空白の戦記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117096

感想・レビュー・書評

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  • 徹底した調査に基づく記録文学の短編。大自然との戦いを描いた「艦首切断」「顛覆」は圧巻! 「敵前逃亡」「太陽を見たい」でやるせない気持ちになり、「最後の特攻機」の不条理...。「軍艦と少年」は『戦艦武蔵』の後日譚。240頁ほどだが心にずんっとくるどれも素晴らしい作品。

  • 面白かった。最初の日本海軍の艦船の設計ミスについての二篇は知らないエピソードだったので良かった。さすが吉村昭。他の作品もそれぞれ良かったけど、敵前逃亡だけがフィクションで、かつ別種の独特の読後感で居心地悪かった。読むものがなくて某所で困ってたら置いてあったので借りて読んだ。

  • 【艦首切断】
    「峰のような波」、「30mの三角波」
    まったく想像がつかない。自然の力の恐ろしさ。
    東日本大震災後の津波映像で見た波よりさらに巨大な波が・・・ということなのだろう。
     そして、「お国のために・・」との名のもとに闇に葬られた 事故の事実 と、生存者がいたかもしれない艦首部分…。やるせない史実。

    【顚覆】
     40時間以上もの間、助けがいつ来るか分からない状態で(むしろ、助けが来るかどうかすら不明)暗闇に閉じ込められる……。  発狂するよね。。。。
     地獄のような時間を耐え抜いた13名が、凄い。
     そして・・・・またもや、事実は隠蔽。

    【敵前逃亡】
     なんという…(絶句)。
     子をもつ身としては、住民兵の言葉にこそ強く胸を打たれた。
     フィクションであってフィクションでは無いのであろう狂気の沙汰を描いた一遍。日本人は、これを読んでおくべし。

    【最後の特攻隊】
     宇垣中将の終戦後特攻。他の読み物でも目にしたことのあるエピソード。宇垣中将の心象を追う形で編まれたこの話を読んでの感想は・・・・
    「一人で死ねよ」
    「いや、“死”に逃げるな!!」
    という相反する二つの感情だった。彼と行動を共にした10数名は、全くの犬死に、無駄死にだったのだから。
     筆者の持論「(愚かすぎる作戦)指揮者を責めることはあっても、隊員の死を蔑むことは許されない」にも、共感。

    【太陽を見たい】
    “教育”というものの偉大さと恐ろしさを実感した。
    明治維新から80年余りの教育が、沖縄戦の悲劇(犠牲者数)を何倍もに膨れ上がらせたことは、間違いないと思う。
    そしてそれは沖縄戦に限らず、日清・日露の戦から満州での展開も含めて言えるだろうと。

    【戦艦と少年】
    少年が設計図を盗み出して焼却してしまった、その理由…。国家を語るにはたしかに「些細な動機」ではあろうが、軍人でも軍属でもない少年には、切実な想いだったのだろう。

    ・・・・読了・・・・
    「戦艦武蔵」も、読まねばらならいなと思わされた一冊。

    ※「戦艦と少年」作中で製作されていたドキュメント映画、観てみたいものだ。

    ★4つ、9ポイント。
    2018.09.26.新。

  • 一番スリリングなのは、戦艦武蔵設計図紛失事件の当事者であった少年の行方を追う一遍。事件の重大さに反して、その行為の動機があまりに些細だった事は、逆にドラマ性があり、確かに少年のその後が気になってしまう。前線送りになって戦死したイメージが勝手にあっただけに、戦後も存命していたのは驚きで、著者の調査によって彼に徐々に近づいていく様には、一気に興味を引きつけられた。

  • 吉村 昭 はすごい

  • 【目次】
    「艦首切断」第四艦隊遭難事件
    「顚覆」水雷艇友鶴遭難顚覆事件
    「敵前逃亡」沖縄鉄血勤皇隊中学生
    「最後の特攻機」宇垣纏海軍中将の突入
    「太陽を見たい」沖縄伊江島の女子切込隊員の記憶
    「軍艦と少年」戦艦武蔵設計図紛失事件

    【再読】
    2022年8月4日

  • 3,4回目か。ちょうど、今頃に読むと、先人が悲惨な国情に伴い、命を捧げた時間に少しでも近づけ弔意の首を垂れることが出来たらと。

    7編は長短あれど、重さはいずれ劣らぬ力作、熱く、するフド委痛みで突き刺さってくる。臨場感はとてつもなく、読み手の周囲の時間が停まったかのような想いを抱かせてくれる。

    中身をそらんじられるほどに熟読した「艦首切断」は圧巻。吉村氏のペンはいつもながら、その場に居ないのになぜにこうまでと息をのむ想い。

    下手な戦争追悼番組や政府の域が掛った様な追従モノより、中学生に読んでほしい・・難しくてもこうして日本の軍は新た貴重な命を散らして行ったのだと。

  • 不合理

  • P242

  • 素晴らしかった!
    泣きながら読みました。
    特に、『艦首切断』と『顛覆』(本書どおりの漢字がでなかったけれどてんぷくです)は感極まって一気に読むことができませんでした。

    シンプルながらも的を射た表現が想像力をかき立てます。
    大変よい本でした。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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