部と、山崎豊子さんが描く物語の続きを読んでみたかったと強く思いました。

    戦わないための軍事力とは何なのか。戦争を経験した世代である著者の、戦争する世の中にしてはならないという思いから紡がれる問題提起を、読者としてしっかり受け止めなければならない気がしながら読み終えました。

  • 3部構成になる予定だったそうだが、作者の死去に伴い第1部だけで終結。
    巻末に今後のシナプスが載っている。
    それを見ると完結してもらいたかったとつくづく思う。
    作者の終生のテーマである「戦争と平和」を締めくくる作品になる可能性もあったと思った。

  • さすが山崎豊子作品。
    当たり前だけど壮大なプロットがあって作られてるんだと改めて認識。最後まで読めなくて本当に残念。

  • 最後まで読みたかった

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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