或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)

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著者 : 松本清張
  • 新潮社 (1965年6月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109022

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或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)の感想・レビュー・書評

  • 人間の辛さ(からさ)、人生の辛さ(つらさ)が、しみじみと身に染みる。しかし、そこがいい。

    松本清張は10代の頃に『点と線』と、あとアンソロジーに収録されているものをいくつか読んだだけだった。今になってこの短編集を読んで驚く。面白い。10代に読んだ時よりも、格段に面白いと思ったのだ。

    嫉妬、愛憎、自負、そして劣等……
    すさまじいエネルギーである。けれど、その根本にあるのは一個の人間の脆さ、いっそ儚いほどに切ない人間の等身大のちっぽけさである。
    ガリガリの自負心≒虚栄心を描いたものは私自身、身に覚えがありすぎるだけに読んでいてとても辛く、ああ、自分はこういうものにもっとも「痛み」を感じるのか、とひりひりした。
    それだけに、仄かにでも哀愁が感じられるもの、たとえ憎しみと半ばしていたり嫉妬に狂ったりしていても、素直な愛が感じられるものの方が物語として好きだと思った。作品名で言うと、「或る「小倉日記」伝」「喪失」あたり。

    最後の「箱根心中」も、切々とした悲しみが最後まで抑えた筆遣いで描いてあり、余韻が尾を引いてラストにふさわしかった。というか、最後までガリガリのコンプレックスや虚栄の世知辛さを書かれてはやりきれないな、と心配していたので、正直ほっとした(^^;)。
    物語にはやはり、ほんの少しでいいから、お話の神様の慈悲が欲しいものなのだ。

  • 松本清張の短編集.

    森鴎外の小倉日記を読んでいるので,芥川賞受賞作の『或る「小倉日記」伝』が読みたくなった.小倉日記は森鴎外が小倉に赴任していたときの日記だが,長く紛失して行方がわからなかった.まだ小倉日記が発見される前に,小倉での鷗外の足跡を明らかにしようとした田上耕作の奮闘と,その母親の献身を描いた小説.田上は生まれつき体に障害を持ち,自分の意志を通じることも時として難しかったようだ.断片的な事実をつなげていく様は推理小説の謎解きの趣もある.日記の発見で一見無駄になったようにみえる田上の報われない努力を読者の目の前に提示することが松本清張の意図であろう.

    他に「笛壺」「石の骨」を読んだが,この両方にも同じタイプの人間が登場する.さまざまな犠牲を払い,凄まじい努力をしても,世間に認められず,学問以外の大切であったものまで失ってしまう.

    どれも,重苦しい主題の小説だが,文章は軽めで,読みやすく,すでに後年のベストセラー小説への流れが見えるようだ.

  • 初期の短編集。社会派推理小説というより純文学に近いのだろうが、非常に読みやすい。
    テーマは殆ど共通しており、研究者や芸術家の世界における権威主義への挑戦と敗北、というところである。現在でも同様な傾向にあるのかもしれないが、当時は決して越えることのできない壁であったのだろうと思う。著者自身、学歴がないことに強烈なコンプレックスを持っていたと聞いたことがある。

  • 古き良き芥川賞作家。

  • 久しぶりに読んだ。『ある「小倉日記」伝』は覚えていたが、他の作品は忘れているのも多かった。ていうか、若い頃にに読んだ時はなんとも思わなかった作品が今読むとほんまにズッシリとくることに存外ドキドキした。短編だが、1つ1つがヘビー級なので満足感大、というよりもコレより長くなると辛すぎる、、というテーマばっかり。各作品に漂う作者自身のマイナーコンプレックスの噴出らしきキャラクターや苦悩が伺える。
    或「小倉日記」伝、菊枕、火の記憶、断碑、笛壷、赤いくじ、父系の指、石の骨、青のある断層、喪失、弱虫、箱根心中。

  • 歳をとってから読むと刺さるのかもしれない

  • 松本清張といえば、ミステリー作家といった印象が強いですが、実はミステリーばかりを書いた作家という訳ではない。そして、直木賞ではなく芥川賞受賞者だったということも、イメージと異なるような気がいたします。
    その芥川賞受賞作『或る「小倉日記』伝」をはじめとした短編が収録されいるのが本書。時代的な背景もあってか、どことなく暗いイメージが付きまとう作品が多いような気がしますが、それでもどの短編もドキッとさせられる結末。

  • 小説のような、ないような。

  • 「点と線」や「ゼロの焦点」とは違う清張作品。ミステリは「火の記憶」だけ。ただ、この「火の記憶」絶品でした。表題作の田上の運命は報われなさ過ぎて切なくなる。それと正反対な「断碑」。歯噛みするほど悔しいだろう「父系の指」とか、自身を投影させた作品が多く感じた。何れも暗くて好い。ていうか松本清張って「或る〜」で芥川賞受賞してたのを解説で知った。

  • 私が読んだ限り、清張の作品はどれも重苦しさが付きまとう。

    主人公には低学歴の学歴コンプレックスが目に付く気がするなと思ったら、清張自身が低学歴(尋常高等小学校卒(修了時14才))であることが影響しているようだ。

    学歴がないながらそれぞれの目標に向かってひたむきに生きる主人公たちが痛ましい。

    推理小説ではないからか、考古学シリーズが続くと飽きてしまった。

    『断碑』のシズエの健気さに涙。
    (2015.1.21)

