- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101113098
感想・レビュー・書評
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9/4 読了。
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桜庭一樹が言うような少女小説、というジャンルがあるのかないのかわからないが、これが少女小説である、と言われたら、確かにこれ以外にはないと思ってしまった。少女は女になる、そういう運命で生まれてくる。
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2009/12/15
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随分前に読んだけれど、最近になってなんとなく気掛かりになって、再読。
難解と言われやすい表現や、心理状態が様々な事象に分岐していく様、一見結びつかないようで繰り返されるキーワードや観念に関しては、当時の文学少女(少年)の読書傾向を推測すれば、容易にすべてが結びつく。
近親相姦は、この小説において、テーマではなく、ツールにしか過ぎない。
選ばれた愛は、肉体によって聖にも俗にも変換されるが、そのスイッチがどの方向に働くかは、その愛によって異なる。
「完全に明晰な状態で自分の意思によって発狂してしまうこと」以外に道はないのだろうか。選ばれた愛は、狂気によって愛に選ばれた者が別の世界(観念の上では本当の世界)にいき、その手から離れない限り、俗性を帯びることは不可能なのだから。
これだけ明晰に描かれた絶望の証明を目にしながら、どこかに道があるのではないかと心のどこかで思ってしまうわたしは、やはりオプティミストに属するのかもしれない。 -
少女から女へ
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これは血を流すことを定められ、そのように造られた躰から分泌されたひとつの形而上学だ。安保闘争から逃走し姉と関係を持つ主人公Kと、"パパ"と愛し合ったノートを残した美紀。男は思想で禁を犯し、女は肉体で倫理を侵犯する。それは愛を飾り立てる絢爛な装飾物であり、裏を返せば逆転した軽薄さの証でもある。倉橋由美子の本には性差という越えられぬ溝の深さに嘆息させられながらも、せめてその吐息をもってしてでも語りたいと思わさせられる耽美な魔力が込められている。言葉に溺れ、造り替えられ、ゆっくりと浸食されていく快楽。
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みなさんのレビューをすこし流し読みしましたが、nonhoiさんのレビューに同感。
今ではないいつか、もう少し前に読んでいたら、もっと惹かれていただろうこの小説は、と感じさせられた。私は何を失ったのか、そしてそれはよかったのか悪かったのか、少なくとも生きやすさには有利に働いたようだが。そしてそれは、すべての少女のさだめであるものか。
そしてまた、今ではないいつか、もう少し後に、また違った感想を得るようになるのではないかという、予感。
しかしこれ1965年の作品なのか。51年前。その時代らしきタームはちりばめられているものの、あくまでガジェットでしかない感じが著明というか、時代的な倒錯感というか。まったく古びない凄み。 -
完璧な知性に裏打ちされた傑作少女小説。ゴスの精神、ロリータのイノセントさと背徳さ、エロスとタナトスと青春のグロテスクモザイク画。聖と俗が混じり合って作り出された漆黒の闇がホワイトホールと化す。50年前に書かれたこの小説を、何故10代のうちに読めなかったのだろう。作者が30歳の時に、もっともピークを迎えた時期であろう、成熟した視点と、まだ20代の若々しさの記憶がペンを滑らせたであろうこの感覚を作品として昇華した記念すべき作品じゃないでしょうか。ラストへ収束して行く推理小説さながらの謎解きターンは、些か冒頭から中編までの熱気に比べるとやや寂しいけれども。ああ、素晴らしい小説でした!
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これほど先が読みたくなる小説は滅多にない。