- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101115047
感想・レビュー・書評
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2016年12月3日
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福永武彦の小説はかなり深刻な色彩を帯びることもあるがけっこうおもしろい。
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1952年の小説。全編を貫く芸術論(芸術と生活/人生の相克)と、四人のそれぞれのもの思い、そして描かれない三枝。1923年と1939年という歴史性。劇的な事件ではなく、意識の移り変わりで読ませる長編小説は、身を切るような痛切な孤独や、少年少女の潔白さ、大人達の諦観、あらゆるものが詰まっていた。「他人」ということ、孤独、そして愛することの絶望…、福永武彦の小説世界を貫く主題はここで既に、くるしいほど記されている。思うんだけど、生きていることに対して誠実でなければここまで孤独も、絶望も感じないんじゃないかなあ。そういう意味でわたしは理解しきれない。こんな風にはわたしは哀しみきれないだろうと。そこがさみしくて、でもこの美しい小説世界を希求してしまう理由です。あと丸谷才一の解説はお見事の一言。
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芸術家を主人公とした作品。毎日出版文化賞受賞。
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福永武彦は映画「風のかたみ」から入ったんですが、深く乾いた悲しみに包まれていてとても好きです。
この風土のあらすじをいまいち思い出せていないのですが、大学生の頃に恋をしあっていた男と女が、人の親になった時分に再会するという話。そこで新しい恋が始まるわけではなくて、ただ二人の視線は静かにむけられている。
この話の中で、落ちていく太陽を見ながら母娘が会話するところがあって、うろ覚えなのだけれど、太陽は海に沈むんじゃなくて溶けてしまうのであって、まるで太陽が死んでしまうみたいねと言うところがある。それをよく覚えている。