時間の習俗 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109237

感想・レビュー・書評

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  • この作品は、昭和37年に書かれたもの。
    清張(1909~1992)が53歳位の時に書かれたものである。

    相模湖畔で交通関係の業界紙社長が殺されたが、その犯人と目されてるタクシー会社専務がトリックを駆使し、そのトリックを三原警部補と鳥飼老刑事が解明していくという内容。

    トリックが複雑すぎて自分にはわからなかったが、それなりに楽しめた。

  • アリバイ崩しがメインなので仕方ないとはいえ最初から峰岡犯人ありきで話が進んでるのが残念なところ。動機も弱いといえば弱いかなあ。
    北九州民としては点と線と同じくお馴染みの場所が舞台になっててそこは楽しめました。

  • 「点と線」の名コンビが復活した作品ということで読む。今回も執拗で地道な捜査が容疑者のトリック、アリバイを崩すが、時代的なものも有りいまひとつピンとこない部分もある。

    そもそも、三原刑事が容疑者絞り込む過程に?がつく。警察はこんな曖昧な段階で、ここまで容疑者をマークするのでしょうか。あまり根拠もなく随分捜査にお金も使っているように思われる。消えた女の謎もホントかよという感じではある。

    本作は名コンビ復活ではあるが、ほぼ主役は三原刑事であり、その執念には頭が下がるが、思い込みが激し過ぎるきらいがあって、リァリテは感じられなかった。ただそれでもグイグイ読ませる筆力はさすが。

  • ●→引用、他は感想

    ●この警部補は峰岡に容疑の焦点を当てながら、そのアリバイを克明に検討する。乗物の可能性についても、写真撮影のからくりについても、思いつく限りを俎上にのぼらせ、逐条審議の過程を包まず述べている。いわゆる名探偵が読者を見下して、高踏的な言辞を弄するのに比較すると、三原は試行錯誤のくり返しで、いわば読者と一体である。読者の思いつきそうなことを考え、そしてそれが不可能の壁に突き当たって、また元に戻る。彼の思考と心情をつぶさに写す手法は、読者との一体感をもたらすのにはなはだ効果的であった。
    ●容疑者のアリバイを崩すためには、フィルムに写った写真の順序を変えるトリックを解明しなければならない。これと失踪した女性の消息について悩まされるのだが、後者の解明はやや肩すかしをくった感を覚えぬでもない。
    →後者の解明は、発想の転換、意外性という点で面白いと思うのだが・・・。

    それよりむしろ、容疑者を特定する過程や、第一の殺人の動機、フィルムトリックの鍵となる人物の転職のどの方が肩すかしというか、行動原理に希薄さを感じてしまう。しかし、それはあくまでも自分が作者に抱く「社会派推理小説作家」というイメージとの差なのかもしれない。そもそも松本清張という作家は、宮部みゆき、松本清張以来の「社会派推理小説作家」という概念、イメージなのである。この小説は、宮部みゆきの社会派推理小説ではなく、松本清張の一種のパズル小説なのだと考えれば、決して悪い小説とは言えないのではないか。

  •  相模湖畔で起きた殺人事件。峰岡という男は、和布刈神事の写真を撮っていたという。しかし、そのアリバイに疑いを抱いた三原は、福岡の鳥飼刑事とともに捜査にあたる。その過程で、大宰府や鐘崎など福岡の地名が出てきた。ハウプトマンの『沈鐘』って?
     電話の直通区域って?飛行機の席のこと、カラーフィルムの現像のことなど、当時の事情を知らないため、説明されてそういうものなのかと分かることも。

  • 「松本清張」の長篇ミステリー作品『時間の習俗』を読みました。

    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    『点と線』の二人が難事件に挑む!!

