陸奥爆沈 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1979年11月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117072

陸奥爆沈 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 戦局が悪化をたどっていた昭和18年6月8日正午頃、広島県柱島泊地に停泊中の戦艦「陸奥」は突如大爆発を起こしその場に瞬く間に沈んだ。
    それから26年の歳月を経て、本書は陸奥爆沈の真相に興味を持った著者による執拗な探求の道筋を辿った渾身のドキュメンタリー小説であり、歴史の暗部に光をいれた記録文学の秀作である。
    最初著者の関心は低調である。しかし、陸奥爆沈の資料を捜索し続けている内に、著者は何かにとりつかれたようにすみずみにまで目配りを行い、活動的かつ執念を燃やして真相に迫る凄みが次第に露わになってきて、たんたんと描いているはずなのだが、読んでいるこちらもその迫力に圧倒されぐいぐいと引き込まれていった。
    「陸奥」完成までの経緯から始まり、爆沈後の周囲の動きや、査問委員会の行動、大規模な箝口策、三式弾のこと、そして、困難を極める潜水調査と、緊迫感ただよう状況を刻々と伝えながら、次第に著者の筆致にも熱がこもってくる。その中で査問委員会が持った大きな疑惑が放火説であることを知った著者は、今度は日本海軍の歴代の爆沈事件にまで視野を広げていく。そこにみる構成と視点は、まるで社会派推理小説を読んでいるようであり、著者の思考過程をトレースするかのように展開するその「報告」は、まるで一緒に事件を追っているかのように錯覚させるものであって、なかなか見事な手法であったと言える。
    冒頭で著者はいう。別に兵器である軍艦には興味はない。だが、戦艦武蔵にしても(陸奥もそうだが)、フネを作り上げ動かすために結集した人々に戦争と人間の奇怪な関係を見出し、それほどの知識、労力、資材を投入したにもかかわらず、兵器としての機能を発揮しないまま、多くの犠牲者とともに沈んだ構造物に戦争のはかなさを感じると。
    そうした著者の視点は事実をたんたんと積み重ねながら、軍艦そのものよりも、それを動かす人間とその背景、組織の中の泥臭い人間関係の狭間で弱さを露呈する人間そのものの行動を明らかにすることであり、そういう意味では本書は陸奥のみならず軍艦爆沈事件に関係した人々のヒューマン・ドキュメンタリーであったと言えるだろう。
    実は本書の内容は、中学生の頃に読んだ『海軍よもやま物語』シリーズ(光人社)の中で、今ならコピーライトに抵触するのではないかと思えるほど詳細に紹介されていたのでかなりの部分は知っていて、いまさら感もあったのだが、内容はともかくとして、その鬼気迫る事件真相究明へのアプローチには圧倒されとても面白かった。最近は当時の日本軍機や軍艦などが映画やラノベ、ゲームなどで取り上げられてまたブームになっているようだが、軽薄な物語やキャラに熱中するのも良いが、一過性のブームに踊らせるだけではなく、その背後の生きた「人間」や無機的な兵器の行く末にまで思いをいたして欲しいものである。

  • 1979年(底本1970年)刊。◆戦中、海軍を驚愕させた戦艦陸奥爆沈事件。その要因分析は精緻を極めた。史料散逸・焼却?もあって、現在は闇の中の本事件に光を当てる本書。自然発火説(火薬、空戦用三式弾、徹甲弾など様々)、襲撃説(魚雷、潜水艦より特殊潜航艇の如き艦船。あるいは空爆)が消える中、人為説が浮上。というのも、日本海軍ではかかる放火・失火事件が散見される故(日本海海戦の戦艦「三笠」も。勿論、諸外国でも同様に存在)。◆この人為説の解読に光を当てるのは本書七以降。時間が無ければ、そこから読むだけでもよいか。
    戦後25年ですら、しかも、この程度の問題点ですら、終戦直後の史料散逸・焼失という事態もあって、真相にはたどり着けなかった。勿論、著者の努力を否定するつもりはなく、本書の価値を下げるものではないが、そもそも戦後70年を経た現在、もっと重要な問題点が闇の中のまま、判明することなく消えてしまった可能性に思いを致さずにはいられなかった。

  • 2つの要素が印象に残った。1つは巨大戦艦陸奥爆沈の原因の調査が進むにつれ、意外な方向に焦点が絞られていくサスペンス。もう1つはそれが実は意外でもなかったという、帝国海軍の軍艦に巣食っていた病巣の暴露。そこには軍隊内に厳然と存在した給与格差や昇進条件といった差別化の問題が示唆され、そのしがらみは兵士を縛り、時には「出来そこない」が生まれることになる。旧軍が有していたそんな潜在的な病根が、陸奥爆沈の原因を探る過程で徐々に浮かび上がってくる。惜しいのは、引き締まったドキュメンタリーにするなら、事故発生後の対応や過去の爆発事故の詳細をもう少し簡略化しても良かった。またそれよりは、外国の軍隊で似た問題は無かったのかという比較があっても面白かったと思う。

  • 戦艦陸奥爆沈の謎を追う吉村昭が刻々と描かれている。
    少し説明的すぎて読むのに飽きる部分はあるが、取材の大変さがよく伝わってくる。

    大型戦艦の中にいるごく普通の人たちの闇が伝わる。

  • 暗部というか、大きな組織だしなと思いつつ…。
    陸奥ほどの大きい戦艦であれば、いじめもすごかったことでしょう。しかし…火薬庫を厳重にする前に、もっと何かに気がつけよ!とも思わなくもないですが、時代なのでしょうね。

    それにしてもホント、吉村昭ってすごい。ご本人の思うところは差し挟まず、とにかく徹底的に調べている。自分の価値観だけで見ないというのがホント、なかなかできないことです…。

  • 連合軍の反攻つのる昭和18年6月、戦艦「陸 奥」は突然の大音響と共に瀬戸内海の海底 に沈んだ。死者1121名という大惨事であっ た。謀略説、自然発火説等が入り乱れる爆 沈の謎を探るうち、著者の前には、帝国海 軍の栄光のかげにくろぐろと横たわる軍艦 事故の系譜が浮びあがった。堅牢な軍艦の 内部にうごめく人間たちのドラマを掘り起 す、衝撃の書下ろし長編ドキュメンタリイ 小説。

  • 日本海軍の火薬庫爆発の原因が内部犯行とは衝撃的だった。

  • 一つの事件を多角的に見た作品

  • 「大艦巨砲主義」とは、若き乗組員たちにとって
    両性具有者の完全無欠性をイメージさせる言葉だったと思う
    それは不可能性を実現した姿として
    時に憧れの的であったろう
    しかし、時にそれは空疎な妄想として
    憎しみの対象となったかもしれない
    あの「金閣寺」のようにね
    それこそばかげた妄想だと、笑われるかもしれないが
    そのように考えれば
    火薬庫で火遊びするバカタレどもの心境も
    わかる気がするのだ

  • 2014年6月20日

    デザイン/新潮社装幀室

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