  • ほとんど本を読み直すことはしない。
    ふとしたきっかけでふたたび小倉日記伝を読んだ。
    人生の不遇さと耕作のひたむきさになみだががこぼれた。
    以前に読んだ時はなにもかんじなかった。
    本はとても面白い、自分の人生も作品に投影されるようだ。

  • デビュー作。小倉の松本清張記念館には行ったことある。仕事場の机や、応接間とか、迫力あった。松本清張と太宰治は同じ年に生まれている。太宰が亡くなった頃から清張は書き始めた。

  • 行方のわからない森鴎外の「小倉日記」。
    これを自分の手で作り上げようとした青年の、一生の喜びや苦悩がひしひしと伝わってきます。

    志學館大学 : てんとう虫

  • 初めて読んだ松本清張の本。或る「小倉日記」伝が目的だったが、最近読んでいる、ある意味読みやすい日本語とはまた違った、重みのある文章の良さにドキドキしながら読みました。どの物語も嫉妬。読んでいて苦しくなるような文章であったけど、これが人間らしい。人は喜びに対して貪欲だし、その代償なのか、人は自分で自分の身を滅ぼしていく。これは誰のせいでもないのだなぁと思う。それを受け止めながら、正直に生きていく、まともに。自分に正直だからこそ自分勝手な人たちについて行く相方もまた強さを持っている。私なら逃げてしまうと思うけれど、辛抱強く人を支えるのもかっこいい生き方な気がした。
    或る「小倉日記」伝、私は耕作は幸せな人生の最期ではなかったかと思う。長生きして、もっと聞いて回りたかっただろうと思うけど、彼の書き上げる小倉日記を読んでみたかったけれど、小倉日記の発見を知らずにいられたことは幸せだったと思う。耕作が聞いて回った話を知りたい。きっと鷗外自身の書くものと違う話があっただろうから。

  • 小倉。清張。鴎外。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101109028
    ── 松本 清張《或る「小倉日記」伝 19650630 新潮文庫》
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19400620 散筆 ~ 折筆・断筆・休筆 ~
     

  • 重苦しい。信念はあるのに人格や運が災いして認められない学者。読者の心を抉る劣等感。少ないページ数で濃密に描かれています。障害や学歴は人生を狂わせ権力や見下げる視点は事実を歪ませる。気に入らない、面倒だと捨てられた側の否応なしの現実が辛いです。

  • 或る小倉日記伝もそうだけど、「菊枕」もすごく心に残っている。とても切ない。

  • 松本清張デビュー作にして芥川賞受賞作だそうです。作者は若い頃から転職を繰り返し、新聞記者から作家に転身。その文章技術と経験から多彩な世界を描けるのだと思いますが、アンダーグラウンドな舞台の多さから作者自身の生きてきた本当の世界が私は気になります。

    本作のラストにはびっくりしました。

    追記) 看護、介護問わず福祉に関わろうとする者なら一読の価値はあろうと思います。

  • 「昭和十五年の秋のある日、詩人K・Mは未知の男から一通の封書をうけとった。差出人は、小倉市博労町二八田上耕作とあった。」
    とは、
    なんとまあ、愛想のない書き出しだろう。
    カッコよさ・オシャレ感ゼロ、難しさもあざとさもゼロ。

    しかし。
    しかしである。
    ええ?!なに?なに?それで一体なにがあったの?!ここからなにが起こるの?と、ものすごく気になるではないか。

    「或る『小倉日記』伝」とは、大体、タイトルからして、まったく愛想がない。
    でも、つかまれてしまう。それで?それで?と、どんどん引き込まれていく。淡々と事柄を重ねていくだけなのに、ぐいぐい引っ張られ、最後まで連れて行かれる。

    そしてこのラスト。
    無常感とわずかな感傷。
    これがごく初期の作品だったのだから、なんとも恐ろしい新人だった、と言わずにおれない。

  • 息子の幸せを願う母心ってこういうものですよね。なにがあっても運命の人に会える時は会える……まだ出会っていない人に安心感を与えそうな話ではないでしょうか(笑)

  • これは素晴らしい短編集。特に「石の骨」でふみ子が残す「うれしいわ」という一言に至る流れは涙なしには読めない。どの作品を見ても、読み終わってからも着々と心に根付き、消えていかない。

  • 実話を元にした作品もあるとのこと。境遇に翻弄され、脱却できない人たち。「砂の器」の描く「宿命」にも通じるように感じる著者の作風。11.1.25

  • この短編集に入っている「或る『小倉日記』伝」「菊枕」「石の骨」「断碑」の4編は、いずれもモデルが存在する実話です。人は誰でも弱点やコンプレックスを持っています。しかし、そこから生まれる怒りや恨みを放っておくと、猛獣のように荒れ狂って、結局、自分自身が滅ぼされてしまいます。そのことに気がついた松本清張は、4編の主人公に自分を重ねながらも、人間が落ち入りやすい悲劇を見事に描いています。就活に、そして人生に、必読の1冊です。

    (九州大学 大学院生)

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