張込み (新潮文庫―傑作短篇集)

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著者 : 松本清張
  • 新潮社 (1965年12月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109060

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張込み (新潮文庫―傑作短篇集)の感想・レビュー・書評

  • 松本清張『張込み 傑作短編集(五)』新潮文庫。

    松本清張の初期作品8編を収録した短編集。いずれの短編も、ミステリーというよりも普通の人間が内に秘めている業を炙り出しているかのようだ。既読作が多いが、さすがに30年ほど前に読んだ作品なので、細部については忘れている。

    『張込み』。強盗殺人犯の石井久一が訪ねたのは今は普通の主婦で、かつて恋仲にあった女だった。石井を逮捕するために張込む刑事の柚木は主婦の暮らしを壊さないことを願うが…ヒリヒリするような緊張感が文章から伝わる。

    『顔』。劇団員の井野良吉に銀幕デビューの幸運が舞い込む。しかし、井野には知られてはいけない過去があった…井野良吉と石岡貞三郎の心理描写の対比が面白い。

    『声』。前半は結末が解るような単純なミステリーだと思っていたが、見事な仕掛けと捻りに見事に騙された。

    『地方紙を買う女』。地方紙に掲載される新聞小説を読みたいという理由で地方紙を取り寄せた東京の女、塩田芳子。ところが、新聞に男女の情死事件が掲載されたのを契機に新聞小説が面白くないという理由で購読を止める。それをいぶかしんだ新聞小説の作者、杉本隆治はその女に興味を持つが…一つの綻びが…

    『鬼畜』。映画やドラマにもなった傑作。妻のお梅と共に印刷所を営む竹中宗吉は料理屋のお春と男女の関係になり、3人の子供をもうけるが…終盤にミステリーらしい描写もあるが、基本的には人間の業を描いた作品であろう。

    『一年半待て』。現在は良く耳にするDVを下地に、女性の強かさを描いた作品。29歳の須村さと子が夫殺しで被告となったところから物語は始まる。ラストでタイトルの『一年半待て』の意味を知る時…

    『投影』。東京の新聞社を辞めて地方紙の記者となった太一が市政に蔓延る悪を暴く。

    『カルネアデスの舟板』。この短編もまた鬼気迫る人間の業を描いており、秀逸。

  • 先日逝去された渡部昇一先生はかつて『書痴の楽園』のテレビ番組の中で、松本清張作品は短編小説が面白いと語っておられました。
    丁度、松本清張の『鬼畜』を読んでいた。
    物語が進行するうち、かつてテレビドラマで視聴したことがあると感じながらネットで調べてみると、確かにあった。
    主演はビートたけし・妻役は黒木瞳がヒットしたが、それ以前に映画化されていたようである。それは主演が緒方拳・妻役は岩下志麻が最初らしい。
    何とも悲しくて辛い物語であろうか、犠牲者は妾に産ませた子供3人である。大人のエゴのため、子供たちは順番に処分されていくのです。
    決して子供たちは親を恨んでいない、子供たちは親に処分されるのを知っていたのではないかと考えるが故に、胸が詰まる思いがする。
    松本清張は、社会派ミステリー作家として数々の作品群を世に送り出している、暗い闇の部分を抉るような作品はどれもシリアスである。

  • 「張込み」「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」の8篇短編集。
    「松本清張の作品は犯人がどうして犯行に至ったかの心理が巧みに描かれていておもしろい!是非読んでみて欲しい」と勧められお借りしたものの、表紙がものすごく不気味でおどろおどろしさ満載で、依然読んだ「黒の画集」読後の気持ち悪さが甦り、なかなか読み始める気持ちを引き出せないまま4ヶ月が経過してしまった。

    なんとか意を決して1話目の「張込み」に取り掛かると、ミステリーの仕掛けもトリックもなく、異常心理の描写もなく、張込みから逮捕までの過程を淡々ち描いて終わったのでほっとした。

    そして、この短編集の中の一番のお勧めと伺った「地方紙を買う女」にとりかかる。
    女遊びの好きな薄汚い男と、それに毒され凶行に及んだ女。

    サスペンスフルでスリリングな文章表現の巧みさは称賛するが、男女の醜い情愛絡みの話が多くて、それに対峙させられる松本清張の作品はやっぱり苦手。

  • 松本清張の短編7編が収録。戦中・戦後・高度経済成長前の日本が舞台のためか、物価の違い、世相の暗さは、否めない。とはいえ、いまなおドラマ化される短編も収録されており、時代が変わっても、変わることのない人間の情愛・欲望が描かれている。

