- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101109398
感想・レビュー・書評
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みうらじゅんの「清張地獄」を読んでから、私も再び清張地獄にハマりつつある笑
清張の作品には、似た感じのものや同じトーンのものが多いが不思議に飽きない。しょうもない男や、男にとことん依存しいる女など、人間としてはクズの部類に入る人を描かせると本当に清張はうまいと思う。ある意味人間の本質を捉えているのだろう。
私は昭和を知っている世代であるので、ある意味リァリティを持って清張作品を読めるのだが、若い読者にはどう感じられるのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「松本清張」の短篇集『眼の気流』を読みました。
『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』、『張込み 傑作短編集〔五〕』、『黒い画集』に続き「松本清張」作品ですね。
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車の座席で戯れる男女に憎悪を燃やす若い運転手、愛人に裏切られた初老の男。
二人の男の接点に生じた殺人事件を描く表題作等5編。
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以下の5篇が収録されています。
■眼の気流
■暗線
■結婚式
■たづたづし
■影
『眼の気流』は、前半はタクシー運転手の視点、後半は刑事の視点から、ひとつの事件を追う物語、、、
前半では愛人に裏切られた初老男性が被害者として描かれ、後半では愛人が情人と行方不明となり初老男性が加害者では… という疑惑の人物として描かれています。
タクシー運転手の視点から偶然乗り合わせた客の私生活に興味を持つことや、前半は被害者として描かれた人物が後半では加害者となる展開は、他の作品でも類似性が感じられましたね。
被害者の着ていたシャツと目撃者の証言が一致しない点に隠されたトリックや、一度は捜査に失敗する死体処理のトリックも、なかなか凝っていて面白かったですね。
『暗線』は、父親の暗い出生の秘密を一歩一歩解明する物語、、、
同じ血を分けた兄弟が、一方はエリートコースを歩み、一方が薄幸な人生を歩むことや、その生地が島根であることが、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』に収録されていた『父系の指』を彷彿する内容でしたね。
運命の不条理… 「松本清張」が好んで描くテーマですよねぇ。
『結婚式』は、若くて美しい女性社員との恋に落ちた中年の経営者が人生を転がり落ちる物語、、、
中年経営者の友人の視点から描かれるのですが、出席した結婚披露宴で、その忌まわしい過去を思い出すという展開… 奥さんが立派過ぎたために起こった事件でもあるのかな。
破局の末に中年経営者が取った行動は、出た恐るべき内容でした。
『たづたづし』は、独身と思っていた不倫相手の女性に刑務所で服役している旦那がおり、しかも、近々出所することを知った男性が、立身出世と体面を保つために愛人を殺そうとする物語、、、
一度殺したはずの女性が生きており、記憶喪失となって生活していることを知った男は、再度、女性を殺そうとするが、記憶喪失になった女性を愛してしまう。
しかし、或る日、女性が失踪… そして、数年後、出張先で幼子を背負った女性を偶然見つける、、、
どこかで読んだ記憶があるなぁ… と感じながら読んだのですが、調べてみると、5年前に映像化作品『愛のきずな』を観てましたね。
『影』は、有名通俗作家のゴーストライターを務めることで、文芸作家への道を踏み外した男の物語、、、
岡山の山間の温泉旅館(湯原温泉かな?)に宿泊した(零落した)作家の男性は、旅館の主人が若いころにゴーストライターをした(させられた)人物だった。
代筆していたことが判明し、お互いが破滅、、、
二人とも作家としての人生を諦めることになったが、どっちが加害者でどっちが被害者だったのか… 小説家の内輪ネタとして愉しめました。
「松本清張」の面白さに嵌っちゃってます… 次々に読みたくなりますね。 -
眼の気流:運転手の場合、刑事の場合と2編より構成されている結末はイマイチ分かりずらい。結局、殺したのは運転手なのか?それとも小川圭造と二人で?
暗線:結局、よく分からずじまい。父系の指とストーリーが似ているか?
結婚式:結婚式披露宴の間の回想。中年男のどうしょうもない嫉妬が不幸を招いた。残念。
たずたずし:中央線富士見駅。結局、良子は記憶喪失のままだったのか。結末は曖昧だ。
影:冒頭に出てくるM温泉とは中国勝山からバスに乗った真賀温泉か?代筆をしている間に自分の個性、才能が奪われるとは残念だ。 -
表題作を含む5つの短編集。解説にも記載されているが、中高年男性の暗い、やり場のない悲しみや物憂いが、共通する短編集。
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いやー、時代を感じさせまくりながらもなぜこんなに面白いのか。「たづたづし」なんて、なんで首に手のあとがついていなかったかの説明がついになかったし、流れはひどいもんなのに(ダンナが刑務所に入っている、というくだりあたりから、かなり行き当たりばったり感が)最後まで読むのをやめられない。
「影」がいちばん面白かった。後書きにも書かれているが、当時の鬼編集部の姿が生き生きと描かれ、読んでいてほくそ笑んでしまう。
トリックや事件そのものがというのではなく、そこに致るまでの人間の葛藤、喜怒哀楽、ペーソスが、読んだあとも忘れられないものになっている。かっけぇなあ、昭和の文豪。 -
ドラマの原作ということで気になった「たづたづし」を読みたくて手にした。他の短編もいろんな感じがあって面白かった。
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P308
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20160508読了
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トリックよりも、動機、心の綾をテーマに描く。いつ読んでも古くない。12.12.9