雲の墓標 (新潮文庫)

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著者 : 阿川弘之
  • 新潮社 (1958年7月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101110028

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雲の墓標 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 春の城より読み終わるのに時間がかかったのは,やはり死と向き合わざるを得ない特攻学生の日記という重い内容であったからである.戦争の虚しさ,不条理を知りつつも死と向き合うことから目をそらさない吉野次郎の姿から,いろいろなことを考えてしまう.吉野の生き方や死を現代の日本の基準,価値観からだけで判定してはいけないのではないか.

  • 特攻隊となり散華する海軍予備仕官の青年の心情を、日記形式で綴る小説。万葉集を愛する純粋な大学生達だったのに、学業を中断して学徒出陣により召集され、日々の厳しい訓練に明け暮れ、飛行機乗りに仕立て上げられた頃には皆の気持ちも様々な方向へ。
    誰もが懊悩する極限の状況で、若者達が死の恐怖や生への執着に立ち向かう…もし自分ならばどう振る舞えるのか、ふと考えてしまいます。
    夢や希望を諦め、国の為に命を捨てるという事実を考え、組み立て、どうにか折り合いをつけようとしたり煩悶したり、受け入れたり。すさまじい心象風景が淡々と描かれています。

  • 生まれた時代に選ばれる人生なんて。戦争は絶対にいけません。

  • 戦争小説と言うよりは、海軍予備学生の日常の生活記録、日記。
    淡々と日々の思いと心の変化が描かれている。

  • 自然の描写と戦争の描写が対比されていて、息苦しいまでにリアル。

  • 2016.10.28
    自分は何て平和な時代に生きているのだろう。

    青年が、生と死の間で葛藤する姿。
    死ぬために訓練をする。自分の感情にふたをして生きなければならなかった。

    雲こそわが墓標。

  • 目的化した死が、あらゆる不安をはらいのける
    サルトルは、自由が人間を縛りつけるのだと言った
    だが徒競走ならば、自由もへったくれもない
    きれいさっぱり清められた一本道を、おのが死めがけて突っ走る
    そのように自らを律して特攻の日を迎えようとする若者たちの手記
    というテイで書かれた小説
    その、スマートとすら呼べるすがすがしさは
    ひょっとしたら同調圧力に負けたおのれをごまかす
    自己欺瞞でしかないのかもしれない
    いや、しかし実のところそれは、要領よく生き延びたとして
    おのれに恥じないでいられるような人間でありたくはない、がゆえに
    自らの意志でつかみとった気高さ、潔癖さであると
    ・・・生き延びてしまった者が
    そのように納得してしまうことこそ欺瞞であろう

  • 最近読んだのに記録がない。フォルダーの整理をかねて探してみたら、見つかった。
    昨年一昨年は疲れてメモする気力がなかったので、読みっぱなしの本が多い。記録しようとは思って書き始めても、書き終わってないものが10冊近くあった。これは途中まででも別のホルダーに入れておけばかすかに記憶は残るだろう。
    半分は未完もひどい状態なので削除した。再読して書くことがあるかどうか。
    最近読んだ気がしていたのに、日付が昨年や一昨年になっている、日が過ぎるのは早い、まさに矢の如し。

    「雲の墓標は昨年読んだ。紛れて無くなる前に載せておこう。




    昭和31年4月 新潮社発行 
    平成12年2月 69刷 新潮文庫



    「永遠の0」を読んだので思い出して読んでみた。

    若い頃に読んだときは、感傷的な読み方で、主人公の吉野が次第に死を肯定して特攻機に乗る、友人の藤倉は批判的でありながら、事故死をする。学府から離れた若い死に胸が詰まった記憶がある。

    戦後も遠くなったといわれ、自由を謳歌できる世代が育っている今、読んでみるとまた違った感慨がある。

    戦争の経過や、戦況は「永遠の0」でも少しは理解できるが、海軍予備学生は、兵学校卒には軽く見られ、命を兵器にする。

    学生生活(学問)に心を残しながら、次第に感化されていく様子が痛ましい。

    渦中にあればこのように、自ら命を捨てることを次第に肯定するようになるのだろう、一種のマインドコントロール状態で、敵機に向かって突っ込んで、命を捨て未来を絶つことも厭わなくなるのだろう。

    こういった気持ちは、平和になった今やっと気づくものなのだろう。

    人権・自由が保障されている今、放縦ともいえる生き方さえ許されている。
    たまにこういう本を読むことで、改めて自分を考える時間を持つことになった。

    薄い文庫だが、読むことで記憶も薄れ掛けた、戦争があった事実を振り返ってみる。
    楽しみのための読書にも、こんな短い時間があってもいいと思った。

  • 少々堅苦しい文章なので、読むのに疲れて何度も何度も挫折しましたが、今回やっと読み終えることが出来ました。

    ただの大学生だった吉野くんが、段々と考えが変わってきて、「潔く死んでもいい」みたいになるのが怖かった。
    海軍生活をずっと続けていると、そんな考え方になっちゃうの?

