ポーツマスの旗 (新潮文庫)

  • 417人登録
  • 4.06評価
    • (51)
    • (67)
    • (36)
    • (1)
    • (1)
  • 48レビュー
著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1983年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117140

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
遠藤 周作
有効な右矢印 無効な右矢印

ポーツマスの旗 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 小村寿太郎、昔の人は自分自身を捨て、国のため、平和のために尽くした。 全く見返りを求めず。

  • ポーツマス条約にいたる交渉にのぞむ小村寿太郎をはじめ、日本外交団の軌跡と苦闘をドキュメンタリー風に描く。淡々と時間を追って経緯を描写しており、そんな感じだったのかと思う以上のことはないが、記録小説という意味でわかりやすく、不思議と頭に残っている。
    昔、NHKがドラマ化して、小村=石坂浩二、金子=児玉清、明石大佐=原田芳雄のキャストだったと記憶している。割と面白かったように憶えているので再放送してくれないかな。(笑)

  • 日露戦争終結のため、命を懸けたロシアとの交渉は、小村寿太郎あってこそのものだったのだと感じた。残念ながら今の外務省に小村的人物はいないのだろう。

  • 日露戦争の経緯と講和交渉時点の国情の無駄なく十分な描写の後に、アメリカはポーツマスにて日本の全権大使小村寿太郎がロシアの全権ウィッテと息詰まる講和交渉を展開するストーリー。決して報われることの無い仕事と分かっていながら日本にとってほぼ最善と思われる手を尽くし、精根尽き果て条約締結後数年で小村が病気に蝕まれ果てていく様は、日露戦争の危うい勝利を頂点として破局へと転落していく戦前日本の国家と民衆のその後の暗い行く末を暗示しているよう。そうした後の事情を抜きにしても、ポーツマスでの日本とロシアとの極限の交渉についての史実に基づく詳細な描写は、外交官はもちろん厳しい国際環境の下で働くビジネスマンにとっても読んで損は無い内容であろうと感じた。

  • 面白かった。日露戦争を終わらせるための講和会議である、ポーツマス講和会議の様子を、主人公・小村壽太郎の視点から描いた小説。

    作者もあとがきで書いてある通り、日露戦争、日本海戦を描いた「海の史劇」を執筆中に、講和会議団と国民とのズレに気づいて書き上げたとのこと。同じタイムラインに、同じ作者で、別視点の小説があるのは珍しい気もする。

    なぜ国民との間にズレが生じたのか。講和会議中にはどういった戦いが繰り広げられていたのか。どう決着をつけたのか。

    2冊を読んで、(吉村氏が描きたかったであろう)日露戦争に臨んだ時の日本のいびつな姿が見えるようになる。このいびつな状態はのちの太平洋戦争に繋がっていくのだろう。

  •  薄氷を踏んできた日露戦争の終幕を飾る外交戦。
     その事実を隠蔽してきた付けが日比谷焼き討ち事件(東京騒擾)につながり、それを糊塗するための方策が後の15年戦争の種となってしまった。そんな感慨が残る小説である。
     なお、今後、日露戦中から在米し、米国世論に対する日本への好意的目線の扶植に努力してきた金子堅太郎に注目すべきだろう。そして、彼らその役割を付与した意味も。

  • 落とし所を常に考えておくことを実践せねば。

  • ある意味「坂の上の雲」の裏番組ともいえる、ポーツマス条約における日本全権大使・小村寿太郎のお話。教科書で学んで結果はだいたい知っているし、その後の国内での反応も知っているわけではある。が、その交渉のプロセスが丹念に描かれていて、思わず引き込まれてしまった。戦争は始めるよりも終わる方が難しい、というのはよく言ったものだなあと思える一冊。

  • ポーツマスに行ってみたくなった。

  • 日本の危機的状況を救った影のヒーローなのに、当時の国民の理解を全く得られなかった不運の主人公である。
    彼の歴史的成果や苦労が手に取るように分かる良書なので、坂の上の雲とセットで読むべきだと思う。

  • 淡々とした筆致のなかに、日露両国外交団のギリギリの駆け引きが重く伝わってくる。講和成立でハッピーエンドとならず、日比谷騒擾事件の顛末まで叙述されていてとても痛々しい。「坂の上の雲」に加えて読むことができて良かった。

  • 今では日露戦争は、「坂の上の雲」にもあるように、日本が勝利したということになってますが、自分が中学生の時は「負けてはいないけど、勝ってもいない」と先生から教えられていた記憶があり、それが不思議でなりませんでした。

