聖少女 (新潮文庫)

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著者 : 倉橋由美子
  • 新潮社 (1981年9月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113098

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聖少女 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 中学生のころ、倉橋由美子の描く残酷で美しい世界に傾倒していた。
    解説の桜庭一樹氏と全く同じく、森茉莉「甘い蜜の部屋」尾崎翠の「第七官界彷徨」も高校生で
    読んでいたから、なんともわかりやすく「少女小説」に魅せられていたのだろう。

    今読んでもこの文章の完成度の高さは独特だと思う。退廃的でどこか谷崎っぽいかな?
    「近親相姦」それも父と娘の、このタブーを軽薄に未紀という天性の嘘つきな少女の告白と、食えない「(自称)未紀の婚約者」Kの視点から描いたこの作品。
    登場人物の誰のことも好きになれないけど、「聖性」と「悪」をここまで美しく描けるのは並大抵ではないなぁ。

    「サロメ」のようにビアズレーの挿画で出してほしい。

  • 「悪徳の限りを尽くす」という表現がある。
    しかし、悪徳が尽きてしまった後のこころには何が残るのか。

    過去に人生の負の側面といえるものを謳歌した「ぼく」は、記憶を失った未紀の存在に吸い寄せられていく。「ぼく」は、過去に「ぼく」と同じ蜜を味わった未紀の残したノートの真相に近づこうとするが……というのがあらすじ。

    この小説では美しい比喩を用いて、美学を持って悪事をする人間が丁寧に描かれている。
    今でいうところの「厨二病」タイプの人物が数多く登場するが、簡単に型に入れることができるようなものでもなく、「昭和の厨二病すげぇな」と思ってしまった。
    とりわけ未紀が魅力的で、彼女の言動の裏を読みながら小説を読み進めるとより楽しめるだろう。

  • 正直タイトルと父娘近親相姦というテーマの組み合わせのベタさに拒否反応があったんですが、いざ読んでみたら全然一筋縄じゃいかない感じで、すっごい面白かった。昭和40年の作品ですが、ヒロインの趣味は現代ならさしずめゴスロリとか呼ばれそうですけども(笑)。安保とかそういう背景がなければ、時代を全く感じさせない前衛っぷり。文章の美しさも尋常じゃなく、あー天才ってこういう人のことを言うんだって、恍惚とします。

  • 時代と、独特な瑞々しさ。

  • 倉橋由美子の1965年発表の小説。"暗い旅"、"夢の浮橋"に続いて3作目。本作品は、近親相姦を扱った内容もそうですが、文章、そして文体も含めて雰囲気が独特すぎて、これは合う人と合わない人がはっきり出てくると思います。学生運動の頃の風俗が色濃く反映されているので、どうしても気持ちが追いついていかない部分も多々ありますが、自分は嫌いじゃないです。甘くて美味しい毒薬を飲まされている感じです。自分の立場が変わる毎に読み直したら、その都度、感想が変わりそう。

  • 倉橋由美子らしい小説だ。この小説を読んでいると、自分が称している「愛」などという言葉が陳腐で、いかにも小市民的な価値しか持っていないかを思い知らされる。主人公の未紀は、まさしく「ぼく」にとってのFemme fataleそのものだろう。どこまで行っても捕まえることはできない。そもそも彼女は最初から愛の不毛の中に生きていたのだから。また、この小説の持つ強い時代性(70年安保以降の時代)も、こうした回顧の中ではある種の普遍性さえ帯びてくるようだ。

  • 思春期という、危険で、おかしな季節に、娘にとっての父ーうつくしい幻想の中のあのひと!ーは、生、性、死を同時に司り、父であると同時にじつは私自身でもある、生きた神となる。(桜庭一樹、解説)
    小説自体は内容云々よりも文章の組み立て方が興味深くて、桜庭さんの解説の方が私は惹きつけられた。この人のものの書き方が好き。

  • いわゆる『女流作家』の流れをこの国に作った、倉橋由美子の代表作。
    白猫のような美少女、未紀が落としていく、男たちとの関係、嘘、妄想、生と性と死の物語。

    未紀の魅力は流行りの言葉で言えば『小悪魔』!当時なら『毒婦』って言われてもおかしくないようなヒロインに『聖』の文字を使い、最初に美を見出した倉橋由美子のセンスはすごい。
    倉橋由美子がいなければ日本の小説のヒロインは、品行方正で良妻賢母で不器用でカタブツな『ブス』ばっかりだったのではないかと思います。

  • 作者曰く「最後の少女小説」。
    恐ろしく饒舌で軽薄で痛々しい。
    これも何度も読み返している一冊だが、
    自分が年を経ても感度が変わらないことが嬉しい。