  • 【張込み】【顔】【声】【地方紙を買う女】【鬼畜】【一年半待て】【投影】【カルネアデスの舟板】収録。

    映画化された【張込み】【顔】【鬼畜】他、松本清張初期の作品を新潮文庫にて再編成された短編集。
    どの作品もミステリー的な仕掛けや目を見張るトリックはありませんが、登場人物のディテールが徹底している為重厚な人間ドラマを堪能することが出来ます。
    その典型が【張込み】で、僅か20頁しかありませんが何とも言えない味わいが堪りません。
    【顔】はどんでん返し、【声】はアリバイ崩しも楽しめる秀作。その他【鬼畜】や【一年半待て】など粒揃いで読み応え十分です。

  • 松本清張にどっぷり。体調不良で重苦しい気分がさらに重苦しくなる。それでもやめられない。麻薬のようなものか。
    松本清張の短篇には余計な贅肉のかけらもない。社会派ミステリの真髄。欲望やらなんやらを顕にする人間の所業が実に気持ち悪い。でも、だからこそ止まらない。

  • 再読了。名作『張り込み』と『鬼畜』を収録。
    社会派推理といわれた松本清張作品だが、全短編に共通するのはどちらかというと男女のドロドロした愛憎劇。

  • この中の『声』は、随分前にテレビで見たこともあったが、改めて読むと思い出す。国電というの懐かしいなとか、電話交換手は若い人わかるのかしらなど、昭和の好きな時を思い出した。
    清張は、本当短編も素晴らしいからいつ読んでも楽しい。

  • 8編短編集。
    表題作の「張込み」から順に、「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」

  • 十数年ぶりの再読。短編だが名作ばかり。読んでいて胸が締め付けられるような息苦しさがあって、時々読みたいと思っても読後感を考えるとつい後回しにしてしまっていた。でもそれはもったいないことだったと思う。表題作の「張込み」が特に私には印象深い。

  • 推理小説と呼ぶには文学的だが文学というにはあんまり面白い。入門演習のテキストとして買ったけれど、ほかの本も読んでみたいと思った!一つ一つ面白いんだがタイトルのつけ方が微妙かな…タイトル聴いて内容がぱっと思い出せるのは「一年半待て」くらい…私の記憶力が悪いだけか知らん…orz

  • 「張込み」「顔」「声」「鬼畜」がよくできている。
    とりわけ「張込み」のすごさが際立つ。

  • 松本清張の推理小説は安心して読める。
    推理小説というかミステリ?

    表題作はあっさり終わって微妙…
    「顔」はやっぱり良い。
    「声」と「地方紙を買う女」も設定がよくできてて好き。

  • 一年半待てまで一気に読みました。
    短編だけどどれも読み応えがあって面白い。
    で、どれも松本清張作品の代表作
    タイトルは知っているのばかり。

    松本清張作品は裏切らないですね。

  • 石の骨、段碑、悲しい終わり方だが、描いた人物への敬意と著者の強い決意のようなものが感じられる。

  • 今年は清張生誕100年なので30数年ぶりに新潮文庫の傑作短編集を読み返えしている。
        張込み  顔 声 地方紙を買う女 鬼畜 一年半待て 投影        カルネアデスの船板
     2009年10月18日比叡山延暦寺に行く。その日は疲れたので夜の読書はせず、翌日19日夜に「顔」を読んでいたら「顔」の殺害予定現場が偶然、延暦寺東塔から西塔には驚愕。

  • 映画を先に見ました。
    これだけの短編を2時間に引き伸ばすのは無理がありました。
    それなのに何度もドラマ化されているというのはすごいです。

  • 面白い。
    およそ45年ほど前に書かれた小説。時代は感じさせるものの、人間の悲しさ・体制的なものに対する熱い思い等など、さまざまなエッセンスが入ってる。
    今は亡き松本清張氏が現代の推理小説を書いたら、どんな風になるんだろ?

  • 松本清張氏の作品は短編の方が好きです。無駄がなくシンプルなのに、読むたびに違った見方ができて。さらに自分の想像で膨らませていくのも楽しい。ミステリだからトリックがある。社会派といわれるだけに当時の世相も反映されてる。だけどこの方の本当の魅力は行間を読ませる文章力だと思います。「一年半待て」のラストも、「顔」の二転三転する状況も、大筋では同じことを書いても、同じだけのインパクトを与える表現の仕方ができる作家さんはいないでしょう。

  • とても読みやすい。言葉の言い回しが昔な感じがして好きだ。

  • トリックよりも犯罪を犯す心理の描写に重きを置いた短編集。
    表題作の「張込み」は犯人ではなく、犯人のかつての恋人で今は後妻に入っている女性を張り込む刑事の姿が描かれている。
    犯罪現場があるわけでなし、大層な逃亡劇があるわけでなし、一見平坦な話のように思わせて、その実濃密な物語になっている。
    その他、「鬼畜」に描かれた男の情けなさ、「1年半待て」の女の強かさが印象に残った。
    時代を超えてなお、良作だと思う。

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