時間の習俗 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109237

感想・レビュー・書評

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  • 「松本清張」の長篇ミステリー作品『時間の習俗』を読みました。

    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    『点と線』の二人が難事件に挑む!!

    神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。
    関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――
    『点と線』の名コンビ「三原警部補」と「鳥飼老刑事」が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
    -----------------------

    雑誌『旅』の昭和36年5月号から翌年11月号に連載された作品、、、

    傑作『点と線』と同じ雑誌に連載されたこともあり、『点と線』で活躍した「三原警部補」と「鳥飼刑事」が再び探偵役となり、犯人が仕組んだアリバイに挑戦する物語です。


    関門海峡に面した門司市の古社・和布刈神社で、旧暦元旦の未明に行われる神事に写真撮影が殺到… その前日の深夜23時頃、神奈川県の相模湖近くの弁天島で、交通関係業界紙の編集人「土肥武夫」の死体が発見される、、、

    「土肥」の投宿していた宿の女中は、女性が同行していたことを証言するが、その女性は行方不明になっていた… 有力な容疑者も挙がらず手がかりが掴めない中、「三原警部補」は「土肥」の交際人物のリストから、タクシー会社の専務「峰岡周一」に着目するが、「峰岡」は和布刈神社の神事を見物し、その模様をカメラに収めていたという、あまりにも完全なアリバイがあった。


    「三原警部補」は、和布刈神社を所管する福岡県警の「鳥飼刑事」と連携してアリバイ崩しを試みます、、、

    そんな中、福岡の水城で若い男性の絞殺死体が発見される… 「峰岡」が訪れていた福岡での事件であることや、犯行手口が相模湖の事件と類似していたことから、二人は2つの殺人事件は関連性があると推理して、捜査を進めます。


    2つの事件に共通して存在している、ひとりの女性… これがミスリードさせられる展開でしたね、、、

    アリバイは、東京~福岡間の飛行機が大阪経由だったことや、写真が他人の撮った写真を撮影していたこと等から徐々に崩れ、そして、ゲイボーイの存在が発覚して、一気に解決に向かいます。


    アリバイ崩しの醍醐味が味わえる作品… 「三原警部補」に感情移入して、一緒にアリバイ崩しを推理する気分に浸れました。


    飛行機は座席が決まっていなかったことや、カラーフィルムはフィルムメーカーにネガを送って現像する、定期券を身分証明に使う… 等、現代とは条件が大きく異なったり、違和感のある場面もあり、時代の変化を感じられました、、、

    これらは現代では使えないトリックですけどねぇ… 当時では斬新なトリックだったんでしょうね。




    以下、主な登場人物です。

    「三原紀一」
     警視庁捜査一課の警部補。
     『点と線』の事件以来、鳥飼刑事と親しい間柄となっている。

    「鳥飼重太郎」
     福岡署の古参刑事。
     峰岡のアリバイに関する回答を契機に、事件調査に協力する。

    「峰岡周一」
     大手タクシー会社「極光交通」の専務。

    「土肥武夫」
     「交通文化情報」発行人及編集人。

    「江藤白葉」
     俳句誌「荒海」の主宰者。

    「須貝新太郎」
     名古屋のバー「蝶々」勤務の男。

    「梶原武雄」
     「上ノ橋福岡食品工業」の工員。

  • 点と線の続編(メインの刑事が同じ)でアリバイ崩し。あんまり完璧過ぎるアリバイも疑われる好例。
    老刑事との交流が続いているのにホッコリする。

  • アリバイ崩しがメインなので仕方ないとはいえ最初から峰岡犯人ありきで話が進んでるのが残念なところ。動機も弱いといえば弱いかなあ。
    北九州民としては点と線と同じくお馴染みの場所が舞台になっててそこは楽しめました。

  • ●→引用、他は感想

    ●この警部補は峰岡に容疑の焦点を当てながら、そのアリバイを克明に検討する。乗物の可能性についても、写真撮影のからくりについても、思いつく限りを俎上にのぼらせ、逐条審議の過程を包まず述べている。いわゆる名探偵が読者を見下して、高踏的な言辞を弄するのに比較すると、三原は試行錯誤のくり返しで、いわば読者と一体である。読者の思いつきそうなことを考え、そしてそれが不可能の壁に突き当たって、また元に戻る。彼の思考と心情をつぶさに写す手法は、読者との一体感をもたらすのにはなはだ効果的であった。
    ●容疑者のアリバイを崩すためには、フィルムに写った写真の順序を変えるトリックを解明しなければならない。これと失踪した女性の消息について悩まされるのだが、後者の解明はやや肩すかしをくった感を覚えぬでもない。
    →後者の解明は、発想の転換、意外性という点で面白いと思うのだが・・・。

