海の史劇 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1981年5月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117102

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海の史劇 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 本書は、同時代を書いた、司馬遼太郎「坂の上の雲」と対比されるが、同書が、坂の上の雲を仰ぎ見ながらひたすら上り続けた、明治人の意気軒高さと心意気を、書いているのにくらべて、書き出しがバルチック艦隊の出航の模様から始まり、敗軍の将となった、ロゼストヴェンスキー総督の末路にまでおよぶ壮大な史劇となっている。

    私がここで留意したいのは、当時の国民の熱狂とは裏腹に、当時の政府や軍のトップの人たちが、国力の限界を正確に把握していて、積極的に
    米国大統領に仲介を依頼したことである。
    それから40年後の、政府や軍のトップたちが、戦況の劣勢をひたすら隠し本土決戦や一億玉砕を呼号して、いたずらに国土を疲弊させ犠牲者を増やしたことを思い起こしてもらいたい。
    国のトップの劣化は、結局国民を不幸にするものである。

  • 読了は十数年前。日露戦争における日本海海戦をテーマにした戦争記録小説の秀作。
    ロジェストヴェンスキー中将率いるバルチック艦隊が出航するところからはじまり、日露双方の記録をもとに丹念にそしてたんたんと描くのだが、その話の流れのリズムもよく、読む者を話に引き込んでくれます。
    バルチック艦隊派遣の背景とその多難な航海、そして迎え撃つ日本艦隊の状況と苦悩を描き込んだ上で、「その時」である日本海海戦の顛末を克明に記す。また、余韻を伴うその後の様子と後日譚もテンポよく記されていて「日本海海戦」という出来事を描き切ったといえるだろう。まるで、現実を映像に封じ込めて編集し、物語性をもたせたドキュメンタリー映画を観ているかのような圧倒感を持つ描きっぷりでした。
    結果がわかっているので、ある意味、安心して読むことができました。
    自分は面白くて2度読みしてしまった。

  • 日本海海戦までのロシア・バルティック艦隊の大遠征と圧倒的な日本の勝利、勿論痛快な勝利ではありますが、この時代の紳士的な双方の態度、ロシア兵捕虜への人道的な日本の対応、また敗軍の将ロジェストベンスキー、ステッセル・・・への暖かい日露両国の対応など、しかし寂しい晩年。明治の成長期の輝かしい日本人の希望を描いた司馬遼太郎の「坂の上の雲」とはまた違った、より更に客観的な史実として説得力も感じさせ、なおかつ著者によって素晴らしい心温まる叙事詩になりました。

  • 日本海海戦(日露戦争)を描いた歴史小説。「坂の上の雲」とは歴史の描写方法、スコープが異なるので重複感は全くないし、比較をしながら読むと却って興味深い。
    吉村昭のアプローチは史実を淡々と描写する手法であり、それ故に生々しさがより迫ってくる。また、登場人物への私情もないので、より客観的な人物像を知ることができる。
    日本海海戦がメインではあるが、それに深く関係することとして203高地攻略も登場する。
    「坂の上の雲」と比較すると、
    ・秋山兄弟が殆ど(全く?)登場しない!
    ・ポーツマス条約の小村寿太郎等の交渉状況も含まれている。ただ、これは「ポーツマスの旗」(吉村昭著)を読むと更によい。
    ・捕虜となったロシア兵が日本で厚遇される状況がより具体的に描かれている。
    ・ロジェストビンスキーなどロシア将校の敗戦後のロシアでの処遇に関することも含まれている。

  • ・坂の上の雲の日本海海戦よりも本作の方が描写としてわかりやすい。
    ・バルチック艦隊の航海は大事業であることを認識させられた。
    ・ロ提督が「坂の上・・・」よりもしっかりした人物として描かれれている。
    ・実際の戦闘は悲惨なものだが、この時代は、まだ武士道・騎士道が生きていた。

  • 吉村昭にはずれなしです!

