破獄 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1986年12月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117218

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破獄 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 吉村昭、最高。
    文体は固く、頁数が多く、ストーリーの起伏は少なく、終始淡々と綴られる語り口は一見退屈に思えてしまうが、なんのなんの夢中になってる自分がいる、、、というパターンを繰り返すこと、はや4回目(笑)。

    実話を下敷きにしている・・・しかも、トレースしてるレベルで、という点も大きいのだろう。


    さて、本編の感想。
    脱獄するか、させまいか、との攻防よりも、府中へ移管されてからの部分に特に心引かれた。

    むろん、作中にもあるように「疲れた」という佐久間の感想も大きな要因のひとつではあろうが、府中刑務所長の英断に心打たれた。

    彼は教育者の道を選んだとしても大きな仕事をなし得たのだろうと思った。

    ★4つ、9ポイント。
    20170705

  • 吉村昭作品を読むのはこれが3作目。少ない読書経験ながら通じて思うのは、観察・叙述の人だなと。脱獄モノだからとスリルを期待するのは間違いで、脱獄者と脱獄される側と監獄という機構を通して、太平洋戦争前後の日本の社会と日本人を”記録”している。佐久間と看守たちとの攻防…ではあるのだけど、その合間合間に入ってくる当時の社会機構、監獄を取り巻く組織、収容人数、死者数、食事量、奉仕など勤労活動などの記述のほうが頭に残っている。佐久間はじめ登場人物の心理状態を内側から描かないので、やはり生き物を観察して記録してるみたい。佐久間が4度も逃げ出した理由は「寒さに耐えがたかったから」と私は思っているのだが、そこもとても動物的な動機、動機というより生存本能。それが後半、府中の刑務所に移される頃から、人間の物語に変わっていく。佐久間に最も影響を与えた府中の鈴江所長が印象的だが、札幌からの移送を担い、佐久間の誕生日にリンゴを与えた看守長たちも心に残る。後半の佐久間が心を開き落ち着いていく場面はなんだか寓話のようで、そういえば当時の社会の描写も減っている。戦前・戦中の個人の人間性を否定する閉塞的な社会から、戦後民主主義の人が人として存在できる開放感をあらわしているってことなのかな?吉村作品は、ついノンフィクションとして受け取ってしまう危険性もあり、こういうファンタジックなエピローグを「人を信じることが大事だよ」みたいなメッセージだと受け止めたらいいのか、なんかもやっとしました。

  • テレビで見たことがあった気がする。どんな牢獄であっても、あらゆる知恵を振るい、脱獄に成功する無期刑囚の話だ。味噌汁で鉄を腐食させる所なんかは、有名だ。そうか、これが、その話なんだ。一気に読み進む。

    どんな獄も破ってしまう囚人。時代は戦時から戦後。時折戦争の風景も混ざる。さて、そんな囚人をどのように縛り付けることに成功したのか。

    読んでのお楽しみ。実話に基づく話である。

  • 戦中戦後の脱獄物語です。脱獄というと、アメリカ映画のノリと勢いのイメージが強いけれど、この話は淡々と人の動きに加えて時代背景や刑務所の様子、社会情勢も語られるので、読みやすいし、テンションが高くなくてよかった。囚人たちの方がしっかりご飯を食べられていたために、看守よりも体格がよかったり、そもそも待遇が良くなくて看守が集まらなかったりしたところとか、戦後の混乱で罪もなく殺された人がたくさんいて、元囚人が天寿をまっとうするところとか、いろいろ考えてしまう話でした。よかった。

  • 昭和史の脱獄王佐久間清太郎。戦時の時代風景とともに綴られる刑務所がリアルに語られる。
    刑務所は、何のためにあるのか、懲役とは何なのか考えさせられる。

  • 脱獄王佐久間と刑務所との攻防が臨場感があって面白かった。戦時中の刑務所のことや戦後復興史としても興味深く、戦争の知らなかった一面を知った。一気に読める。

    ゴールデンカムイの白石のモデルだよ!
    小説なのでどこまでが創作なのかは分からないが、これは漫画に出てくるあの話の元ネタかな?と想像しながら読むのもまた楽し。

  • 印象的だったのは、囚人にたっぷり主食を与えて反抗心を失くさせるという方針。
    確かに、食べ物をくれる人には逆らえない。人間も動物と一緒だなー。日常でもよく見かける光景だ。

  • 読了語、唸った。深い息が自然とついて出た。物語の世界に浸った。

    4回も脱獄を繰り返したという、実在した男をモデルとした小説。

    「あとがき」に、「十七年前(註:昭和54年)、元警察関係の要職にあった方から、脱獄をくりかえした一人の男の話をきいた。警察関係者とは作中の桜井均(仮名)であり、一人の男とは私が佐久間清太郎と名付けた人物である」とある。

    資料を基に大きく肉付けしてあるだろうが、ノンフィクションでなく、フィクションに仕上げた作者の筆力は、さすがである。
    会話文もかなり少なく、淡々と男や看守の心理描写が描かれ、緊迫感がある。


