居酒屋兆治 (新潮文庫 や 7-15)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101111155

感想・レビュー・書評

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  • 居酒屋兆治
    2016.02発行。字の大きさは…大活字。

    赤提灯のもつ焼き屋に来る客と店主のやり取りを、人情味たっぷりに書いています。

    駅近くの居酒屋兆治を営む藤野伝吉は、地元の小学校で野球選手をしていました。勤めた会社で急遽、人事課長になったが、その仕事は、リストラの首切り役であり。伝吉は、できず退職し、その後、10日間モツ焼き屋で修業して、赤提灯のモツ焼き屋を始めました。

    客は、地元の小学校の先輩、後輩が半分ほどをしめ、1日の売り上げが2万円を超えると、残った物をサービスで出し、自身も飲みだすような、あまり儲けようとしない店です。そこに来る客がおりなす物語が面白いです。

    特に、伝吉の昔の女さよが、嫁ぎ先の神谷鉄工の若い社員と家出して、伝吉にすり寄ってくる様は、本当になんとも言えないものがあります。神谷は、さよを連れ戻すために警察に依頼して、伝吉を別件で逮捕して、留置所に入れ、伝吉が黙秘すると、このままでは正月は留置場の中で過ごすことになると、又、春まで居てもらうことになると脅迫するシーンは、嫌な物が有ります。

    結局さよは、伝吉の近くの勤め先のキャバレーで、ウイスキーをストレートで飲み続けて食道静脈溜破裂で亡くなりました。まさに死に急いだような生活を送っていました。そして、最後まで伝吉を気にかけて近くにいたのです。葬儀で兆治の客が……まさに、人生の愛憎劇です。

    【読後】
    感想を書いて、登録して、少しして、さよを考えると伝吉に対する純な気持ちが一途に貫かれていたのかなと思えてきます。そうすると、この物語は青春小説なのかと思えてきますが。さて物語は、ドロドロして、喧嘩有り、女あり(男もありますよ)と人生の縮図のような赤提灯で、店主と客がおりなす愛憎劇です。山口瞳さんの本を読むのは初めてです。

    【音読】
    3月27日から4月5日まで音読で読みました。底本が、新潮文庫のため登録は、新潮文庫「居酒屋兆治」で行います。

    【連載、映画、テレビ】
    この物語は、著者が「波」編集部から連載小説を依頼され、題材を家の近くの東京・国立の広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋を舞台に、赤提灯の店に毎晩飲みに来る客のさまざまな愛憎劇を記録して日記風の小説に書いたものです。1979年10月号から1980年11月号まで全14話の連載です。
    1983年に降旗康男監督、高倉健主演により映画化。
    また1992年に渡辺謙主演により、2020年に遠藤憲一主演によりテレビドラマ化。
    2021.04.05読了

  • こんな赤提灯の居酒屋が近所にあったら、行きつけにしたくなったかもなぁ。
    山口瞳さんが地元にゆかりのある方と知り、この作品自体もとても身近な場所が舞台でした。モデルの居酒屋はもうないのかしら。

    映画化された主役はイメージぴったりの高倉健さん。舞台は函館みたいだけど、今度観てみようかな。




  • 居酒屋の主人、兆治とお店・兆治自身に関係する人や出来事を描いた連作短編小説。14の短編から構成されている。
    本作は高倉健主演で映画化されている。高倉健のイメージは、兆治にピッタリ来る。不器用で、自分なりの物事の良し悪しの判断基準があり、それに忠実。
    物語は日常のあれこれに加えて、昔、兆治が付き合っていた、さよ、という女性が絡んで進んでいく。

    山口瞳の本を読むのは久しぶり。
    山口瞳は好きな作家の一人で、一時期は、かなり集中的に読んでいた。ブグログへの登録数を確認してみたら、15を超えていた。
    私の山口瞳に対するイメージは、本作の主人公である兆治に対するイメージと重なる。不器用、正義感が強く、でも融通のきかない部分もある。いわゆる、頑固親父というイメージ。
    小説も好きだが、エッセイ(随筆と言った方がピンと来る)が面白い。昭和の頑固親父の面目躍如といった感じだ。

