ポポイ (新潮文庫 く 4-14)

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  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113142

作品紹介・あらすじ

時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった…。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。

感想・レビュー・書評

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  • もともとサロメとか、ユディットとか、女子による首取り物語?が好きなこともあり、大変好みで興奮。ポポイ可愛い!しかも元テロリストで切腹後、介錯された首なんて最高!舞さんが羨ましい。
    三島の事件を想起するが、当然、小説内でもその事に触れている。
    三島の小説を「文章のヴィルトゥオーゾ」だと絶賛する舞さんの友人であり、桂子さんの孫娘の名は聡子。春の雪のヒロインの名と同じなのもくすぐられる。
    さて、こちらでの桂子さんは、桂子お祖母様と呼ばれ、元総理大臣の愛人という立場になっていた!

    舞さんがポポイのために飾る絵はクラナッハの「ユディット」!悪趣味だな〜。
    それから、二人?の接吻シーンにドキドキ。生きている生首って素晴らしい。だって、普通なら切り離されてしまった顔は目尻や口角がだら〜んと下がってしまうはず。
    サロメはそういうの気にならなかったのかな

  • お気に入り。俗世間を忘れられるので、時々読み返す。

  • ベースになっているのは別の短編集に収録されている「アポロンの首」。あちらは首っぽく見えても実際には植物でしたが、今回は本物の生首。三島よろしく切腹して介錯された美少年テロリストの首(近未来の医学で生かされている)を預かることになった政治家の孫娘がヒロイン(登場人物がつながっているので桂子さんシリーズでもあるけれど本筋とは関係ないのであまり気にせず)。

    生首を愛でる姫君のイメージはサロメか桜の森かという耽美さですが、最初は無反応に生かされているだけだった首が、だんだん意思表示できるようになっていくにつれて、逆にグロテスクな印象を受けるのが不思議。美少年の首も植物だったら満更でもないけど、さすがに本物の生首は欲しくないや(笑)。

  • 20世紀最後の宰相の孫娘、栗栖舞が生首を預かった。
    首はまだ生きていて大変な美少年である。
    彼女はその首に、悲嘆をあらわすギリシア語の感嘆詞「ポポイ」と名付けた。
    ひとときのおもちゃ代わりに時にペットを扱うように、時に女としてポポイと交流する。

    著者らしく全体的にノーブル感が漂い、生首のグロテスクさは感じさせない。
    『何事にもニュートラルで「非真面目」』な主人公は、静かな水の流れのようだ。
    しかし、その淡々さがポポイの戒名「タナトス」と絡みあって徐々に不気味さに襲われる。

    カバーがNO IMAGEなのが残念。

  • 桂子さんシリーズ。再読。
    入江晃さんがテロリストに会い、何かを話した。テロリストは自決し、入江さんは脳梗塞に。で、そのテロリストの首を婚約者から預かったのが、孫の来栖舞さん。首は装置につながれて生きている。首にポポイという名をつける。
    桂子さんは健在。聡子さんは明さんと結婚している。舞さんの恋人は従弟の翠くん。天才らしい。
    あいかわらずの倉橋ワールド。桂子さんシリーズもっと書いてほしかったなぁ・

  • 桂子さんシリーズ.
    多分,時代としては「シュンポシオン」の前,「交歓」のあと.

    桂子さんのパートナー元首相の入江さんの孫娘,舞と青年テロリストの生ける生首の交流を描く.乾いた書き方でおどろおどろしさはない.首のポポイくんは舌で操作するワープロで舞と話す.ここの部分,首はカタカナで,舞は通常のひらがなの文で会話が進む.単行本出版当時は旧仮名だったらしいから,ここは谷崎の「鍵」のような効果を狙ったのだろう.
    書かれた時点では近未来小説的なところもあったのだろうが,現代でもまったく違和感なく読めるし,十分楽しめる.

  • 【あらすじ】時は21世紀、なお権勢を誇る元元首の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。
    首だけで生きているテロリストの青年の首を預けられた舞が、生まれた時からハイソな暮らししかしてこなかった女子の自分の世界目線で周囲を見る、と言うのが裕福が故の大らかさで逆に偏見がある様でない、と言う、あくまでも自分の興味中心なとことか。高い教養とか当たり前に自分にあるモノで、それを鼻にかけてもいないが隠してもいないとこがいい。でもまあ、個人的には舞が男子であった方がもっと面白かったろうな、とは思う(笑)。ポポイの切腹を介錯してから自害した青年との関係がホモセクシャル的と噂されてる真相が出ると、実は…な気がしていたが、結局何故青年がテロ行為を行ったのかは明かされずに終わってしまったが、とても不思議な感触で読み終えた。
    ポポイが何故元首相宅へ乗り込み、声明を述べてから切腹・介錯されたのか…美形なのに印象の残らない大人しい少年時代を送った裕福じゃない家で育った少年が、何故テロリストまがいの行動を起こしたのか、全く謎は解明されないんだけど、解明されない、と言う下りも文中にあるが、関連作はないのか…昨日、色々ぐぐってて首だけの犬を…と言う実験映像(真相はやぶの中だが)見ただけに、テロ行為をして自害して、切って落ちた首に装置を繋いだら頭だけで生きてたからやってみた、ではやっぱやるせない。舞の下した判断は慈悲や人間の非道な行いに対する憤怒などではなく、ポポイが老化し始め美しくなくなっていくからだろうしなぁ。

  • 母から薦められて読む。
    おもしろかったです。美少年の首を飼うなんて幻想の極み。SFのにおいもさせつつあまりある幻想感が好きです。
    ちょっと前に読んだんですがいいなぁ、またもう一度読み直したい。

  • (1999.01.16読了)(1998.12.21購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった…。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。

  • 頭部だけの青年(?)と少女(大学生?)のお話。

    不思議とエロティックである。

    倉橋さんの作品にしては、短く読みやすい部類だと思う。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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