  • 穂村弘さんが衝撃を受けたということで気になっていました。


    少し痛くて、愚かで、陶酔した 少年少女の物語。
    思春期ならではの潔癖さや勢いがすごくきれいに描かれていると思います。

    近親相姦、交通事故、記憶喪失、ゴシック趣味、などなど言い出したらきりがないですが、そういういわゆる"キーワード"みたいのはあまり意識させない、もっと奥にある少女の物語であると感じました。
    とても好き。

    12歳のときに読んでいたら人生が変わっていたかもしれない。

    ちなみに朝のむウイスキー少したらすやつ、飲んでみたい。

  • 異色作、タブーを扱っています。
    そのタブーは一番強烈な「近親相姦」
    だけれども病んでいる雰囲気のみで
    その該当行為に関してはぼかされているので
    きつくは感じず、あまり嫌悪感は感じませんでした。

    ただし問題はKの視点
    こいつは食えない奴です。
    この視点だけは吐き気を催しそうになりました。
    消えてしまえばいいのにと何度思ったことやら!!

    だけれども、純粋な少女が壊れていく
    その描写は見事としか言いようがありません。
    彼女はまさにタイトルのとおりなのかもしれません。

  • 桜庭一樹の帯が気になって購入。

  • 姉と近親相姦の関係を結んだ「ぼく」と、「パパ」と愛し合う未紀。出逢いから6年後、未紀は交通事故で記憶喪失になり、「ぼく」に以前書いていたノートを渡し、解読して欲しいと頼む。「ぼく」の視点から物語は進む。未紀は学生鞄に『O嬢の物語』や『美徳の不幸』を入れ、所謂ゴシック趣味な部屋に住み、ランプの下でサド侯爵の本を読み、ゴシックな装飾を施した「モンク」という店を持っている素敵な少女なのだが、脇毛が生えているのは許せない。剃るか抜くかしてくれていたなら、完璧なのだが…。
    さて、未紀の以前書いたノート、退院後に書かれた未紀のもう1冊のノート、そして、この『聖少女』も「ぼく」が記した小説という仕掛けになっていて、果たして未紀の行動の真実は何処にあるのか?未紀も「ぼく」も、その他の登場人物達も果たして本当に存在したのか?穿った読み方しすぎかなぁ?読み終わった時に何故かアラン・ロブ=グリエの小説を思い浮かべた。

  • 何度目かの再読。
    ふとした拍子に読み返したくなる。端正な散文で書かれた官能的な物語。近親相姦というタブーを扱ってはいるが、現実の生々しさは無く、陰惨さも無く、いっそ幻想的ですらある。

  • 「父親」や「姉」との近親相姦を通して「愛」を描いた小説。
    小説の中に虚実入り混じる日記が含まれる多重の構造となっており、戸惑った。
    私は愛とは欲望であり、有無ではなく濃淡であると思っている。形はあってないようなのもだとも。だから受け取り方や表現方法によって、小説の人物のようにこじらせることになるのだろうと。
    ところで、著者はこの小説で「不可能な愛である近親相姦を、選ばれた愛に聖化することをこころみた」そうだけれど、私には聖性を見出すことはできなかった。

  • 今月の猫町課題図書。正直、この独特な修辞には抵抗があり、課題図書でなければ途中で投げ出していたと思う。倉橋由美子は昔に『大人のための残酷童話』ほか数冊を読んだことがあるものの、当時は特にこれと言った印象はなく、こんなに変態文体だという記憶もなかった。

    近親相姦というテーマは素晴しい(ポルノは別にして、オイディプス王、サイダーハウス・ルール、奇子など古今東西に名作が多い)し、文体に目をつむればストーリーもそれなりに楽しめるが、こういう退廃的な青春群像は、昨今ちょっと流行らないかもしれない。

  • 異性の中に自分を穿孔させていく、という今まで触れたことのあまりない世界観でもあったためか、
    話の内容そのものがどうも頭に入ってこなかった。
    これは自分の非。
    小説としてすごい作品であることはわかったのに。
    未紀の魅力にはくらくらしてしまう。

    小説についての小説でもあることを念頭に置いてから読み直したら、ずいぶん理解も進むかも。

    この小説には未来がない。
    そういう意味で、真に退廃的でゴシックな小説。

    倉橋由美子は、『怪奇掌編』、ラジオドラマで『ポポイ』に触れていたくらいなのに、積読本がたくさんあったので、これを機会に読んで生きたい。

  • 事故で記憶を失った未紀の代わりに
    過去の未紀が、パパとの関係をつづったノートには
    濃密な近親相姦の事実が描かれていた。
    ノートを託されたKがLとの近親相姦の関係が
    明かされた後は、数少ない登場人物近親との
    肉体関係を持つことに辟易した。