    神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。
    関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――
    『点と線』の名コンビ「三原警部補」と「鳥飼老刑事」が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
    -----------------------

    雑誌『旅』の昭和36年5月号から翌年11月号に連載された作品、、、

    傑作『点と線』と同じ雑誌に連載されたこともあり、『点と線』で活躍した「三原警部補」と「鳥飼刑事」が再び探偵役となり、犯人が仕組んだアリバイに挑戦する物語です。


    関門海峡に面した門司市の古社・和布刈神社で、旧暦元旦の未明に行われる神事に写真撮影が殺到… その前日の深夜23時頃、神奈川県の相模湖近くの弁天島で、交通関係業界紙の編集人「土肥武夫」の死体が発見される、、、

    「土肥」の投宿していた宿の女中は、女性が同行していたことを証言するが、その女性は行方不明になっていた… 有力な容疑者も挙がらず手がかりが掴めない中、「三原警部補」は「土肥」の交際人物のリストから、タクシー会社の専務「峰岡周一」に着目するが、「峰岡」は和布刈神社の神事を見物し、その模様をカメラに収めていたという、あまりにも完全なアリバイがあった。


    「三原警部補」は、和布刈神社を所管する福岡県警の「鳥飼刑事」と連携してアリバイ崩しを試みます、、、

    そんな中、福岡の水城で若い男性の絞殺死体が発見される… 「峰岡」が訪れていた福岡での事件であることや、犯行手口が相模湖の事件と類似していたことから、二人は2つの殺人事件は関連性があると推理して、捜査を進めます。


    2つの事件に共通して存在している、ひとりの女性… これがミスリードさせられる展開でしたね、、、

    アリバイは、東京~福岡間の飛行機が大阪経由だったことや、写真が他人の撮った写真を撮影していたこと等から徐々に崩れ、そして、ゲイボーイの存在が発覚して、一気に解決に向かいます。


    アリバイ崩しの醍醐味が味わえる作品… 「三原警部補」に感情移入して、一緒にアリバイ崩しを推理する気分に浸れました。


    飛行機は座席が決まっていなかったことや、カラーフィルムはフィルムメーカーにネガを送って現像する、定期券を身分証明に使う… 等、現代とは条件が大きく異なったり、違和感のある場面もあり、時代の変化を感じられました、、、

    これらは現代では使えないトリックですけどねぇ… 当時では斬新なトリックだったんでしょうね。




    以下、主な登場人物です。

    「三原紀一」
     警視庁捜査一課の警部補。
     『点と線』の事件以来、鳥飼刑事と親しい間柄となっている。

    「鳥飼重太郎」
     福岡署の古参刑事。
     峰岡のアリバイに関する回答を契機に、事件調査に協力する。

    「峰岡周一」
     大手タクシー会社「極光交通」の専務。

    「土肥武夫」
     「交通文化情報」発行人及編集人。

    「江藤白葉」
     俳句誌「荒海」の主宰者。

    「須貝新太郎」
     名古屋のバー「蝶々」勤務の男。

    「梶原武雄」
     「上ノ橋福岡食品工業」の工員。

  • 点と線の続編(メインの刑事が同じ)でアリバイ崩し。あんまり完璧過ぎるアリバイも疑われる好例。
    老刑事との交流が続いているのにホッコリする。

  • 神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。
    一緒にいた女性は行方知れず、刑事が気になる男性は九州にいて、神社の新年の行事を撮影したという完璧なアリバイがあった。

    アリバイ崩し話。
    連絡は固定電話か電報、カメラはフィルム。
    現代では成り立たない話だが、行方知れずの女性のことなど気がつかないこともあった。

  • 久しぶりに松本清張の作品を読んだ。文体は簡潔で最初に和布刈神事が出てきたのには、さすが小倉で生活している人だなと思った。
    地名も馴染みの場所が多くて、思い出しながら読んだ。殺人のトリックを見破る刑事の思考と、ベテラン刑事の粘り強さに、昭和を感じる。47年の作品だものね。それにしてもこの時代にゲイバーが出てくるとは。

  • 松本清張「点と線」で一緒に事件を解決した、九州の老刑事と警視庁の若い警部補が再度顔を合わせ事件を解決に導く。2人が励まし鼓舞し合い犯人を追い詰めていく姿がページをめくる指を進ませる作品。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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