    今の時代としては、吉野くんの友達の藤倉くんの考え方の方がよっぽど共感できます。

    考え方が徐々に変わってはくるんだけど、時々すごく心に響くことをいう吉野くん。
    残念です。

    そして、私が、この本へ何度目かの挑戦をしているとき、作者の阿川さんがお亡くなりに。
    ご冥福をお祈りします。

  • (2016.03.15読了)(2016.03.12借入)(1979.06.10・35刷)
    昨年8月に死去されたということで、追悼のために読みました。何冊か積読しているのですが、公民館にすぐ読めそうなのがあったので、借りてきました。

    阿川弘之 略歴
    1920年12月24日、広島市生まれ
    1942年9月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業
    兵科予備学生として海軍に入隊
    海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた
    1946年復員
    1952年、『春の城』(読売文学賞)
    1960年、「なかよし特急」産経児童出版文化賞
    1966年、『山本五十六』(新潮社文学賞)、
    1978年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞
    1987年、『井上成美』(日本文学大賞)、
    1993年、文化功労者に顕彰
    1994年、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、
    1999年、文化勲章受章。
    2001年、『食味風々録』(読売文学賞)
    2007年、菊池寛賞
    2015年8月3日、老衰のため死去、94歳

    この本は、海軍予備学生の吉野次郎を主人公にして、昭和18年12月から昭和20年7月までの生活を日記としてつづらせたものです。昭和18年11月に京都大学を繰り上げ卒業した吉野が、飛行訓練を受けながら、特攻として出撃するまでが描かれています。
    本人が書けないので、どのような最期だったかは書かれていません。
    昭和20年には、訓練する飛行機も燃料も不足して、飛行機に乗れない日々が続いたりしています。ベテランの飛行士たちが、どんどん戦死して行き、飛行訓練もままならない新米飛行機乗りに一体何ができるだろうと思われるのですが、それが負け戦というものなのでしょう。戦争の現実を知るには、いい本だと思います。

    【目次】
    雲の墓標
    解説  安岡章太郎

    ●死ね(23頁)
    われわれはここでは、何か事あるごとに、死ね死ねと教えられている。いったい、戦争をやりとげることが目的なのか、自分たちを殺すことが目的なのか。ただ死んで祖国がすくえるものなら、われわれは何としてでも死んでみせるであろう。
    ●お題目(53頁)
    教育主任や各分隊長や飛行機乗りの教官から、そして御存じのような調子の日々の新聞や、都合よくえらばれた書物の活字から、繰り返し繰り返し吹きこまれることは、聖戦の完遂、栄えある若人の責務、帝国海軍の輝かしき伝統、八紘一宇の理想という風なことがらばかりです。
    こういう題目を繰りかえし説かれているうちに、はじめは批判的であり疑わしげであったものが、次第に多少の意味がなくはないとかんずるようになり、相当もっともだとおもうようになり、まったくそうでなくてはならぬ、いままで足りなかったのは自分たちの自覚であったと信ずるようになる、そういう傾向があるのではありませんでしょうか。
    ●日本の再建(101頁)
    不思議な時代ではないか。政治家も軍人も学者も詩人も、芋を食って笑って死ぬることは、くりかえしくりかえしうたうけれども、生きのこって日本を再建する方途は、誰からも聞くことができない。
    ●生き方(130頁)
    健全な食欲と健全な性欲とをそなえた健康な肉体、それで豊富な精神活動をして、次の時代へよき子孫となにがしかの精神的な遺産をのこす、これが人間として一番のぞましい生き方だと思う。