    男は、その並々ならぬ監獄の壁を破り、「容易ならざる特定不良囚」と呼ばれる。
    その体力もさることながら、洞察力、判断力、忍耐力が尋常でない。
    ある看守長の言葉のように、まさに「その類稀なる智力と体力を、他のことに向ければ、何事かを成し遂げられた男になった筈・・」である。

    ただ、脱獄を繰り返した男の話だけでなく、脱獄と戦前・戦中・戦後の時代と重なり、当時の時代背景なども知れる。
    (二・二六事件のあった年から「男」の脱獄が始まる)

    戦時中の食糧難と囚人の死亡者数、あるいは、時に一般人よりも栄養に恵まれた食糧を食べることができていたこと、…。

    物語の最後は、少し感情的に流されそうな部分もあるが、人情話で終わるのでなく、淡々と「男の物語」は終わる。それがよい。


    読み応え、充分にあり。

    新潮文庫なので、「ナツイチ」に入れてもいいのではないのかと思う一冊であった。

  • 戦争の時代背景とリンクさせながら、実在した脱獄犯と看守たちを描いている。すべて仮名でフィクションでありながら、実在した人物や時代を描いていてノンフィクションでもある感じがなんとも不思議。脱獄に対する犯人と看守の心理戦が面白い。

  • 戦前から戦後にかけて四度の脱獄を行い、難攻不落とされた網走刑務所からの脱走にも成功した脱獄王:佐久間清太郎と、看守、警察官等との攻防を描いた作品。

    著者の吉村 昭氏は、史実や証言を徹底的に調査、検証し、事実をどこまで追求した作風で知られているが、本作でも勿論その緻密さは健在。

    本書はただの脱獄小説には留まらず、太平洋戦争の戦況を通して、戦中から敗戦〜占領下での刑務所事情、そして社会情勢も詳細に描かれており、一つの戦記小説としても機能している。

    以前に同著者の「漂流」を読んでいるが、吉村氏の徹底した事実追求による、感情や想像を排除した迫真の文体は、ノンフィクションが持つ緊迫感とどっしりとした読後感を与えてくれる。

    吉村氏にかかるとフィクションとノンフィクションの境界線は消滅する。凄いお方です。

  • 第二次大戦を挟んで4度の脱獄を果たした主人公を軸に、戦中・戦後の刑務所史を見渡す記録小説。

    無期刑囚・佐久間が最初に投獄されたのは準強盗致死の罪を犯したためだった。昭和11年、青森刑務所で服役中に脱獄。その後、特定不良囚と称され、厳しい監視を受けつつも、昭和17年に秋田刑務所から、昭和19年に網走刑務所から、昭和22年に札幌刑務所から逃れ、計4度の脱獄を果たした。

    超人的な体力を持った彼と刑務所看守の息詰まる知恵比べも読ませどころだが、時代背景の描き込みもまた読ませる。開戦に向かう時代の空気、戦時中の混乱、戦後の窮乏が綿密にすくい取られ、その中で刑務所はどうやって機能してきたかが詳述されている。
    囚人たちが軍用道路建設に奉仕したこと、また環境は厳しいが農場があったため、食料事情は比較的よく、窮乏下での囚人死亡者数も少なかったことなど、佐久間が多くを過ごした北海道の刑務所事情に稿が多く割かれている。
    また、戦闘を予期して囚人を避難させようと奔走した所長が奔走した沖縄刑務所、空襲で焼失した全国各地の刑務所。戦後、看守不足により、囚人を補助員として雇ったがために集団脱走事件を起きた静岡刑務所。
    進駐軍の圧力におびえる刑務所員の話も興味深い。
    詳細な描写からこの時代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。

    佐久間自身を描くのではなく、看守や所長などの周囲の目から浮き彫りにしていく描き方もおもしろい。線描ではなく、背景を塗り込めて浮かび上がらせているようで、佐久間の得体の知れなさがより印象づけられている。
    タイトルに「脱獄」でなく「破獄」を用いたのも、佐久間の不敵さを感じさせる。
    最後には温厚篤実な刑務所長に出会い、刑期を軽減されて出獄を果たした佐久間だが、どこか、闇の気配を残した幕引きと感じさせる。


    *緒形拳主演でドラマ化もされたらしい。いつか見る機会があれば見てみたい。

  • 脱獄を繰り返した男の小説と聞いていた。どうやったら?という興味をもって読み始めたが、この小説はそれだけに留まらず、戦中戦後に刑務所がどのような状態であったのかや、看守や囚人の関係、などとても興味深いことばかりで、読みごたえ十分、おなかの底にずっしり残るような話だった。佐久間清太郎その人間の不思議さ。人生の悲しさ。終盤、泣けてしまった。思っても見なかったこの小説の深さに、名作と言われる作品をやっぱり読んで良かったと思った。

