黒い福音 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109138

感想・レビュー・書評

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  • この作品は、昭和34~35年に書かれたもの。
    清張が50歳位の時に書かれた作品である。

    日本人スチュワーデス殺人事件という実際にあった事件をヒントに書かれたもので、当時としてはタイムリーな作品であり、それなりに読まれたようである。


    ●2023年9月10日、追記。

    読了してから、7年位が経つ。
    早いものだ。

    実際にあったスチュワーデス殺人事件とは、昭和34年に英国海外航空の現役スチュワーデスが殺害されたという事件。犯人と思われたのは、ベルギー人神父。ただ、その神父の帰国により、事件は未解決。

  •  同じ教団に所属する者として戦慄したのは、本作によってではなく、当時の週刊誌のインタビューに載ったある女性作家のコメントである。
     司祭による殺人(容疑)というセンセーショナルな事件に対し、この作家は以下のように述べている。
     「神父様の瞳をご覧になって下さい。澄み切った美しい瞳です。決して人を殺せるような方の目ではありません」

     ベルメルシュ神父(作中ではトルベッキ神父)は2009年時点でカナダの地元の名士として存命中であった。この事件についてはノーコメントを通し、死者への哀悼のことばはなかったと聞く。

     なお本事件に関し、日本のサレジオ会(作中ではバジリオ会)でも真相を曖昧にした当時の教会当局のあり方を批判する声があることは明記しておきたい。

  • おもろいテーマだった
    キリスト教の裏側、新興宗教がテーマの本をもっと読んでみたい

  • 前半も後半もルポっぽくない叙述なのは未熟さか

  • サイテー野郎の話でした。

  • ある日本人スチュワーデスの殺人事件を追ううちに、教会の闇物資や麻薬取引にも事件と関係があることがわかってくる。事件を追う警察や新聞社だが、教会の閉鎖的な慣習と戦後間もない日本の立場の弱さが、犯人逮捕の道を閉ざしていく。実際に日本で起きた事件をもとに描かれた小説。信仰の名の下に、教会のためなら善悪の判断もつかなくなってしまった神父たち。神父は悪いことをしないという前提のもと、擁護する信者たち。何かがおかしいのにそこがわかっていないその感覚。わたしが宗教に何となく苦手感を持っている理由がそこにあるような気がする。

  • 「黒革の手帳」が本気で何が面白いのか分からなかったので、僕のなかで松本清張は火曜サスペンス劇場の人ぐらいのポジションになってしまっていたのですが、この「黒い福音」はよかった。

    そもそも僕は、吉村昭作品のようなノンフィクション小説が好きで、本を読み終わったあとは「現実すげー」とアホ面で元ネタの事件について色々調べたりして賢くなった気になっているわけですから、同じく現実に起きた事件を下敷きにしたこの「黒い福音」が面白くないはずはなかったのでした。

    しかしこの作品のすごいのは、吉村昭小説では出来る限り事実に即して物語が描かれるのに対し、犯人が結局捕まっていない殺人事件の犯人の行動を全部書いてしまって、「こいつが犯人です」と真顔で言ってしまうところ。

    様々な人たちの思惑や、政治情勢の影響によって結局検挙されなかった犯人に対し、そして世界に対し、毅然とNOを突きつけられる文学の可能性を僕は、火曜サスペンスの人だと思っていた松本清張に教えられたのでした。やっぱり読まず嫌いはダメですね。

  •  

  • 犯罪はどこで道を誤れば至るのか。聖人君子ではない神父もまた人として道を見誤る。裏社会にも通じる圧力は時に政治や世間体へと影響する。真実を突き止められずに終幕する未解決事件、悔恨が日常の営みに溶け込んでいく。忘却へと流される被害者の無念が私たちの心にひっそりと宿した時に変えよう変わろうという声となることを望む。変えなければならないのは世間よりも先に私たちなのだ。

  • 昭和34年に実際に起こった「スチュワーデス殺人事件:英国海外航空の現役スチュワーデス:武川知子さん(27歳)が川の畔で死亡しているのが発見。解剖の結果、他殺と断定されて、捜査が始まる。遡上に上ったのは、武川さんが通っていた都内杉並区にあるカソリック教会のベルギー人神父。結局、神父の帰国によって未解決のまま。」を素材とした作品が本書。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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