    今回その日露戦争後の講和条約(ポーツマス条約)を舞台にしたこの本を読んで、その疑問が解けました。

    ・日露戦争終結後の講和条約の日本側の全権大使は外務大臣小村寿太郎。ロシア側は蔵相ウィッテ。

    ・日露戦争における日本の味方は、日英同盟を結んでいた英国と、当時はまだ世界の警察ではなかったアメリカ。ロシアの味方は英国と対立していたフランスとドイツ。

    ・日露戦争に臨んだ日本は、最初から短期決戦で決着させるために、戦争が有利に展開しているうちに講和を持ちかけようと、アメリカのルーズベルト大統領にその仲介を依頼。世界への影響力を誇示したかったルーズベルトも、再三ロシアのニコライ皇帝に提案したが、ロシア側は最初それをことごとく拒否。

    ・しかし、203高地で有名な旅順が陥落し、その後奉天大合戦で惨敗し、バルチック艦隊が壊滅し、皇帝に対するレーニンによる共産主義勢力の革命の兆しも出ていて、ついに講和に応じることに。

    ・日本としては多くの犠牲者と戦費を費やしての勝利であったため、国民は賠償金や領土拡大に大きな期待を持って小村をアメリカに送り出した。しかし、日本軍にはこれ以上戦争を続けるだけの軍隊も、弾薬も、戦費もなく、日本政府としては一刻も早く講和に持ち込みたかった。

    ・一方のロシアは、海軍は全滅したとはいえ、陸軍はまだまだ精鋭が健在で、続々とシベリア鉄道を使って援軍を送り出している状況で、ニコライ皇帝がウィッテに伝えた講和の条件は「ロシアの一にぎりの土地も、一ルーブルの金も日本に与えてはいけない」。

    ・こうして始まった講和条件の話し合いは難航。日本が求めた、日本政府の韓国への政治的保護政策の実施や満州鉄道の権益にはロシアも同意したものの、日本への領土分割と戦争賠償金については全く譲歩せず。

    ・交渉当時のロシアは、戦争継続のための準備を進める一方、国内では革命の機運と同時に戦争反対の機運も高まったいる状態。日本は戦争継続も辞さずという世論が熱を帯びる一方、戦争を継続する戦力が殆どない状態。

    ・結局このチキンレースは、ロシア皇帝が「樺太の南半分は割譲してもよい」と譲渡し、決裂寸前、戦争再開寸前で講和は成立。

    ・この結果、賠償金を放棄した日本は「平和を尊ぶ人道国家」として世界で称賛され、この講和を斡旋したルーズベルト大統領はノーベル平和賞を受賞。

    ・しかし、日本国政府から、戦力がもはやない、ということを知らされていない日本国民(戦力がないことを公表すると、ロシアが一気に攻めてきて、日本軍は壊滅すると政府は予想)は、軟弱な外交交渉を行った政府に反発。全権大使小村寿太郎の自宅は焼き打ちされ、各地で暴動がおこった。また、そんな講和条約を斡旋したアメリカにも強い不信感が生まれた。

    ・一方、アメリカ国内においても、あの大国ロシアを打ち負かした日本に対して急激な警戒感が生まれ、これが後々、日米を戦争に導く火種となった。

    というのが、ポーツマス条約が締結された背景であったようです。全権大使の小村寿太郎は、最初からこうした結論を予想し、国民から激しい非難を受けることを覚悟したが、戦争を終わらせるため、国のためにあえて臨んだということで、こうした人物が日本を救ってきたんだなと、またひとつ納得。

  • 日露戦争講話会議全権の外相、小村寿太郎を描いた作品。
    彼は日本の存亡を賭して、身を削って講話会議の妥結を勝ち取った。
    「 日露戦争でもあきらかなように、資源のかぎられた島国の日本では、軍事力には一定の限界がある。人口五千万の日本人の団結心は強く将兵の士気も高いが、大国と戦争するには人員が少く、物資も枯渇し、長期戦には堪えられない。 」日本の国策上、外交が重要なのは今も昔も変わらない。

  • 坂の上の雲に見るような戦争の功労者を英雄視するのは容易いけれど、本当の英雄とは、自らの覚悟と知恵を武器に国の平和と未来を勝ち取った小村寿太郎のような人だと思った。

  • 〜14.4.4条約を結ぶまでが戦争だよ。坂の上の雲では終われない日露戦争の先を詳しく知れる。国の交渉の行われ方も興味深い。妥協点や譲歩、捉え方を変えるなど微妙なやり取りが面白い。

