漂流 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117089

感想・レビュー・書評

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  • 13.12.3

    こんにちは、ファイナンシャルアカデミーの束田です。

    今年も早いもので、
    あっという間に12月になりましたね。


    それで、師走とはまったく関係ないのですが

    先週月曜日に「たけしのTVタックル」
    という番組を観ました。


    テーマは、

     「老後ビンボーから抜け出す
      3つの秘策を教えます!」

    というもの。


    いわく、現在の年金制度では定年退職後の
    生活費を賄うことができず、
    貯金を取り崩していくしかない。


    その結果、80歳前後で貯金が枯渇して

      「老後ビンボー」

    になってしまう可能性があるので、

    それを回避するための3つの方法を
    紹介していました。


     1つ目は、老後も働く。

     警備員や管理人さん、老人ホームでの介護など、
     パートタイム的な仕事で収入を得る。


     2つ目は、地方都市に移住。

     自宅を売却して、生活費の安い地方都市で暮らす。


     3つ目が、投資(株式投資と不動産投資)。

     株式投資については、
     配当収入や株主優待といった安定収入を狙う手法が
     紹介されていました。

     不動産投資については、
     アパートやマンションを購入して
     家賃収入を得るものです。


    この3つというのはそれぞれ
    色々なハードルはあるものの、

    現実的に検討できる選択肢だろうな、

    と思いつつ観ていたのですが、


    とても残念だったのが番組の出演者の方が、
    2つ目と3つ目の選択肢、

    つまり「働く」以外の選択肢について、

    こぞって批判的なコメントをされていたことです。


    例えば・・・

     地方都市への移住:

       札幌は寒いし、那覇は暑い。
       移住先にも管理費や修繕費がかかる。

       そもそも売却すべき自宅がない人は
       お金が無いので引っ越しすら出来ない。


     株式投資、配当収入:

       「株価が下がったらどうするの」
       「10年後、20年後まで配当が続く保証はない」


     不動産投資、アパート経営:

       「不動産なんて固定資産税やら管理費やら
        コストが掛かってたいして儲からない」

       「老朽化したらメンテナンス費用がかかるし、
        売ろうとしても値下がりしてしまう」



    ・・・ちょっと待ってください。

    そもそもそのままでは

      「老後ビンボー」

    になってしまうからどうにかしよう、
    というのが発端だったのに、

    選択肢をつぶしてどうするんですか!?

    と一人でツッコミながら観てしまいました。


    もちろん、

    株式投資をしたり不動産を買ったりするのは
    簡単なことではありませんし、
    それなりにリスクを背負うことになりますが、


    かと言ってそのまま何もしなかったり、
    老後も働き続けようというのも
    非常に大きなリスクがあります。


      もしも病気になったら?

      体を壊してしまったら?


    取替えの効かない資産である

       「自分の肉体」

    に全収入を頼ることのほうが、
    よほどリスクがあると思えませんでしょうか。


    そのようなリスクに対して、

     「健康が一番!

      とにかく頑張りましょう!」

    のひと言で片付けてしまうことの方が、
    よほど無責任なように思えてしまいました。



    ちょうどタイムリーなことに、

    最近観た映画


     「飛べ!フェニックス」

      1965年アメリカ映画、
      ロバート・アルドリッチ監督



    でも似たようなテーマを取り扱っていました。


    この映画のあらすじは、


      サハラ砂漠上空で、飛行機が遭難して不時着してしまう。

      乗客たちは限られた飲料水と食料で救難を待つが、
      航路から大きくそれており、無線機も壊れているため
      救難される可能性はほぼゼロ。

      そこで、使える部品から新しい飛行機を組み立て、
      脱出することを試みるが。。。。


    というものです。


    ポイントとなるのが、

    何もしないでじっとしていれば30日くらい
    生き延びることができるが、


    激しい肉体労働をして飛行機を組み立てると
    水と食料を余分に消費するため、
    1週間くらいしか飲料水が持たない

    =早く死んでしまう。


    死の危険性を犯してまで、
    飛行機の組み立てに挑戦するか?

    飛ぶ保証もないのに!?