    文章が好みではなかったのですごく読みにくかったので
    9割ぐらいで読破することが出来なかったのが残念でした。
    未紀が記した日記のコトバが美しいので
    また、再読したい。
    ゴシックロリータっぽい世界観。

  • 以前、「大人のための残酷童話」を読んで依頼の倉橋由美子さん。
    オススメだと聞いたので読んでみた。

    少女から女性へと変わりつつある未紀と父親との近親相姦関係を軸に、未紀の婚約者Kの関係、Kと姉Lの関係を描く。

    近親相姦かあ。
    読む前から既に苦手な思いを感じつつ読む。

    クールというかドライというか、少女らしく背伸びをしているというか、そういった未紀の姿に懐かしさを感じつつ、父親と関係という自分にはあり得ないことを想像してみて、やっぱり無理だわと笑ってしまったり。

    解説を書いた桜庭一樹さんの言うように、この作品を『少女小説』と呼ぶのかどうかはよくわからないけれど、女性へと向かう不安定さのある年頃の性を上手く描けているとは感じる。
    特に、未紀の日記という形の文章が良かった。こういう大人びたような文章を書きたいお年頃なのだ。母親を意味なく批判したりというところが、アンネ・フランクの日記にも通じる感じ。
    『少女小説』という分類分けをしたことがないので、これが一番とも何とも言えないが、優れた描写だとは言えると思う。

    未紀の日記で全て構成されているのかと思いきや、Kと姉の関係も始まり、未紀と父親だけでお腹一杯になりつつあるところへ、またしても狭い人間関係しか結べないひとの話かとゲンナリする。
    この狭い関係を持つ女性の婚約者も狭い関係を結ぶという二重に狭いところが良いのかもしれないが、どんだけ視野が狭いひとばっかり集まっているのだと滑稽にさえ感じてしまう。

    Kと友達の関係や当時の世相のようなものなどは、時代が流れた現代にこそ面白味を感じさせる。
    未紀の日記などが、これ以上だと鼻につくという絶妙な加減にしてあることなどと併せ、全体として面白いのに何となし良い一冊だったと締めくくれないのは、近親相姦というテーマのせいなのか何なのか自分でもわからない。

  • 桜庭一樹が言うような少女小説、というジャンルがあるのかないのかわからないが、これが少女小説である、と言われたら、確かにこれ以外にはないと思ってしまった。少女は女になる、そういう運命で生まれてくる。

  • 随分前に読んだけれど、最近になってなんとなく気掛かりになって、再読。

    難解と言われやすい表現や、心理状態が様々な事象に分岐していく様、一見結びつかないようで繰り返されるキーワードや観念に関しては、当時の文学少女(少年)の読書傾向を推測すれば、容易にすべてが結びつく。

    近親相姦は、この小説において、テーマではなく、ツールにしか過ぎない。
    選ばれた愛は、肉体によって聖にも俗にも変換されるが、そのスイッチがどの方向に働くかは、その愛によって異なる。
    「完全に明晰な状態で自分の意思によって発狂してしまうこと」以外に道はないのだろうか。選ばれた愛は、狂気によって愛に選ばれた者が別の世界(観念の上では本当の世界)にいき、その手から離れない限り、俗性を帯びることは不可能なのだから。

    これだけ明晰に描かれた絶望の証明を目にしながら、どこかに道があるのではないかと心のどこかで思ってしまうわたしは、やはりオプティミストに属するのかもしれない。

  • これは血を流すことを定められ、そのように造られた躰から分泌されたひとつの形而上学だ。安保闘争から逃走し姉と関係を持つ主人公Kと、"パパ"と愛し合ったノートを残した美紀。男は思想で禁を犯し、女は肉体で倫理を侵犯する。それは愛を飾り立てる絢爛な装飾物であり、裏を返せば逆転した軽薄さの証でもある。倉橋由美子の本には性差という越えられぬ溝の深さに嘆息させられながらも、せめてその吐息をもってしてでも語りたいと思わさせられる耽美な魔力が込められている。言葉に溺れ、造り替えられ、ゆっくりと浸食されていく快楽。

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聖少女 (新潮文庫)の作品紹介

交通事故で記憶を喪った未紀が、事故前に綴っていたノート。そこには「パパ」を異性として恋した少女の、妖しく狂おしい陶酔が濃密に描かれていた。ノートを託された未紀の婚約者Kは、内容の真偽を確かめようとするが…。「パパ」と未紀、未紀とK、Kとその姉L。禁忌を孕んだ三つの関係の中で、「聖性」と「悪」という、愛の二つの貌が残酷なまでに浮かび上がる。美しく危険な物語。

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