廃市/飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)

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著者 : 福永武彦
  • 新潮社 (1971年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101115030

廃市/飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)の感想・レビュー・書評

  • のっけから比喩のこねくり回しで始まる短編集。安部公房のフォロワーかと思いきや、同世代に活躍していた「戦後派」の純文学の旗手だった模様。

    この本の中で、やはり一番印象に残るのは「未来都市」だろう。異常ノイロンを修復し、犯罪は一切起こらない都市における反乱と離脱。アイデアからメカニズムが明確に打ち立てられ、その中での矛盾を見出す。

    他の作品も、物語の外殻は非常に緻密で強力なのであるが、つい癖で些細な人の出入りだの感情の起伏だのを追ってしまい、幹であり殻になっている部分を読み飛ばすと、よくわからないまま終わってしまう。

    内容は全て難しいわけではないが、動きが少ないので読むのに非常に時間がかかる。文学というより「文芸」というジャンルなのであろう。

    また、スノッブな純文学の特徴かもしれないが、ダメな男によろめく女性が出てきて「ホラあなたはスデに私を好きにナッてしまっているではないですか」的な話が多いので、その辺は「よくあるネタ」と言うかたちで読み飛ばせばよいのかどうなのか。

    安部公房ほど追ったり追われたりしないので、どうも焦点のあっている部分をフォローしづらい。文はうまいんだけど、外殻ではなく骨を読みたい人間にはあまり向かない。

  • 「未来都市」が好きで好きで好きすぎて困る。
    ぐだぐだと理屈をこねて、愛を定義して語ろうとするこの姿勢がなんともいえず大好き。愛するのにも悩むのにも理屈なんていらないのに、そこに理屈を持ち込まないとおちおち悩むことも苦しむこともできないといわんばかりに理屈っぽく語る。
    筋が通ってないと愛にも恋にも苦悩にも飛び込めないのか。何という親近感、なんという愛おしさ。
    情熱と衝動で愛を語る、そういう物語もいいけれど、私は福永武彦の理屈抜きでは愛すら語れない、この不器用な感傷じみた愛への接しかたが大好きです。

  • 再読。《死の概念》と《愛の三角関係》とやらが主題となると得てして陳腐な物語に陥りがちであるが、福永武彦のデッサン力にかかれば無垢な魂が靄のように覆い尽くし絶品なタブローとして表出される。特に「廃市」は白眉、死につつ街のぞっとするほど冷ややかな光景に恍惚となる。シュールな前衛的作品も同様。「影の部分」では主体と客体、ポジとネガが幾度も入れ替わり混沌としながら徐々にアウトラインが浮かび出る。そして眩いばかりノスタルジー溢れるラストシーンの美しさにただ打ち拉がれる。収録作いずれも無垢な心の闇をえぐり出した逸品。

  • 「未来都市」を読んで「新世界より」(貴志祐介)を、
    「退屈な少年」を読んで「喪失」(福田章二)を連想した。

    福永武彦はすごいね、作風に倦怠がない。似たテーマ(死と絵描きと三角関係)はあるけれど、どれを読んでも読後の印象がすごい(ボキャ貧)。

    もうちょっと考えてから書き直します。

  • 長いこと読み終え無いまま放置していた小説をようやく読み終えた。
    感動するくらい日本語が綺麗。久々に有機的な物語を読んだ気がして、昂ぶるものがあります。
    福永武彦の小説はこれが初めてだったのですが、もっと読みたいですね!

