Dの複合 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109282

感想・レビュー・書評

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  • ミステリと民俗学的要素の結合は個人的には大好物。ただ、本作の場合は、必ずしも民俗学的な物を背景にする必然性が人工的過ぎる。その上事件そのものが強引で謎解きの過程もかなり不自然に感じられる所がある。結末も悲しすぎるし、ここまで人が犠牲になるのも納得出来ない。

    それでも読ませてしまうのは、清張の筆力と蘊蓄の楽しさプラス、私くらいの年代だと昭和の雰囲気にどっぷり浸かれるのが心地よいからか。

  • ※犯人ネタバレ


    タイトルセンスに脱帽
    浜中くんの壮大で回りくどい復讐計画。
    みんなグルだったから、関係者がすぐに捜査線上に浮上したんだな。
    最初の白骨死体がただの話題作りだったのは驚き。
    浦島伝説や羽衣伝説が、淹留説に基づいたもので、それが網走で無実の罪で投獄されたことを指すってのは、ちょっと迂遠すぎる。そりゃ社長も気づかないよ。
    関係のない第三者の坂口みま子が殺されて、浜中くんは本当の意味で後戻りできなくなったんだな。
    武田編集長がかわいそうすぎる!!過去の因縁も知らなかったわけだから
    ニセ?藤田くんはとてもよかったな。ノリで転職したり墓を暴いたり白骨埋めるの手伝ってくれたり、飄々としていて面白い
    諸悪の根源は社長だが、大体は浜中くんのせい。こいつも悪い奴だよ
    最後の手紙の独白は、やはり一抹の切なさがあった
    先生、今度は本当に浜中くんの新聞広告出すんじゃないのか。全国紙で

  • <君は今どこにいる?>

     売れない小説家に舞い込んだ一件の依頼。浜中にリードを引かれるが如く、伊瀬は連れ回される。
     緻密すぎるストーリー。色鮮やな織物も、一つ一つの糸になるまで解いていくとそれがなんだったのかよく分からんのです。

     偶然。思いもかけない出来事に遭遇することを言う。偶然、映画館で恋人とデート中の先生を目撃したりとか、偶然、無くなっていた片方のピアスを見つけたりとか、偶然、目の前で交通事故が起きたりする。どうして起きたのか、原因なんて見当たらないように見える。またえてして、そうゆうことは重なる。たまたま誤送信してしまったメールに限って、他人に知られては困るような内容だったりする。
     でも、本当に「たまたま」なのだろうか。運が悪かった、もしくは良かっただけだろうか。その時集中力が切れていたのは、昨日夜更けまでゲームをしていたせいじゃないか? 先週彼女に振られたことを引きずっていないと胸を張って言えるだろうか? 突き詰めれば源泉が見えてくることがある。「偶然」とは濃い霧みたいなものなのかもしれない。晴れることもある。
     伊瀬の浜中に対する胸中も、終始面白い。「知ったような顔をすぐにする小賢しい若造が、鬱陶しい奴め」と心中で毒づきつつも、「おい、なんで連絡してこんねん。心配したやろ」とキレもする。まあそんな憎めないやつ、いますよね。笑
     最後、読み切った時に心に残る余韻、想い。そっくりそのまま主人公と重なったのか、これは、と思いました。

     なんとなく「古い人でしょう」と今まで松本清張を読んでこなかったことを恥じております。と同時に、これからたくさん出会うことができるという事実にワクワクしています。良かった!

  • 伝承を追う紀行文から始まる殺人事件。北緯35°東経135°……35という数字に気がついた者、謎の男と女、ミステリーの要素に浦島伝説、羽衣伝説と民族伝承が絡まった読み応えのある作品。

  • 昭和40年代の作品。売れない小説家が、新規雑誌社から紀行文執筆を頼まれて、編集者と一緒に浦島伝説・羽衣伝説の取材旅行にでるのが、奇怪な事件に遭遇するきっかけ。緯度経度、35にまつわる旅先。

  • 松本清張の風土民俗への強い関心は言うまでもないが、他の作品に輪をかけて紀行文的であるところが特徴的であり、非常に愉しかった。私のようにひねもす日本地図を眺めていられる人種には堪らないだろう。

    一方で、その両軸となるミステリ的側面はやや体裁的に感じた。いわゆるミステリを期待する人や、松本清張をあまり読んだことがない人には勧めない。 

    ところで物語のキーワードとなる船舶の名前だが、その画数が35になっている。特に言及が無かったので偶然なのかもしれないが、氏の遊び心を想像せずにはいられない。

  • 清張先生も泊まったという作品に登場する人丸旅館はNHK音楽コンクールの兵庫県予選の会場に行くときにいつも見ていた。

    僻地を巡りながら物語が展開してゆく。ストリートビューで想像しながら読むスタイルなので飽きなかった。

    昭和40年に60万部のベストセラーだという。今なら障碍者蔑視と言われる書き方が普通にしてある。
    ウィキペディアで知ったがドラマ化では全編を通じて謎を形成する重要な登場人物の男女二人が出てこないという。

    手抜きの感がするが、それでも視てみたい。

  • 面白いといえば面白かったが,後半~終盤に急展開する謎解きには,ついて行けなかった.盛り上がりの時系列は ”ゼロの焦点”と同じよう.

    まあ一応,主要な登場人物を記載しておく:
    伊瀬(主人公.B級作家.とある小出版社から「秘境を訪ねる旅」みたいな連載エッセイを依頼された.その取材で訪れた場所場所で事件に巻き込まれる.
    浜中(その出版社の作家・伊瀬の担当者.本名海野.S16に父親を謀殺された.)
    奈良林(こやつが実はワル.戦後,不動産や株で財をなし,いまは道楽から小さい出版社を経営.S16 に法に触れる物資を運んでいた商船の持ち主. 浜中の亡父はこやつに謀殺された.

  • 推理小説の巨匠、松本清張の長編推理小説。本作は、怨念による殺人事件に古代史を織り交ぜた、松本清張作品の代表作の一つですね。

    松本清張作品を読むのは『点と線』に次いで2作目なんですが、ストーリー重視である自分の好みにすごく合っていて、面白いことを再確認しました。
    これが、1968年に刊行された作品だなんて思えない。それくらい古くささや読みにくさを感じさせない作品です。

    松本清張らしく、密室トリックなどの謎解きではなく、「犯人は誰なんだろう、殺人の動機は何なんだろう」ということを、読者にハラハラ気にさせながら読ませる作品であり、もちろん推理小説なんですが、殺人事件の謎を追うサスペンス作品ですね。

    間違いなく、火サスとか好きな人は面白く読めると思います。

  • ストーリーに執拗に絡む35・135という数字や浦島伝説・羽衣伝説といった伝承に隠されていた意味に唸らされた 物語ラストの怒濤の伏線回収が爽快 ゾクッとするような幕切れが良い

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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