  • 日露戦争の、その始まりと終わって講和を結び、その後の日本の行く先が見えるようなところまでが描かれていた。
    もう途中、ロシア艦隊がつらすぎてつらすぎて、暑さに喘ぐロシアの兵と同じようにして、私も帰りたくなりました。イギリスや日本の外交、怖い。文章が淡白だから、想像が膨らんで余計に寒気がする。

    でも一番鳥肌ものだったのは、小村寿太郎の講和を結ぶまでの場面。
    この悲壮感。教科書にこの背景くらい書いた方がいいんじゃないのと思う。急に日比谷焼き討ち来るから単純すぎて。書かないのはあれかな、戦争は軍部が仕込んだものだと言いたいからなのかな。

    吉村昭は大衆の熱量と戦争のつながりを特に注視しているのだけれど、その考えが端々に出てくる。特に最後の小村の嘆きが読んでいてつらい。(語彙力!)

    今も同じだよなぁ、と、選挙の騒ぎを見ていて思う。
    憲法だなんだじゃない、大衆の未熟性、ではないのかねぇ…。それがマスコミの姿勢に出ているだけなんだよってね。

  • 中学時代にシンガポールの日本人会古本市で単行本上巻のみ購入。その後高校受験のため帰国し、府立高校受験翌日に合本版文庫を購入し読了した。一言でいえば日本海海戦を描いた作品であり、小国日本が大国ロシアを撃破するカタルシスを求めて読み始めたわけだが、本書はバルチック艦隊がバルト海から喜望峰またはスエズ運河を経て対馬沖に向かう長大で苦難に満ちた遠征航路を延々と記録している。日英同盟によるイギリスの妨害、イギリスの圧力を受けた同盟国フランスの消極的支援など、国際情勢に翻弄され疲弊していく艦隊の窮状には、敵ながら同情を禁じ得なかった。この前人未到の称賛に値する航海の末に、バルチック艦隊は日本海軍によって完膚なきまでに叩きのめされるのである。歴史というドラマ(史劇)は、決して一方的な視点で描いてはいけない。そのことを深く胸に刻んだ一冊だった。

  • セリフがなく、多少読みづらい。しかし、門外漢が日露戦争の大一番である、日本海海戦の経過を知るのには適した読み物である。ロシア軍の太平洋艦隊の長がロシアを出発して、敗戦を背負い帰ってくるまでの話である。

    太平洋艦隊は7ヶ月に渡って航海をして日本海に攻めてくる。途中、マダガスカル島に1ヶ月ほど足止めを食らう中で海兵が死んでいくなど、その航海はただ事ではなかったことがわかる。

    その間、日本が取り組んでる旅順攻略戦の話も割と詳細に渡ってる。

    そして日本海海戦。東郷ターンのくだりは有名だから知ってたものの、実際には殲滅までに一日中戦ったことや、その後のポーツマス譚までかかれており、非常に満足いく内容。

  • 祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうち に歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提 督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒 的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎 の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全 貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ 月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態 度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文 学。

  • 日本海海戦の記述は圧倒的。ポーツマス講和会議、日比谷焼き討ち、ロジェストヴェンスキー提督などの後日談がまた痛々しい。

  • 坂の上の雲に比べると、ロジェストウィンスキーが名将として描かれているのが印象的であった。

  • 戦艦武蔵の後に読んで良かった。武蔵で終わっていたら、救いがない。

  • 本文664ページの大部であるが、都合6時間余りで読了。史実の羅列ではあるが、読み応えのある一冊だった。ロジェストヴェンスキーが囚われてから帰国までのくだりは、なかなか興味深いものだった。

  • (「BOOK」データベースより)
    祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうちに歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文学。

  • 手に汗握るとはこのこと。電車で二回おり損ねた。ポーツマスの旗は胃が強い方にオススメ。

  • 上司に勧められて読んだ。歴史小説を読むきっかけになった本。史実が元となっているため結末は既にわかっているはずだが、淡々とした記述の積み重ねが重厚な世界観を作り出している。

  • 丹念に史料を読み解き忠実に日露戦争を描き出した労力には感服します。が、あくまで読み手側の問題なのでしょうか?話としての面白さは別物と感じてしまいました。氏の作品は好きなのに…。