  • 2008年3月8日(土)の朝日新聞「愛の旅人」コーナーで福永武彦が取り上げられていた。私は読んだことがなかったのだが、その記事を読んで「廃市」という小説をとても読みたくなった。すでに中古でしか手に入らなかったけれど、Amazonでなら送料は取られるもののサクッと手に入る。
    福岡県の柳川市が舞台になってるとのこと。私は用水路のある町がやたらと好きで柳川にも是非一度行ってみたいのだ。学生時代に過ごした東京都日野市にも田んぼの脇に綺麗な用水路が流れていてその水音がとっても好きだった。
    そんなわけで「廃市」のDVDまで買ってしまった。
    books122

  • 表題2作他、全8編収録。
    かつて『夢みる少年の昼と夜』と共に
    ある人に貸したら、
    なぜかこっちだけ返って来なかったってことを、
    引っ越し荷造り中にハッと思い出し、
    古書店さんから取り寄せました。
    で、再々読……くらいでしょうか。
    これまた昔と印象違うなぁ。
    全然好きじゃなくなったって感じはしませんが。

  • ◎「未来都市」 ○「廃市」「樹」「退屈な少年」

    以下引用。

     ――しかし動機なんて、何の役にも立ちませんよ。現代は死ぬための動機に充満しているんです、そういう時代なんです。問題は、生きるための動機を見つけ出すことで、死ぬための動機じゃありません。
     ――生きるための動機なんかあるものか、と最初の男が怒鳴った。我々は生きてるんじゃない、生きさせられているんだ。だから死ぬ権利だってある筈だ。
     ――私はね、時々こういう埒もないことを考えるんです。人生というのは、地面に穴を掘って、そしてそれを埋めることじゃないかってね。若い時には、一心不乱に、目的も何も分からずに、せっせと掘って行く。自分の廻りに掘った土が堆く積み重なる。そして何処からか、何時からか、今度はその土を穴の中に投げ込んでそれを埋めて行く。(中略)そして結局は初めと同じです、平坦な地面があるばかりだ。しかし人間には死ぬ時までそれが分からないのでしょう。(p.280~281)

     地面を掘ることに何かしら意味があるかと思う、死ぬ時になって、自分は穴ひとつ掘ったともいえないし埋めたともいえない、地面は結局は平かだったことが分かるわけです。その平坦な地面の上を風が吹き渡って、人間のした仕事なんてものはみんな忘れられてしまうのです。(p.281)

  • 「ぞっとするような寒さが彼を襲った。」
    「最早得るものはなにもない、失うばかりだ。しかし失い続けても人は尚生きて行くのだ。」

    なに、その絶望感!悪くはない

    人生とは懸命に穴を掘り、その穴を埋め、平らな地面に戻すこと
    っていう考えは真っ当だと思う。
    できればちゃんと平らにしきってから死にたいなー

    女性不在の男のロマン
    ひとりで不幸を背負いこんだところで彼女が幸せになるとでも思ってるのか ナンセンス 
    まぁいっか 結局それが望みなんだろう

    『退屈な少年』のパラレルな方法が好き

  • 「廃市」はボクの「人生の最期に読みたい本」候補のひとつです。
    映画化もされました。

    「死都ブリュージュ」にインスパイアされて書かれたという話も聞いています。

  •  短編集。少年に焦点を当てた「夜の寂しい顔」「退屈な少年」に挟まれ、愛と死と孤独に震える六編が収められています。福永文学の代表である、夢と現実の狭間で自己意識と対峙する人物や、河のある静謐な描写に貫かれた一冊。私は特に「廃市」が好き。

  • 物語に陶酔する。福永が作るのはストーリーの建築物である。登場人物は影絵のようなものだ。結構がシルエットを際立たせることで、登場人物は普遍性を帯びる。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100910/p2

  • 短編集。全七篇を収録。

  • 初めて『廃市』を読んだとき、多分まだ中学生くらいで、美しい街並みと古き良き日本の古都のイメージは鮮明に浮かぶのに、登場人物達の心情はいまいち理解できなかったし、よくわからなかった。大人になった今、読み返してみて、、
    子供には分かりませんよ、こんな本読んで自分はませてたなあ、と思います。

  • 幾つかの作品が収録されているが、表題になっている「廃市」と「飛ぶ男」とでも話としてみると印象がまったく違う。ちなみに私は「廃市」と「退屈な少年」が好きです。描かれる情景などは美しいけれど、そこに色味はなく、ただ灰色の世界。

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