    という点です。


     「飛べ!フェニックス」


    というタイトルから
    ある程度展開は予想出来てしまうのですが、

    当然の如く仲間割れが発生したり、
    色々なトラブルが発生するのが

    映画として面白くさせています。


    こういう「究極の選択」的なお話は
    実話でも存在します。


    私の好きな本に、

      「漂流」

       吉村昭著、新潮文庫(1980年)


    という小説があります。


    題材は本当にあった話で、

    江戸・天明年間にシケにあって漂流し、
    伊豆諸島の最南端に位置する無人島、


      鳥島(とりじま)


    に流れついた土佐の船乗り長平らは、
    アホウドリや海藻、貝などを食べながら生き延び、
    苦節12年、無人島からの脱出を試みるのですが、


    その手法というのが砂浜に流れ着いた
    流木や、難破船の木材などを拾い集めて、
    新しい船を作るというものなのです。


    (この奮闘ぶりの壮絶さは、泣けてくるくらい
     凄いのでぜひ原作を読んでみてください)


    この話においてもやはりクライマックスは、


     無人島にいればほそぼそと
     何年かは生きていけるものを、


     浮かぶかどうかも分からない、
     ちょっと嵐が来たらすぐに沈没しそうなボロ船に、
     なけなしの食料を積んで漕ぎ出す!


    このシーンが実に感動的なのです。



    けっきょく何が言いたいかというと、

    どんな選択肢でもリスクが存在するのであって、
    リスクがあるからと言って行動しないというのは
    そのまま別のリスクに衝突するのを覚悟するしかなく、
    何も解決にならないということです。


    他人のリスク、他の選択肢のリスクを
    指摘することは、自分のリスクを
    消すことにはつながりません。


    「コワイから」「危ないから」

    と言って何もしないのではなく、

    リスクそのものにしっかりと向き合う姿勢を
    持ちたいものだ、

    と番組を観て感じました。


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  • 壮絶過ぎて、読み終わってぐったり疲れた

  • 2018年8月16日読了。

    509ページ。

    江戸時代にシケにあって難破し、黒潮に乗って水も湧かない絶海の孤島に流れ着く。

    たった一人で生き残った長平は、その後に流れ着いた漂流者とともに12年に渡って孤島で暮らしついに生還する。

    キャスト・ア・ウェイの江戸時代版。

  • これがほんとに起きてたなんて信じられない

    これは漂流記だから淡々と日々の苦しい生活が綴られていて途中退屈と感じることが多々あったが、実際にあったお話として衝撃を受けた

  • 江戸時代。黒潮に流されて無人島へ。壮絶な漂流記だ。読み応えのある中身だが、途中少々間伸びしているのが残念。もっとシェイプした文章の方が良かったかも。

  • 遭難し無人島に辿り着いた水夫のサバイバルとしても充分面白いが、3つのグループが次々に漂着した偶然がドラマをさらに劇的にしており、彼らが直面する様々な困難と葛藤にページをめくる手を止めるのが難しい。時折悲喜劇も混じり、殊に3番目に着いたグループが無人島と知り絶望感に陥るのに対して、既存の漂流者が仲間が増えた事に喜びを隠せない対比などは、人は慣れる生き物で、歴史は繰り返すものなのだと示しているようで印象的。一般に人数が増えるほどトラブルの種も増え得るが、結末が示す通り、彼らの間には比較的良好な関係と団結力が存在していたらしい。それは後にやってきた2つのグループの長に、年下の「先輩」や「他者」を尊重する見識があったのが大きく、舟の上では年齢や出自でなく能力と経験を持った者が偉い(でなければ舟が沈む)という船乗りのルールがそうさせたのだとすれば、無人島は彼らにとっての船だったと見ることも可能だろう。船乗りでなければ漂流はなかったが、船乗りでなければ生還もあり得なかった。水と食糧を得る方法もさる事ながら、人間が生き延びるには何が大切なのかを如実に見せつけられた読後感だった。

  • 無人島に漂着した人たちのお話。絶望、失望、希望。生きるとはどういう事か。

  • 吉村昭氏がスポットを当てる市井の日本人の生き様が心を奪う。絶望と失望を繰り返す絶海の孤島での13年、俺には生き抜けるだろうか。いや、長平のような独り身ではなく、家族がいればこそ、生き抜かねばならない。

  • 正月休みに一気に読んだ。ページ数を感じさせない素晴らしい作品。人間が生きるという事がどう言う事か深く考えさせられた。

  • どこまでが事実でどこまでが想像か分からんが、とりあえず今年一番。いや、すごいのはこの小説というより長平がか。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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