    それよりむしろ、容疑者を特定する過程や、第一の殺人の動機、フィルムトリックの鍵となる人物の転職のどの方が肩すかしというか、行動原理に希薄さを感じてしまう。しかし、それはあくまでも自分が作者に抱く「社会派推理小説作家」というイメージとの差なのかもしれない。そもそも松本清張という作家は、宮部みゆき、松本清張以来の「社会派推理小説作家」という概念、イメージなのである。この小説は、宮部みゆきの社会派推理小説ではなく、松本清張の一種のパズル小説なのだと考えれば、決して悪い小説とは言えないのではないか。

  • 神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。
    一緒にいた女性は行方知れず、刑事が気になる男性は九州にいて、神社の新年の行事を撮影したという完璧なアリバイがあった。

    アリバイ崩し話。
    連絡は固定電話か電報、カメラはフィルム。
    現代では成り立たない話だが、行方知れずの女性のことなど気がつかないこともあった。

  • 久しぶりに松本清張の作品を読んだ。文体は簡潔で最初に和布刈神事が出てきたのには、さすが小倉で生活している人だなと思った。
    地名も馴染みの場所が多くて、思い出しながら読んだ。殺人のトリックを見破る刑事の思考と、ベテラン刑事の粘り強さに、昭和を感じる。47年の作品だものね。それにしてもこの時代にゲイバーが出てくるとは。

  • 松本清張「点と線」で一緒に事件を解決した、九州の老刑事と警視庁の若い警部補が再度顔を合わせ事件を解決に導く。2人が励まし鼓舞し合い犯人を追い詰めていく姿がページをめくる指を進ませる作品。

  • 写真フィルムがトリックの肝になっている話。カメラを持つ人が世の中にまだ珍しいような時代を舞台としているので、推理の前提も現代から見るとむしろ目慣れない部分がある。
    謎解きはフーダニットではなくハウダニット。主人公の刑事があれこれ仮説を立てては自分で崩していく試行錯誤の過程に付き合うことになる。あとがきに評されるごとく論理的な推理に重きを置く緻密な構成である一方、快刀乱麻でスカッとしたいときには不向きかもしれない。

  • 松本清張の代表作のひとつともいうべき一冊。九州は関門海峡の文字突端に位置する和布刈神社にて、旧正月に行われる神事、これが重要なアリバイとなる。事件解決に奔走するのは、『点と線』での警視庁と福岡署の刑事。昭和37年当時の飛行機搭乗の妙、鉄道定期券が身分証明として使われていたといった当時の時代背景も、現代では興味深い。

  • ネタバレ/雷
    這部作品是本格推理,故事中從九州最北側的和布刈神社的舊曆新年神事開始。相模湖發生男子被勒斃的命案,警部補三原懷疑計程車公司的管理職峰岡為犯人,但他擁有和布刈神社當晚神事攝影的底片為不在場證明,而相模湖與男子同行的女性亦始終查不出來,峰岡本人也查不出任何女性關係。而峰岡被人目擊在西鐵定期券的櫃台前,其卻稱只是要去太宰府的都府楼址。三原先前拜託點與線的鳥嗣刑事協助,這時太宰府的水城附近卻又發現另外一件命案,年輕男子被勒斃,附近掉了一只女性手套,鳥嗣開始負責追查,他與三原皆認為與相模湖命案有關。然而一個小小的線索是,相模湖受害者土肥曾經向妻女提過峰岡曾帶他去有趣的地方,警方終於在名古屋有所突破,查出太宰府的死者是GAY BAR的芳子/須貝新太郎,他正是協助峰岡殺害土肥的和服女子。而至於難解的峰岡不在場證明,其實是另外筑紫俳壇的梶原武雄所攝影的照片,為了彩色顯影而送到東京(當時主要是黑白照片,能彩色顯影的地方有限),而峰岡以在西鐵定期券冒名領取照片,將自己的底片回捲之後複製梶原所拍的照片。

    我很少讀本格推理,這部作品設計本身並不複雜,就是完全帶著讀者去跟三原一起思考、猜想各種可能,很多可能都在中途被擊沉,最後的最後才解開謎團。就故事而言,當然是很刻意的設計,但清張就是清張,寫得這麼輕快都好讀,又參雜著九州風景,讓我忍不住一天就把這部作品掃完。九州的神事和太宰府的旅情,不禁回想起託阪急交通社之福,那好幾次的九州行。每次去九博的巴士都會經過樓府,我從未在那附近下車過,總是從車窗眺望著遺跡而已,但讀著讀著不知為何想起了曾經在車窗外黃昏時在樓府放風箏的剪影。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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