- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101117164
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
終戦後の戦犯による罪を避けながらと逃避する琢也の葛藤を描いた作品。この難しい問いを淡々と詳らかにする著者の筆致は、相変わらずスゴイ...。戦勝者と敗北者の視点から綴られる記録文学。戦争を知らない世代は取り敢えず著者作品に触れてみよう。きっと気づけるものがあるはず。
-
戦犯容疑者として追われる元将校の心の葛藤がとてもリアル。死罪に怯えながらの逃避行に息が詰まった。戦後処理を通して正義とは一体何かが問われる。価値観逆転による混乱の大きさは戦後生まれには想像もつかないが、トップの責任逃れやら、メディアの手のひら返しやらはいつの世も変わらないなと…。
-
戦争の終結とともに日本人の価値観がガラリと変わった。アメリカ兵を殺害した将校の闘争劇。
-
戦犯者琢也の逃亡の様子、琢也の気持ちの変化の描写どれも吉村昭さんの作風にどんどん引き込まれて、一気に読み終わりました。まだまだ知らなかった戦争の事実が様々な小説に沢山あり、これからも少しずつ読んでいきたいです。
-
戦争に勝てば英雄。
負ければ戦争犯罪容疑者。
そして、敗戦後、数年して空気が一変して戦争被害者へ。
戦争とは、何なのか。
戦争の為に国民を洗脳し、戦わせる。
国と国が争って、負ければ個人へ責任を擦り付ける。
こんなことがまかり通っていいのだろうか。
こんなことに青春を奪われた若者が可哀想だ。 -
海と毒薬のB面というか(亜流という意味ではなく)、戦争犯罪人のひとつの形。
海と毒薬ほどテーマに奥深さが無いことが、逆に作品を何故書かれなくてはならなかったのか?を感じる。 -
P248
-
吉村昭の作品は本当に外れない。
こぎみ良いテンポとそれでいて非常に重苦しい雰囲気が絶妙に交わり独特の作風を際立たせている。
戦争を反省するための学びの本にもなれば、思想的な部分では、ある種の戦犯への同情的な心理を呼び起こすことで国家主義的な情念も駆り立てられうるため、読者側の心情もかなり複雑になり、動揺させられる。
吉村昭の得意分野である逃亡や漂流における主人公の孤独な内面性、葛藤をこの作品もまた緻密に描き出している。
正義とは何か、それは絶対的なものではなく、あくまで時代状況や国家間の関係性に左右される相対的なものでしかないことを断定する教育的利用価値のある作品である。 -
無差別な空襲から怒りを覚え米捕虜を処刑。官憲から逃亡生活に入る。雰囲気で裁かれ、時の流れで変わる判決、運で転ぶ人生に冷めた境地に達する。2015.11.28