  • 山口瞳さんの作品、ブクログ登録は2冊目。

    著者、山口瞳さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    山口 瞳(やまぐち ひとみ、本名同じ、1926年(大正15年)1月19日(戸籍上は11月3日) - 1995年(平成7年)8月30日)は、日本の男性作家、エッセイスト。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋を舞台に、集う客たちの様々な人間模様を鮮やかに描く。

    ---引用終了

    店名のモデルは、元プロ野球選手の村田兆治さん。
    その村田兆治さんは、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    村田 兆治(むらた ちょうじ、1949年11月27日 - 2022年11月11日)は、日本のプロ野球選手(投手)・コーチ、解説者・評論家。広島県豊田郡本郷町(現:三原市)出身。

    ---引用終了

    村田兆治さんの選手時代は、1968~1990年になります。
    活躍時期としては、1976~1981年の6年間で奪三振王を4回獲得されています。
    ちょうど、本作が書かれた時期になりますね。

  • 文中に登場する方代の歌目当てに購入。
    (映画には方代のとのおかしな逸話もあるのだが、それは評伝「無用の人山崎方代」を参照のこと)

    映画版よりも原作の方が数段も上。小説にはある人間の機微というものが映画では描けていない様に感じた。
    ただ、小説を読んでいて役者たちの顔がちらほらと目に浮かぶのには参った(笑)

    人の一生の禍福なんて、塞翁が馬に過ぎない…。それでもひたすらに生きていくしかないってのは、よくわかる、この歳になると(笑)。

    処分日2014/09/20

    [more]

    蛇足。この方代の歌はどうなのだろう?
    方代らしい歌ではあるが、(他の歌に比べて)ぴたりと言葉が収まっていないようにも感じる。方代が好きな人はどう思うのかな。

  • 山口瞳さんは、くにたちに住まわれていました。三十年以上前、南武線の線路際の小さな呑み屋を探しに行ったことを思い出します。その日も、店は奥さんが切り盛りされ、ご主人は店の外側で、黙々と焼鳥の仕込みをされていました。三、四人入れば、いっばいの小さな呑み屋さんでした。

  • 山口さんの書いてらしたエッセイの中にこの本を書く際モデルにしたお店、というのがでてきたのでどんなもんだろう?と読んでみました。兆治はケンさんか~ なるほど~

    初恋ってのはかくも忘れられないモノなのでしょうかね。
    幸せになってもらいたいが故に身を引いたのでしょうがそれは男性の勝手な思い込みでさよさんにしてみればいくら貧乏しても好きな人と一緒にいることこそが幸せだったでしょうね。
    個人的にさよさんのような人物はあまり好きではありませんが何となく男性は好きそう。影があってでも一途なオンナってのは(笑)
    そして茂子さんは可哀そうだなあ~と思いましたがそれは自分が女性だからでしょうね。

  • 小さな居酒屋とそこに集う人々の生き生きとしたやり取りが
    小話形式で描かれます。作中の居酒屋にはモデル
    (※残念ながら今年閉店してしまったらしい)があるという
    事前知識はあったほうが良いのか悪いのか。

  • こんな居酒屋で一杯やりたい、と思わずにはいられなくなる。人情味の厚い、居酒屋物語。

  • 最近、自分が読みたいのはこういう小説なんだと思いました。
    しみじみといい。ちょっと枯れすぎかな、自分。

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著者プロフィール

1926年東京生まれ。小説家、随筆家。『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞受賞。おもな著作に31年間連載したコラムをまとめた「男性自身」シリーズ、『血族』『居酒屋兆治』など。1995年没。

「2014年 『ぐつぐつ、お鍋 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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