  • 日本が開国列強国へと進む中強烈な自制心をもって国に尽くした男の物語。私生活は幸せとは言えずも信念の人、もっと評価されてもいい人だと思う。韓国から見ると暗殺された伊藤博文と並ぶ憎むべき対象だったはず。伊藤は暗殺、小村は壮絶な病死…国に命を捧げた男達だ。安重根も韓国から見れば命を捧げた人物、が、日本には列強に比べてもまったく引けを取らない優秀な人物が多く排出した。一体この小国にどうしてこんな多くのエネルギーが隠されていたのだろう。

  • 日露戦争の後片付けだとおもったら どうしてどうして、面白いですね。剣を持たない戦争。
    小村寿太郎は食えない感じでした。それがいい。
    条約締結後の日比谷騒動、伊藤博文暗殺、日韓併合などが流れるようで興味はつきません。
    日露から大平洋戦争までの知識をバチっと埋めたいです。

  • 父から昔から勧められていた作品。吉村昭らしく淡々と書かれているのだが、国家の大きな曲がり角をクロージングする大役を、ある意味負け戦覚悟で挑んでいく主人公の姿・心境、交渉におけるスリリングなやりとりが鮮明。文体が古いので読みにくいかもしれないが、慣れてしまえば手に汗握る描写に吸い込まれて、あっという間に読了してしまうでしょう。

    吉村昭は膨大な取材をもとに作品を書いていると聞いたことがあるが、歴史の中に散らばった情報を繋ぎあわせて再構築し、ここまで惹きつける「物語」に仕上げてしまうところに魅了される。

  • 著者吉村昭は小村寿太郎のポーツマス条約交渉の経過を丁寧に描いた歴史小説。
    明治から大正にいたるこの時代の政治家は日本の将来に対する責任感とリアリティを持って、非力な日本を舵取りして来たということがよくわかる。

    この後日本は無責任な政治家・軍人によって散々な目にあうのだが、志やビションを失った国や組織は劣化するという事だろうか?

  • 熱狂する群集に見送られて米国へ出発する全権大使・小村、その胸には帰国した時にはその全く正反対の群集が待っていることを予感していたという。その歴史が100年を超えて吉村昭により、生々しい現実として蘇ります。小村の家庭から始まりその人となりが明らかになるとともに、ウィッテとの交渉は息詰る迫力により描かれています。交渉が纏まった時の小村・ウィッテ双方の頬が緩みそうになるという記述はまるでその場面に居合わせたかのように生き生きと再現しています。ポーツマスのその部屋を探訪する研究熱心さが生んだ賜物です。礼拝に出席し、ポーツマスの人たちに親近さを感じさせ、味方に引きつけようとする日露代表。フランス語が話せることを隠し。和平交渉成立後、流暢なフランス語でウイッテに話しかける小村の姿。ルーズベルト大統領とその親友・金子堅太郎のドイツ皇帝からの親書を巡っての駆け引き。その他、国の存亡をかけた彼らの人間ドラマです。そして和平成立後、日米の精神的な隙間が広がり、日米対立への伏線が見え、日露戦争から15年戦争までの期間が以外と短いことを改めて感じることになります。

  • [翻った忍耐の証]陸海の両面で大戦となり、多くの人命と資材が費やされた日露戦争。両国共に戦争継続のための能力に陰りが見られる中、アメリカ大統領ルーズベルトの仲介の下、ポーツマスにて講和会議が開かれることに。のっぴきならない調整の結果、決裂間近で結実に至った会議の模様、そして日本側全権の小村寿太郎らを始めとする人々に焦点を当てた歴史小説です。著者は、『破獄』や『ふぉん・しいほるとの娘』など、多くの歴史の一場面に光を当ててきた吉村昭。


    外交交渉をつぶさに、そして臨場感をもって読者に追体験させるという小説は珍しいのではないでしょうか。息詰まる交渉はもちろんのこと、それを取り巻く会議への参加者やポーツマスの様子など、漏らすことなく往事の雰囲気を伝えることに成功していると思います。特に後半、会議決裂かに思われた段階からの両者のつばぜり合いには、結末を知っている後代の私たちが読んでも興奮を覚えること間違いなしです。


    小説ではあるのですが、あまりに緻密なため、一つの外交のテキストも読めてしまうのではないかと思います。会議に至るまでの周到な準備、仲介者との間での細かな連絡・報告、そして「敵」にすらなりかねない交渉相手との信頼など、(参加したことはまだないのですが)現在の交渉の実態にも近いものがあると思います。交渉の内幕というのはあまり表に出てこないと思いますので、そういった意味でも価値ある読書体験でした。