  • 昭和11年から22年にかけて、計4度の脱獄を成功させた佐久間清太郎の人生を描くノンフィクション。

    4度とも異なる脱獄方法もさることながら、看守を心理的に追い込むプロセスはヘタなミステリーよりも緊張感がある。こんな超人が戦時中にいたのか。

    そして、この小説の最大の見せ場は彼の脱獄シーンではなく、なぜ彼が5度目の脱獄をしなかったのか。それに尽きる。

  • 相変わらずこの人の本は話がどこに向かっていくのか想像できず、ページをめくる手が止められない。途中で実話なんだか作り話なんだか分からなくさえなってくる。

  • 吉村昭にしては長かったので時間かかってしまった。

  • 刑務所から見た 昭和史としても 読める。脱獄犯を英雄視するのではなく、記録文学のように 淡々と記述されている

    ひとつひとつが細かく描かれているので、フィクションには感じないし、本の中で、看守や脱獄犯を追体験できる

    なぜ海外逃亡を図らなかったのか。脱獄に 価値を見出していたのだろうか

  • 看守たちと、一人の囚人の戦いの歴史、とでもいうような内容。
    現代の刑務所でも同じように脱獄できるのだろうか?と思った。
    人は抑圧されれば反発したくなるものなのだなぁ。

  • 「脱獄」、その一点に向かって、人生で一番充実した時期を費やした男の物語。
    「その類稀なる智力と体力を、他のことに向ければ、何事かを成し遂げられた男になった筈・・」と看守長に言わしめた器量は、本当に計り知れないものがあります。
    厳戒態勢の守衛の中、看守官との心理戦に於ける巧みな勝ち抜き方は、最近巷にあふれている「絶対負けないブラック心理術・・ホニャララ~」のような書籍なぞを読むより、よっぽど迫力とリアル感と実践性が高いと思います。

    その手の本読むより、小説読もうぜ。

  • 網走刑務所を脱走した白鳥由栄の物語。4度の脱走を繰り返した白鳥だが、それは刑務所の看守への恨みなどからによるものであろうか。本当に親身になって自分のことを考えてくれた人間にはホロリと来る性格だったようである。それは彼の出自にもよるのだろう。
    著者のノンフィクションは、本人になりきって物語が進むのではなく、淡々と白鳥の行動を、記録などをたよりに綴っていくものである。自分としては、多少のフィクションというか、想像をまじえながら、本人になりきって物語が第一人称で進む方が好みなので、★2つ。

  • 実は他書とタイトルを混同して間違え買いしちゃった本なんだけど、本当に面白かった( ´ ▽ ` )ノ。
    セリフが極端に少なくて、普通の小説の倍くらい時間がかかったけど、一行たりとも読み過ごせなかった( ´ ▽ ` )ノ。

    単なるプリズン・ブレイクのコンゲームとしても面白いんだけど、戦中戦後という特殊な時代背景がドラマに厚みを加えている( ´ ▽ ` )ノ。
    戦時中の監獄事情なんて、今まで考えたこともなかった( ´ ▽ ` )ノ。

    すごいね、これ( ´ ▽ ` )ノ。
    佐久間清太郎(仮名)という伝説的人物が、昭和58年という、つい最近まで(シャバで!)生きていたという事実に衝撃(゚д゚)!。
    こういう「超人」を特殊機関に採用していれば……とは誰しもが思うところだけど、そうはいかないのが世の常なんだよね(´ェ`)ン-………。結局、脱獄犯の才能は脱獄以外には発揮されないもの(´ェ`)ン-………。

    人情にホロリ改心、というテンプレのオチに必ずしもオトさない、ドライでリアルな叙述に感服( ´ ▽ ` )ノ。

    ブクログにレビューがたくさん載っていたんでホッとした( ´ ▽ ` )ノ。
    さほど有名じゃない作品でも、みんないいものはいいと、ちゃんと分かっているんだね( ´ ▽ ` )ノ。

    2016/03/22

  • (プレゼント本:茂樹さん)

  • 読み応えあった。

    先日読んだ、福岡先生のエッセイ集で映画・小説の脱獄モノの話の中で、先生がベスト3に挙げたことから、興味を持って、早速読んだのだが、なかなかにスリリングで楽しめた。

    実在の囚人を題材に描いているのだが、当時脱出不可能と言われた網走刑務所を脱獄したのを含め、生涯に4度も脱獄をおこなった佐久間清三という男の執念と頭の良さに恐れ入った。
    第二次大戦期の時代背景・社会背景を描きつつ、看守と囚人の息詰まる攻防戦をスリリングに活写していて、いつの間にか佐久間に心情が傾いている自分がいるのだ。

    北風と太陽の話ではないが、思い通りに人を動かすために強い圧力をかけてもあまり意味がないことをこの本で再確認した。

    ちなみに私の大好きな脱獄ものベスト3は……
    1位「穴」ジャック・ベッケル監督
    2位「ショーシャンクの空に」フランク・ダラボン監督
    3位「アルカトラズからの脱出」ドン・シーゲル監督

    あれ、小説が入っていなかった!

  • 刑務所の中の出来事だけでなく、戦時中の世の中の様子、事件なども描かれていて、現実味を帯びていた。戦時中、囚人の方が看守よりも良い物を食べていたことには驚いた。看守って本当に大変そう。鈴江所長の話を読み、刑務所とは囚人を閉じ込めておく施設ではなく、囚人を更生させる施設なのだと思い出した。

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破獄 (新潮文庫)の作品紹介

昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和23年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。

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