山本五十六(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101110042

感想・レビュー・書評

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  • 真珠湾奇襲前の宣戦布告が外務省の手落ちで事後となってしまった点は、戦争の大義を巡る世論戦争上、如何にも勿体無い。

    山本五十六の、好戦的な幹部へ自重を求める文章(敵国の首都を制圧する計画が立てれないような戦争はすべきではない、それだけの覚悟もなく軽々と威勢の良いことを言うな、との主旨)の一部が切り取られて公表され、『山本はワシントン制圧を目指す超好戦的な軍人だ』という誤った人物像がアメリカ側で持たれてしまったことも、広報部の思慮が足りず、結果論かもしれないが、これまた如何にも勿体無い。

    戦後処理を山本五十六に期待する声もあったようだが(石橋湛山)、軍政面は、米内光政がいたからまだよかったのかなと思う。軍令面では、後を継げるひとはいなかってようだし、仮に山本五十六本人がブーゲンビルで撃墜されずに生き残っていたとしても、日本の敗戦は開戦時に確定していたのだと思う。

  • #2872ー167

  • 太平洋戦争開始時に連合艦隊長官だった山本五十六.多摩霊園のメインストリートに大きなお墓がある.
    この本は歴史の叙述より人物に焦点をあてたエピソード集という感じ.初版は昭和39年で本人を知る人も多く生きていて,そういう生のエピソードにも事欠かない.それにしても戦時の日本軍の情報管理の甘さというのは目を覆いたくなるばかりにおそまつ.
    私たちの世代は山本五十六の名前くらいはみんな知っていたと思うが,若い世代は教科書ですら出会うことはないのではないか.敗戦国は軍人には冷たい.そしてこの本も絶版中のようだ.

  • やっぱり知ってたんじゃないかって思う。

  • だんだん負けて行き、最後の海軍甲事件に至る。
    山本五十六でも至らないところが多々あり、それでもなんとか頑張っている姿がなんとも言えない。若い頃に読んだときはそうは思わなかったが、今はそう思う。

  • 上下巻とも、非常に客観的な内容で山本元帥を描き上げた良い著書である。

    戦死の原因、アメリカは暗号を解読してたのか、戦死後の各人の動きにかなりの紙面を割いているが、恐らく当時は関心が高かったのだろう。

    勝てる見込みのない中、真珠湾攻撃という奇策を用い戦果を上げ、東南アジア側でも連戦連勝、山本元帥は神の如き人間となる。

    しかし、ミッドウェイで大敗北を喫したのち、アメリカの圧倒的な国力、戦力の前に敗北を積み重ね、とうとう最前線で指揮をとっていた山本元帥は戦死する。

    国葬の後、姉が遺骨を引き取り、山本が信頼した、米内、井上の神格化はするな、という言葉で幕を閉じる。

    そして、山本元帥無しでは戦争を終結させられないと考えていた軍人、知識人は激しく落胆したという。

    ミッドウェイの時点で、連戦連勝の驕りもあり、アメリカが一部暗号を解読して情報戦で圧倒的有利だったこともあり、山本元帥をしても大きな流れを変えられなかったのだろう。

    しかし、もし山本元帥が戦死してなかったら、戦争の終結地点は変わったかもしれない。

    戦争には勝てないと分かっており、圧倒的な国民支持を持っているからこそ、和睦の道筋が立てられる人材だった。

    優秀な指揮官ではなかったかもしれないが、日本の中で最も大局観を持った人間であり、アメリカにも畏怖される存在であったのは間違いない。

    最後に私が座右の銘にしている山本元帥の言葉を引用して終わりとする。

    「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」

  • 山本戦死後の記載が半藤のものと比べ、充実していた。開戦の日の述志より、
    名を惜しみ、己を潔くせむ私心ありてはこの大任は成し遂げ得まじ。
    リーダーたるもの、自分の名を惜しむ気持ちがちょっとでも出たらいけない、批判はいつでも結果論である。草鹿の言葉でつないでいる。

    全体を通じ、著者の客観的であろうというスタンスが伝わってくる内容だった。引用書簡なども多い。ただ、家族から名誉毀損の訴訟を抱えるなど、事実をありのままに記載しようとすることによる弊害も生じ得るのは、近現代の人物の伝記作品ならではの宿命であろうか。

  • 下巻は真珠湾からの話。
    少々、戦争史っぽくなる。もっと五十六を出してもよかったか。

    とは言うものの、訴訟問題になるほどの作品。
    読む価値あり。

  • 城山三郎の「落日燃ゆ」っぽいのを期待したのですが、ちょっと違いました。
    山本五十六がどういう人間だったか、取り巻きはどんな人間だったかの記述が多く、戦争に関しては意外とボリュームが少ないです。
    山本五十六に関しては他にも多くの本があるから、むしろこのような、人間、山本五十六を知るには貴重な本かもしれません。


  • 誰よりも英米との戦争に反対しながら、自らその火蓋を切らざるを得なかった提督の一生の話。
    航空機の登場によるゲームチェンジ(大艦巨砲主義の終焉)、軍縮条約は日本にも利があること(彼我の国力・工業力の圧倒的な差から、無制限建艦競争に陥れば日本に勝ち目はないこと)を説き優れた大局観を持ちながらも、個々の作戦の企画・遂行の局面では山師的な危うさを感じさせる。

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著者プロフィール

阿川弘之
一九二〇年(大正九)広島市に生まれる。四二年(昭和一七)九月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業。兵科予備学生として海軍に入隊し、海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた。四六年復員。小説家、評論家。主な作品に『春の城』(読売文学賞)、『雲の墓標』、『山本五十六』(新潮社文学賞)、『米内光政』、『井上成美』(日本文学大賞)、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、『食味風々録』(読売文学賞)、『南蛮阿房列車』など。九五年(平成七)『高松宮日記』(全八巻)の編纂校訂に携わる。七八年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞。九三年、文化功労者に顕彰される。九九年、文化勲章受章。二〇〇七年、菊池寛賞受賞。日本芸術院会員。二〇一五年(平成二七)没。

「2023年 『海軍こぼれ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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