海の史劇 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117102

感想・レビュー・書評

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  • 日露戦争の事は全く無知であったが、この本で旅順戦での乃木将軍の稚拙な作戦行動、バルチック艦隊が喜望峰を迂回して壮絶な大航海の後に日本海に来た事、日本海海戦が僅か2日で決着がついた事などが吉村昭氏の淡々とした書法で書かれており、とても楽しく興味深く、面白く読むことができた。

  • バルト海から日本海まで回航する艦隊、ロシア人の苦闘を活写している。

  • 日露戦争におけるバルチック艦隊と東郷艦隊の大戦を描く。

    艦隊の大戦のみならず、旅順港攻略、バルチック艦隊が日本に到着するまでの苦難に満ちた道のり、日本勝利後のロシア捕虜の扱い、ロシア将官の祖国帰還まで周辺情報が、綿密な調査に基づき、整理されて記載されているのは、さすが吉村氏である。

    あとがきで書かれているとおり、戦争終結後の日本国民の反応は、戦争と平和に対する意識の未熟さを露呈するものであり、それは、後の戦争への失敗へと繋がっていく。

    読み応えのある一冊だった。

  • 「海の史劇」吉村昭著、新潮文庫、1981.05.25
    558p ¥520 C0193 (2022.01.31読了)(2010.06.05購入)
    物語は、1904年9月5日に始まります。ロシアのバルチック艦隊がクロンスタット港を出発しウラジオストックを目指します。
    待ち受ける日本の連合艦隊と遭遇するのは、1905年の5月27日です。
    なんと、バルチック艦隊は、マダガスカル島での長期の滞在を挟んで9か月ぐらいの旅を続けたことになります。
    連合艦隊が佐世保に戻ったのは、5月30日です。
    ポーツマス条約の締結やロシア兵の捕虜たちの状況についても触れています。日本兵の捕虜のロシアでの扱いにも触れています。
    ロシア兵の捕虜は、手厚くもてなされていますが、日本兵の捕虜は、ロシアで悲惨な目にあっているようです。第二次大戦後のシベリア抑留も悲惨だったようですが、ロシア帝国からソヴィエトに代わっても日本人に対する扱いは変わらなかったのですね。
    以前、『坂の上の雲』司馬遼太郎著、を読んでいるのですが内容をすっかり忘れていますね。

    【目次】(なし)
    一~二十二
    あとがき
    参考文献
    解説  田村隆一(1981年3月)

    ☆関連図書(既読)
    「日清・日露戦争」原田敬一著、岩波新書、2007.02.20
    「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子著、朝日出版社、2009.07.30
    ☆吉村昭さんの本(既読)
    「戦艦武蔵」吉村昭著、新潮文庫、1971.08.14
    「零式戦闘機」吉村昭著、新潮文庫、1978.03.30
    「遠い日の戦争」吉村昭著、新潮文庫、1984.07.25
    「三陸海岸大津波」吉村昭著、中公文庫、1984.08.10
    「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
    「平家物語(下)」吉村昭著、講談社、1992.07.20
    「桜田門外ノ変 上巻」吉村昭著、新潮文庫、1995.04.01
    「桜田門外ノ変 下巻」吉村昭著、新潮文庫、1995.04.01
    「ニコライ遭難」吉村昭著、新潮文庫、1996.11.01
    「生麦事件(上)」 吉村昭著、新潮文庫、2002.06.01
    「生麦事件(下)」 吉村昭著、新潮文庫、2002.06.01
    「死顔」吉村昭著、新潮文庫、2009.07.01
    「戦艦武蔵ノート」吉村昭著、岩波現代文庫、2010.08.19
    「彰義隊」吉村昭著・村上豊絵、朝日新聞、2005.08.19
    (「BOOK」データベースより)amazon
    祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうちに歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文学。

  • ここまで調べ上げるのは物凄い労力だと思うが、この著者ならではとも思う。この本を読むと「坂の上の雲」「ポーツマスの旗」あたりを読み返したくなる。

  • ロシア側の視点を軸に、バルチック艦隊の進発から敗戦後のロジェストヴェンスキー提督のロシア側 帰還までが、筆者の入念なリサーチに基づいて丁寧に描かれている。(もちろん、古い作品なので、その後の新事実などは割り引いて考える必要はあるが)

    立ち位置だけではなく作風も含めて、『坂の上の雲』と対になる作品として、前後して読むと視野が広がると思う。

  • 日本海海戦を舞台とした小説では、司馬さんの「坂の上の雲」が有名だが、その視点が日本側からなのに対し、この小説はロシア艦隊側からの視点で展開する。7ヶ月に及ぶ航海、戦争、そして敗戦後の祖国への帰路。よく資料を集め、事実に基づいたストーリーとして価値を感じる。そして、作中にもあるように戦争が日露ともに大きな犠牲と負担を残した虚しさに共感を得る。以降さらに殺傷能力の高まる大きな戦争が続くのである。2019.10.28

  • 日露戦争を舞台にした人間模様。

  • 東郷平八郎の、勝利の後も決しておごらず、敗将に対しても敬意を表す威厳に満ちた態度。また、小村寿太郎の沈着冷静かつ毅然とした講和外交。命を懸け国難に立ち向かった、かつての日本人の姿が眩しすぎる。
    <blockquote>「申すまでもありませんが、勝敗は兵家の常であり、貴官が敗軍の将となられたことは少しも恥ずべきことではありません。貴艦隊が、本国を出発してから18,000浬の海を航海してきたことだけでも、驚嘆に値する大偉業です。その上、二日間にわたる海戦で、貴艦隊の乗組員は、実に勇敢に奮戦しました。私たちは、深い敬意をいだいております」</blockquote>

  • 日本海海戦を描いた吉村昭の記録文学の傑作。

    日本海海戦と言えば司馬遼太郎の傑作小説「坂の上の雲」のクライマックスシーンとして有名である。
    私も手に汗握りながらあのシーンを読んだものである。
    それ以来日本海海戦には関心を抱いていたが、他にも同じテーマを扱った作品で良いものがあると聞いて本書にたどり着いた。

    非常に緻密な調査の上に成り立っている作品と感じた。
    これを読んでしまうと司馬さんの作品は、彼の評価している人物とそうでない人物の書き分けが極端で、小説としては面白くなるのだろうが、現実とは乖離してしまうの
    だろうなと思ってしまう。


    日本海海戦とは日本史だけではなく世界の海戦史においても類例を見ないほどの圧倒的な勝利であった事が理解できた。
    戦力的に不利な日本が損害において水雷艇3隻と引き換えにロシア海軍をほぼ壊滅させるという信じがたいものであったという。


    本書を読んでいるとロシア艦隊は、その長大な航海の途中、自分たちの空想の中で膨れ上がる日本海軍の脅威に終始おびえていたように思われる。
    その為に味方艦艇や他国の商船にみだりに誤射を行ってしまっている。
    いかに強大な戦力を持っていてもそれを充分に発揮できるかは扱う人間によるということが実感された。
    後、戦後日本人と言えば礼儀正しく、国難があっても暴動などが起らない自制のきいた国民性という評価が定着しているが、この本を読んでいると日露戦争の講和内容に
    不満の持った国民が暴動を起こしたりしている描写があり、戦前の日本人の気質と戦後のそれの違いが判り興味深かった。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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