草の花 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101115016

感想・レビュー・書評

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  • 「泣きたい時には泣く、笑いたい時には笑う…」それができなかった彼は、二冊のノートを遺した。そこに託された言葉から紐解かれるのは、愛の重さに比例するように深まってゆく孤独。その心情が本人の口から語られないことで、より一層その深さが際立っているように感じた。

  • 廊下は凍りつく寒さで、スチームの管から白い蒸気がしゅっしゅっと洩れる音さえも侘しかった


  • 今から50年程前の高校生の頃読んだ作品だが 本当にこの時期に出会えて良かった。この現代で初めて読む人達には色メガネをかけずに読めるのだろうか? 自由が不自由の内の自由から 自由を飛び越え過ぎ 多様化で自由の名の不自由な現代で このプラトニックな愛情を 人に紹介はできないのか?一生大事にしたい作品である。

  • ・汐見が書いた手紙を「私」が読む、という構造が最初はまどろっこしく感じたが、第三者視点になることで、彼の孤独や心境については(本人ではないので)結局わからない、という絶妙な距離感を生み出す効果があるなと読後に感じた

    ・男の青春あるある、物事を頭でっかちに捉えてまくしたてる感じが、自分の若い頃(今もかも)を思い出して共感性羞恥…
    もうちょっと地に足を着けて、柔軟に、年上の余裕をもって千枝子に接することができていたら、と考えてしまわなくもない

    ・理想を夢見る汐見に藤木が苦痛を感じ、さらに千代子がそこに兄の聡明さも期待され、重みを感じてしまうのはもっともだと理解できる一方、自分も若い頃は(今もかも)他者に対して、汐見と同じようなふるまいを無邪気にしていただろうなという心当たりを発見し、苦しくなった

    ・聡明な汐見の、自分が愛した2人が自分を愛していないと思い込んでいるところは、幼稚さや未熟さを感じた

    ・「孤独」と「純潔」を結びつける描写、作者の言語感覚の深さに恐れ入った
    汐見が千枝子を受け入れなかった感覚、心理状態、思想を的確に表現していると感じる
    →藤木の死後守り続けた自分の”孤独”に対して、千枝子は「内部への闖入者」に思われた?(別の人の考察より)

    ・またしても(個人的に)好きな感じのラスト
    というか世の中の映画や本って、自分が浅くて無知なだけで、意外とこういう終わり方が多いのかも

    ・一瞬しか出てこないくせに、めちゃくちゃ正論を言い放つ春日パイセン
    「真の孤独というものは、もう何によっても傷つけられることのないぎりぎりのもの、どんな苦しい愛にでも耐えられるものだと思うね。(中略)たとえ傷ついても、常に相手より靭く愛する立場に立つべきなのだ。人から愛されるということは、生ぬるい日向水に涵っているようなもので、そこには何の孤独もないのだ。」

    ・喫茶店で読んでいたところ、出征やショパンのあたりでちょうど店内のBGMで「別れの曲」が流れ、演出がすぎるなと少し笑ってしまった

  • 感想
    矛盾した気持ち。人に近づきたいがわからない。自ら孤独を選んでしまい人から離れる。もし生活が続いていれば。人生の曖昧さを受け入れられたかも。

  • <…僕等を囲んで、天もなく海もなく、場所もなく時間もなかった。風が吹こうと波が荒れようと、この夜は永遠であり、この愛は永遠だった。もう不安もなく絶望もなかった。p.169>

  • 小学生の時に初めて読んだ記憶。最初の聖書の引用から刺さった。ピュアな、でも生きるのには真面目過ぎるとしんどいね。

  • この本を読んだ前後に、ある13人の集まりにおいて、全員の意見が出ず、私と他数名の意見で物事が進んでいくということが起きており、そのことが気になっていた。
    小説は、非常に親密な関係や、あるひとりを掘り下げていくものが多い。
    私は、その集まりのあまり声を上げない人の思いが知りたい。
    まぁ小説でも、学校のクラス、家族という集団を扱ったものがあるなぁ。


    褥(しとね)
    座るときや寝るときに下に敷く物。しきもの。

    艪(ろ)
    和船をこぎ進める用具の一。

    舳(へさき)
    船の先端部。

    艫(とも)
    船の後部。

  • 5時間

  • 役名:汐見茂志

    成功率が限りなく低い手術をわざわざ受けるのは、自分を死刑にするため。理知と繊細ゆえに友人との友人を超えた愛も実らず女性との恋も実らず、病に倒れる。超絶知的デリケートな美しい小説。主人公の名前も好き。

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著者プロフィール

1918-79。福岡県生まれ。54年、長編『草の花』により作家としての地位を確立。『ゴーギャンの世界』で毎日出版文化賞、『死の鳥』で日本文学大賞を受賞。著書に『風土』『冥府』『廃市』『海市』他多数。

「2015年 『日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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