    ☆関連図書(既読)
    「特攻基地知覧」高木俊朗著、角川文庫、1973.07.30
    「今日われ生きてあり」神坂次郎著、新潮文庫、1993.07.25
    「特攻隊員の命の声が聞こえる」神坂次郎著、PHP文庫、2001.08.15
    「指揮官たちの特攻」城山三郎著、新潮社、2001.08.05
    「昭和の遺書① 父へ、母へ、最後の手紙」辺見じゅん編、角川文庫、199... 続きを読む

  • 高校の恩師から卒業の際に渡された『読書リスト』。
    まだ半分も読めていないという体たらくですが、なんとか卒業までにあと数冊読みたい。
    今回読み終わったのは阿川弘之の『雲の墓標』
    学業を中断し、戦争へと巻き込まれていく学生の心情が
    生活記録風に淡々と書かれている。
    作者自身も東大の国文科の学生だったが、繰上げ卒業し、
    海軍予備学生として海軍に入隊したそうで、
    その経験を基に書かれているからか、とても現実味がある。
    軍への入隊、そして戦況や軍での理不尽に対して憤りなどを時々あらわにしながらも、
    国のために死ぬことにはむしろ肯定的な主人公・吉野であるが、
    「しかし、自分たちにはもはや、なにものかを選ぶということはできない。定められた運命の下に、自分を鍛えることだけが、われわれに残された道だ」とあるように、
    どこか諦めたような部分も垣間見得る。
    そのような感情のふらつきが、精神的に訓練され自ら志願した兵士とは違う、
    学生らしさ、ひいては親近感を与えるのかもしれない。

    また、国文学科であった吉野は、最初、入隊した直後の頃は
    万葉集に想いを馳せる描写も多く見られるが、
    時間が進み、戦況が悪化していくにつれてその描写もなくなっていく。
    段々と、彼の心が戦争に取り憑かれ、疲れやつれ果てていくのが
    ありありと分かる。

    ありきたりな感想になるが、
    戦争が人の心をどのようにして疲労させていくのかを
    改めて目の前に突きつけられた。
    ただ平和を叫ぶ作品ではなく、
    淡々と冷静な口調で語られていくからこそ、
    心に深く残るものがあった。

  • 戦争に肯定的な軍人は、戦時中でも案外少なかったのではないかと思う。日本人特有の空気に支配されていたのだ。

    戦時中にこれほど、自分に素直に書いた日記が実際にあったのだろうか?

  • 文学青年が軍隊で仲間と、時にはイキイキ過ごしているようにさえ読める日記だが、自分がいなくなった後の日本の将来を考えたり、友人のむごい死に様を目の当たりにしたり、明日特攻に飛び立てと言われた後、落ち込んだり、笑顔に戻ってまた冗談を言ったり、こんなのが現実だった彼らの青春。

  • 素晴らしい作品。召集された大学生が、軍隊生活を日記に「遺した」という形式が、読者に特攻隊員の心情をリアルに感じさせる事に成功している。規律の厳格な軍隊に馴染み、いつしか戦死の覚悟と向き合うようになっていく学生、あるいはそんな周りと一線を画すように軍や国のあり方に反発する学生、我々は彼らの独白を覗き込むようにして、末期の海軍、敗戦寸前の日本、そして死を目前に控えた20代の若者達の有り様を追体験する。著者が海軍出身だけに、当時の実情や描写も説得力があるが、それでいて過剰な演出などはなく、淡々と事態が推移し、結末に至る。必読の名作と思う。

  • 国会が騒がしい今、なぜか読んでみたかった!

  • 読み終えたあと虚脱感を感じた。特攻隊として散っていった主人公の思いについて、日記形式に書かれている。主人公の気持ちを考えるも、なんと言うか、リアリティが感じられない。いや、これは想像力が無いだけなんだろうけど。同時代人はどう思うのだろうか。身につまされる思いがするのだろうか。
    近頃の子供たちは、小さな科学者、小さな国家主義者として、こまちゃくれた育て方をされているものが多いようである。大人が子供の世界を造ってやることは、やめなければいけない。…自分たちは死んでも、子供たちの上には、ひろびろとした豊かな祝福された次の時代が来なければならぬ。