    〜歴史の浅い日本の外交は、誠実さを基本方針として貫くことだ、と思っていた。列強の外交関係者からは愚直と蔑称されても、それを唯一の武器とする以外対抗できる手段はなさそうだった。〜

    それにしてもルーズベルトのあの仲介にかける意気込みはどこから来ていたのだろう☆5つ

  • 某戦国さんが私は小村寿太郎だ!といってたのがほんと笑い話だ。この人が今日本にいてくれたらパンダの国やキムチの国相手にどんな外交をしただろう⁈

  • 浪人時代の日本史の先生が「読むべし」と薦めていた本。
    先生がそんなこと言うのは珍しいので強烈に覚えていた。
    大学4年にしてやっと読了。ちなみに初の吉村昭。

    舞台は日露戦争講和会議。
    主人公は日本全権・小村寿太郎。

    小村とロシア全権ウィッテ、そしてアメリカ大統領ルーズベルトそれぞれの「かけひき」……
    「外交」そして「政治」とはどういうものなのかをかいま見れて非常に面白かった。
    “日露戦争・ポーツマス条約・小村寿太郎”
    受験生にとってはこの程度の暗記項目でしかないものに
    ここまでの大河ドラマがある。だから歴史は面白い。

    明るくないと思わせていたフランス語が実は堪能であることを、条約締結後に小村がしれっとウィッテに見せつける場面。
    ここが一番かっこよかったね。

  • 交渉にあたってロシア代表のウィッテは新聞にさかんにアピールして自国に有利なアメリカ世論作りに腐心したのに対し、日本の小村寿太郎は同じような真似をするのを避けて誠実に交渉するのを心がけた、というあたり、日本の対外交渉の体質なのかと思わせる。
    それに不満を持つのは他ならぬ日本国民だったわけで、外交のプレーヤーは国民も入っていることを改めて教える。

  • 日露戦争終結のためにポーツマス講和会議に臨んだ小村寿太郎を描いた歴史小説

    日露戦争では日本軍は勝利を重ねていたわけですが、長期戦になると人手や資源が圧倒的豊富なロシアにはかなわない、そのために不利な条件でも絶対講和は成立させなければいけないわけですが、勝利に沸く国民には、戦争継続を望む声も多く、小村は国民の批判を覚悟の上で臨んだわけです。こうした彼の覚悟とともに、小村を必ずしも英雄として描くだけでなく、家庭人としての彼の姿を描いているあたりも、詳細にその人物や事件を調べ上げ小説に昇華させる吉村さんの徹底した取材力を感じさせられました。でもそのおかげで小村寿太郎の人間臭さも感じることができたと思います。

    講和会議でのロシア側のウィッテとの駆け引きはかなり緊迫していて引き込まれてしまいます。日本は日本で自国の弱みを見せずに結果を得ようと苦心するわけですが、ロシアもロシアで革命の兆しや戦争継続派の圧力などがあり小村、ウィッテともに戦争の終結を望みながらも、それが上手くいかない様子、どこまで譲歩しどこを譲らないのか、日本、ロシアそれぞれの巧妙な作戦などなど、講和に対しての人々の熱い思いを感じることもできました。

    敵国同士でありながら、この講和に参加した人々の最終目的はよくよく考えると同じなんですよね。そう考えるとなんとも不可思議な気持ちにもなりました(笑)敵でありながら、ある意味戦友でもあるこの二人の関係についてもついつい考えてしまいます。

    日露戦争ではこうして冷静に戦況を読むことができたのに、太平洋戦争ではどうして勝ち目のないままズルズルと戦況を引きずって行ってしまったのか、とふと思ったりもしました。

    それにしてもこれだけ熱意を傾けて外交をやった人ってほとんどいないのではないでしょうか。現代の政治家にも見習ってほしいものです……

全48件中 1 - 25件を表示

ポーツマスの旗 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ポーツマスの旗 (新潮文庫)の作品紹介

日本の命運を賭けた日露戦争。旅順攻略、日本海海戦の勝利に沸く国民の期待を肩に、外相・小村寿太郎は全権として、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側との緊迫した駆け引きの末の劇的な講和成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の憤激を呼び、大暴動へと発展する-。近代日本の分水嶺・日露戦争に光をあて交渉妥結に生命を燃焼させた小村寿太郎の姿を浮き彫りにする力作。

ポーツマスの旗 (新潮文庫)のKindle版

ツイートする