  • 吉村昭という作家を始めて知った。これだけの作家を今まで知らなかったなんて、恥ずかしい限り。

    日露戦争の日本海海戦を描いている。
    ロシア側、日本側の両側を丁寧に、史実を確実に積み上げた、読み応えのある、面白い小説だった。

    当然、これを読みながら司馬遼太郎の「坂の上の雲」と比べていた。
    同じ舞台を描きながら、全く異なるアプローチ、記述。
    「坂の上の雲」と「海の史劇」というタイトルだけで、2人の違いが良く分かる。
    明治の日本人が坂の上にある何かを求める姿勢とか想いを描いたのが前者なら、後者は淡々とあった歴史を積み重ねている。
    小説家によってこんなにも違う作品になる。
    もちろんどちらも素晴らしい。

  • 吉村昭さんの本は始めて読んだが、非常に詳しく頭の中でイメージが浮かんだ。特に旅順攻略の場面が面白い。これを読んで児玉源太郎に興味が湧いた

  • 昔読んだ坂の上の雲から、
    あまり新しい印象を受けなかった。
    淡々とした文章は好きだけど、先の展開がわかってる場合は、もちょっと主観とか感情の要素が入った方がよいのかも。

    日本海海戦後。日本国民は好戦的で講和条約に焼き討ちで答え、ロシア国民は革命でロジェントベンスキー提督すら帰国の途で危ない目にあう。
    単純に言うと群集心理て怖いなあ、と。

  • 2011.4.17(日)¥294。
    2011.9.15(木)。

  • 私にとっては非常に長くて、一ヶ月ぐらい読んでましたw

    日露戦争時の、日本海海戦を、どちらかというとロシア側からまとめた史劇。

    最初はロシア人ばかり出てきて、早く日本軍出して欲しいなあとじれったく思って読んでいたのですが・・・

    だんだんとロシア側に感情移入していったのがまさに吉村マジックです。

    しかし、当たり前だけど本当に知らなかったことばかり。
    バルチック艦隊が日本に来るまでもなかなか壮絶で、死者が何名も出ていて、なかなか大変なものだったんですねー。
    メインの海戦そのものは、息を呑むような展開で、ぐいぐい引き込まれました!東郷平八郎の丁字戦法からの、巧みな砲撃戦。あっという間にロシア艦隊はばらばらに。

    船が爆撃を受けて破損して、沈没していくときの何とも言えない刹那さ。そして切なさ。
    ロジェストヴェンスキーと長い間旅をともにしてきたクニャージ・スヴォーロフが、命ある戦艦から、ただの鉄塊に成り下がるシーンは日本にとって敵国ながら切ない思いでした。やっぱり命吹き込まれた人工物や、その乗組員が亡くなっていくのは、どんな立場であれ悲哀を感じます。

    戦いの面の迫力もさることながら、客観的データも非常に興味深かったです。日本とロシアの損害の差は、海戦の中では歴史に残るようなものだったとか。

    捕虜の扱いも、この頃はまだちゃんと国際規定を守って、しっかりしていたんだなーと。第二次大戦時の捕虜の扱いとは結構違うんですね。
    そしてロシア兵をこんなに手厚くもてなした日本が・・・国際規定ガン無視のシベリア抑留強制労働orzとか思ってしまいました。ロシアが日本に対して臥薪嘗胆の思いでいたのもわかりますが。

    とにかく長かったですが、色々と勉強になりました。本当にガッツリと日露戦争の日本海海戦について知れました。

  • 図書館から借りてきた。
    日本海海戦を、バルチック艦隊がロシアを出航するところから、東郷の死まで描いている大作。
    良くも悪くも、この戦争の結果が西洋から危険視される結果を招き、日本を戦争の歴史に巻き込んでいる。

  • 坂の上の雲はすでに読んでいたので他に日露戦争のこと書いた本ないか親父に聞いたらこの本を薦められた。ていうかなんなんだあの親父の読書量は。圧倒的じゃないか。

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