羆嵐 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1982年11月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117133

羆嵐 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 事件を端的に知らせるような筆致なのに、序文からすぐに小説の世界へ引き込まれる。
    詩的な、感情的な表現を用いていないため、人々の非力さが却ってくっきりと際立っている。
    哀しい群像劇をじっくりと味わうことができた。

    また、自然の描写が美しく、しかも扱い方が上手い。
    淡々と綴られていながら、雪に閉ざされる北海道の荘厳な風景が目にありありと浮かぶよう。
    凄惨な事件の最中に描かれる、午後の渓流の牧歌的な雰囲気が、事件とのコントラストを強め、また日常の地続きで一連の事件が起きているということに対する恐怖を高める。
    『高熱隧道』でも感じたけれど、合間に差し込まれる過不足ない自然描写が、物語に一層奥行きを与えて、まるで映画を観ているかように思わせる。

    すっかり吉村昭の世界にハマってしまった。
    ただ事件内容を描くだけでなく、その後色々と考えさせてくれるのも良い。
    次も次もと読んでしまう。

  • 目線が定まらず少し読みづらい文章で難航しましたが興味深く一気に読了。ブックオフで108円だったので本棚に積んでいましたが、今年は熊出没が多いので手にしました。

    マンガや再現ドラマを数回見て事件内容を知ってはいたけれど、小説で読むと違った意味のこわさがあって戦慄してしまいました。

    『颶風の王』でも感じたけど北海道の自然の厳しさ、人間の存在そのものを吹き飛ばしてしまいそうなくらいの苛烈な環境。人は闖入者だった…という部分を身にしみて感じました。

    読んでいる間ずっと息をひそめて、茶色いものの正体が羆だと知っているにも関わらず、きちんと「羆」とわかるまで安心できませんでした。

    何もできない群衆が愚かに思えた。自分も群衆の中の一員に思えたりして風刺っぽいような一面もみえた。猟師の銀四郎が羆を仕留めた時はホッとしたけど、銀四郎の発言や対応を見ていると、銀四郎と羆が対話や同化しているかのようで鳥肌が立った。

  • 大正4年(1915) 北海道苫前村において、ヒグマ1頭によって
    起こされた大惨劇。
    実際に起きた事件を丹念に取材して書き上げられたもの。

    2日の間に、6人もの人間を殺して食べたヒグマ。
    それを斃すために、百数十名の男が、銃や武器を手に集合しても、
    なんの意味もなさない程に、強大な力を示すヒグマという生き物。

    ほんとに恐ろしかった。
    厳しい自然環境のなかで生きるのは、人間もヒグマも同様だ。
    自然のなかでは、人間もヒグマからみたら、ただの食べ物。
    狩りをして手に入れたらなら、全てはヒグマのもの、ということ。
    輝く雪の白さ、冷たさ、厳しさ
    禍々しく滴る血、黒い巨岩のごときヒグマの姿
    抑制され淡々と描かれているが、引き込まれる語り口。

    私は図書館で、文庫ではなく昭和52年発刊の単行本を借りたけど
    この装丁が、文庫本の比でないくらい、おっかない!!
    そこら辺に置いておいたら、その表紙でびっくりしてしまい
    慌てて裏返したら、背表紙もまた同じで、ひゃ~っと叫んで
    本を開いたら、中にもまた同じ画が~~~
    本文を補って余りある、強烈な装丁・・・
    暗がりが怖くなること間違いなし!

  • 北海道で実際に起こった熊害事件を基にした小説。事件の内容はWIKIの方が詳しくエグいです。この本は主に、羆に怯え萎縮してゆく村人たちの心理と、熊撃ち猟師の活躍にフォーカスしています。
    この頃の北海道の入植者って、藁小屋みたいなのに住んでいて、そりゃ熊もすっと入って来れるよね…って感じ。動物なので容赦なく、女子供から襲ってる点も怖いです。くま怖い。

  • 日本獣害史上最悪の惨事となった大正15年の三毛別羆事件を描いたドキュメンタリー。

    北海道の開拓村を襲った惨劇、羆の襲撃により二日間で6人の命が奪われる。

    羆の恐ろしさは、それが喰らった人々の遺体の描写に表れている。
    淡々語られるその様子は、これが本当にあった事件であると言う事を考えると身の毛もよだつ恐ろしさを感じる。

    この事件で、後半中心となる人物は猟師の銀次郎であろう。
    彼は、普段の素行から村人より忌み嫌われる存在であるが、この事件のさなか、人々が恐怖から冷静な行動がとれなくなっている中で唯一冷戦沈着に行動し、熊を追跡し最後にはこれを仕留める。
    人間というものは、本当に一面だけで判断できないものであり、簡単なステレオタイプ的なものに置き換えれないものであると感じる。

  • 羆の恐ろしさ。それと戦う人間の非力さ。北海道という未開の地で暮らす人々。その羆を殺すのは、嫌われ者の村人だった。

  • 実話を元にしたお話だけあってリアル感が漂います。熊の恐ろしさは現代の都会では想像つかないけど、これが昔、実際に起こったと考えるととても恐ろしくなります。銀じいさんがかっこいい。

  •  ヒグマの怖さが伝わる。登別の熊牧場でみる熊の大きさは尋常じゃない、あんなのが目の前に現れたら常人ならまちがいなく思考停止するはずだ。マタギは冷静にその熊を撃ち殺すわけだが、食うか食われるかのストレスを裏返すと病みつきになるのかもしれない。そう思うわたしは常人じゃなく、尋常じゃないのかも(笑

  • 小説にすべきかカテゴリに迷うところ。

    国内でもトップを争う凄惨な熊害事件を描いた作品。
    関係のノンフィクションなどと一緒に読むとすごくいい。苫前町史とかも併せてぜひ。

  • ヒグマの能力の高さと習性にひたすら恐怖。最終的に六線沢の集落は放棄されてしまうわけで、これは自然の側からしたら、一頭のヒグマが体を張って土地を守ったということになるのだろうか。知識がない人間は、自然の中では圧倒的に弱かった。

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羆嵐 (新潮文庫)の作品紹介

北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音…。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。

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