  • 太平洋戦争で海軍の予備学生となった京大生仲間の運命を、主人公・中野の日記を中心に語っていく。最初は戦争や軍隊の規律(という名の体罰・リンチ)に反発するものの、日々の軍隊生活の忙しさや不毛な作業の連続から、少しずつ諦めの気持ちになる様子が日記を通してよく伝わる。しかし、戦争への疑問、学問への未練、好きな人への思いとともに、戦争で華々しく散らんとする勇ましい言葉も出され、不安定に揺れ動く。ずっと戦争や軍の在り方に反発していた友人が、一番最初に、飛行訓練中に亡くなる。救助に行った中野がみた友人の様子がとてもリアルに描かれていて、おぞましさすら感じさせる。中野はもっと辛い気持ちで見ただろう。昨夜まで一緒にいて語り合っていた友なのだから。中野は特攻で飛び立つがその消息は不明という形で終わる。終戦10年でこのような話が描かれていたことに驚きを感じながら、そんな時だからこそ、当時の思いを忘れないためにもリアルに描かれたのではないかと感じた。

  • 本作品は国文学者吉井巖氏の戦時中の日記をもとに書かれたという。どの程度、実際のそれを反映しているのだろう。吉井氏の初期の論文には「雲」に関するものが多い。本作品に見られるような「雲」の印象が実際にあって、このテーマに取り組むきっかけとなったのだろうか。「はじめて空から南九州の海山をながめて、巻三の長田王、「隼人の薩摩の迫門を雲居なす遠くもわれは今日見つるかも」という感慨をおぼえた」(旧版p.64)といった言葉は、実際の日記にもあるのだろうか。論文は自己の経験を語らない。だからこの小説に想像を掻き立てられる。

  • この本は学生だった主人公が軍隊に入り、軍隊での日々を日記に綴っていく形式で物語が進んでいきます。

    入隊したての頃は、今起きている戦争に対して批判的な考えを持っている主人公なのですが
    軍隊慣れして徐々に変わってくる精神がなんとも生々しいです。

    親しい友人が特攻隊として死んでいくのを目の前に、そして自分に番が回ってきた時、
    彼は何を思ったのでしょうか。

    日常に戦争が入り込んでくるなんて、何だか私には想像もつきません。

    この先の日本には、こんな惨たらしい戦争なんかが、無くなります様に。
    安心して笑っていられる未来があります様に。

  • 時間が経つにつれ、変化していく心情。
    生きたい、生き残りたい、そして「死んでやるのだ」という心の動きの狭間で、どちらにしても痛みが残る悲しさ。

    読み進めて、藤倉のくだりで鳥肌が立った。嘘だ、と言いたかった。彼の苦悩は現代の、戦後教育を受けた私たちにも分かるはずだ。

    最後の方は喪失感が途方もなく大きくて、言葉にならない。どうやって生きていくのか、私には分からない。

  • 太平洋戦争末期の海軍に徴兵された予備学生の生活がリアルに描かれる。戦争反対をしなかったことを批判するに能わず。どうしようもなかった、敗戦がみえてたのに誰もが決し得なかった。こういった小説で、教訓を後世に残すべし。13.7.12

  • 平和な時代の僕達から見れば悲惨な話だが、当の本人は淡々とそれを受け入れている。
    以前読んだレマルクの西武戦線異常なしを思い出した。

  • 京大から学徒で海軍予備学生となった、吉野次郎の青春。吉野は、京大で万葉集の研究をしていたこともあり、日記調の小説の中には軍隊生活と対比するかのように、花の名が多く出てくることに注目。帰るあてのない出撃を目前に、主人公はツツジと芍薬で投げ入れをしている。

  • 淡々としていますが、変に脚色していない分すんなり入ってきました。
    時折、ほのぼのした場面になったり、クスリと笑わせてくれる場面もあるので
    それがまた終盤で切なさを増幅させます。

    中高生に読んでもらい!と思う作品ですが
    専門的な用語に解説がありませんので(日記形式なので仕方がないのですが)
    いくらか戦争の知識がないと難しいのかなと感じました。

  • 文庫本の解説で安岡章太郎氏が「おそらく大半の人が、この小説を泣かずに読みとおすことは出来ないだろう。」と書いているのだが、私はまったく涙は出なかった。といってこの作品に不満かといえばそうではない。死に赴くなかでの主人公たちの心の葛藤や友情、両親や師への思慕など共感できる場面は多々あった。だが、そこを一歩離れて、彼らの直面している戦争の愚かしさを少なからず知ってしまった(想像の閾を出ないが)後では、ぼんやりとした憤りしか感じなかった。私が泣くのは、得体の知れない感動(美や偉大さが存する)によるときである。

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