冬の鷹 (新潮文庫)

  • 283人登録
  • 4.05評価
    • (34)
    • (40)
    • (23)
    • (0)
    • (2)
  • 48レビュー
著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (2012年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117058

冬の鷹 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 司馬遼太郎のファンで、似た毛色の作家を探し求めている人には吉村昭をお勧めします。そして、いま困難なプロジェクトに四苦八苦している人にこそ、この本をお勧めします。
     大河ドラマにするなら絶対この作品の方がよい!高山彦九郎・平賀源内というサブキャラも魅力的に関与していますし、なにしろ杉田玄白と前野良沢の人生と処世観の差が鮮やかに引き出されています。また、長崎・江戸・中津(大分)と取材箇所が各地に分散する点も魅力を感じます。
     ちなみに、蘭学事始で著名な「鼻はフルヘッヘンドである」云々のエピソードはこの本の中に出てきていません。その理由もあとがきで吉村昭自身が言及しており、資料に丹念に向き合って小説を書く作家であることをうかがわせ、極めて好印象です。
     私は初めてこの作家の著作を読みましたが、別の本も手にしたくなりました。吉村昭は戦時下の昭和日本も司馬遼太郎と違っていくつも取り上げてますしね

  • 予期せぬ感動。
    オランダ語の習得と翻訳業に専念し、富や名声を求めなかった前野良沢と、翻訳チームをまとめて、『解体新書』出版に尽力し、社会的成功をおさめた杉田玄白。どちらのタイプも、大事業を進めるには必要なのだろう。
    だが著者は前野良沢の生き方に、つよく心を惹かれている。とにかく頑固で、清廉潔白に生きた人。それゆえ晩年は貧窮したが、おそらく良沢は、自分の人生にさほど後悔はしてないはず。

    学問の厳しさ、「分かった」ときの純粋な喜び、新しい知識の広まりと反発など。史料に基づく抑制された文章の合間から、歴史上の人物の息遣いまでも伝わってくる。
    『天地明察』にも通じるものを感じた。

  • 日本人に高邁で高潔な知性がかつてはあったんだと希望が持てました。

  • 菊池寛「蘭学事始」の前後左右に肉付けした感じ。ところがこの肉が厚くて豊かで魅力的。玄白がちょっとフォローされてるかな。まあでも、報帖で様子見とか家治への献上とかって玄白のアイデアだし、病弱で独り者だった玄白がこの成功で妻帯できたのは良かった良かった。

    良沢が中津から江戸へ戻る途中で、「大井川に渡しがない」って話が出てきた。先日、角倉了以が江戸初期に舟を通した話(岩井三四二「絢爛たる奔流」。この本の解説、偶然にもこの人)を読んだばかりだったので、あれ?っと思ったけど、よく考えたら了以のは京都の「大堰川」だったw

    あと、そもそもこの話、前野良沢と杉田玄白がダブル主役なんだけど、それぞれの交友範囲に平賀源内と高山彦九郎がいる。史実上、無視できないのはわかるけど、この2人、脇役には相当向かない濃いキャラw。なんで、全体のバランスが崩されちゃって、最終的に座りが悪い仕上がりに感じた。寧ろ例えば、玄白が60歳で良沢70歳の時の20年振りの再会なんかは、もうちょっと紙幅を割いて欲しかったなあ。

    岩崎克巳の「前野蘭化」、挑戦したいけど、東洋文庫3分冊かあ。ハードル高いなあ〜!

  • 「解体新書」で名を残した前野良沢と杉田玄白の対照的な生き方を描く。興味深く読めるのは、彼らを含む4人が共同して訳出に苦闘するくだりで、難事業を克服しようとする各人の情熱と、個々の異なる能力がうまく機能する様は、プロジェクト成功の秘訣を示しているよう。必要な情報や知識が簡単に手に入る現在、かえってその仕事の価値が伝わってくる。ただ、出版を境に良沢と玄白の間に富と名声、家庭環境にまで差が付いていく後半の記述はやや長過ぎる印象で、高山彦九郎のエピソードも蛇足。その辺は作者の思い入れが出過ぎてしまっている印象だった。

  • 面白かった。解体新書の話だと聞いて、てっきり杉田玄白の話かとばかり。実際は前野良沢と2人が主人公の伝記物。サブな物語としては、杉田玄白には平賀源内。前野良沢には高山彦九郎。同時代に生きた人間たちの絡まりを描いているのもリアリティがあって良い。杉田玄白は平賀源内の墓に碑文を収めてるくらいの仲。

    2人の性格の違いがとてもよく描かれており、人生の勉強にもなりました。

  • 解体新書の訳に携わった人たちの物語。こういう風に翻訳していったのかと初めて知った。てっきり杉田玄白だけで翻訳したのかと。職人の脳みそだけだと生きづらいのが人生だけど、そちらのほうが尊いのかもしれないな。

  • 人間性のちがいがよくわかった。

  • 学究肌の良沢、実務家の玄白、対照的な二人ではありますが、どちらが欠けても解体新書はなかったかもしれないと思いました。良沢がいなければ訳業自体できなかったでしょうし、玄白の根回しがあればこそ世に出たわけですし。
    解体新書出版後には交わることがほとんどなく、極端に違う人生を歩んだ両者ですが、辞書のない時代に医学書の翻訳を志して成し遂げた。良沢は五十歳近かったのですから、その信念の強さには頭が下がる思いです。
    玄白が晩年に著した蘭学事始、その執筆時の心境に触れてほしかったなと思いますね。

  • 偏狭までに学究肌の前野良沢の姿を杉田玄白と対比させて描く。生涯学ぶ姿勢にも打たれた。平賀源内の滑稽なまでの軽さも一つの生き様であろう。作者の調査の綿密さも窺える良書。2015.5.5

全48件中 1 - 10件を表示

吉村昭の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

冬の鷹 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

冬の鷹 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

冬の鷹 (新潮文庫)のKindle版

ツイートする