脱出 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1988年11月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117249

脱出 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • はじめの「脱出」を読んで、素晴らしく良いとは感じなかったので表題作がこれくらいでは、他もそんなに大したことないのかも…と思いつつ読み進めると、この本のコンセプトが「脱出」というタイトルに象徴されていることがわかり、様々な人々を描きながら、一本の太い棒のようなものが貫かれていることに感心する。バラバラに読むよりまとめて読んだ方が、作者の言わんとすることがよくわかる。そういう意味で良い短編集である。
     戦中戦後に、直接戦闘にはかかわらなかった子どもや僧がたとえ命は失わなかったにしてもどのように心身に傷を負ったかが、情緒を排した文章で描かれる。
     特に児童労働と、労働させる人々を描いた「鯛の島」、生き残った人々の海上でのサバイバルがすさまじい、対馬丸を描いた「他人の城」が印象に残った。
     感情移入してすらすら読める本ではないが、日本文学として若い人にも読んでほしい作品。こういう作品を読む力が近年著しく失われているのではないかと感じているので。

  • 吉村昭の3冊目。

    硬質な文章であると思うのだけれど、自然の描写が美しく……、その美しさ故に、描かれている時代の悲惨が、より際立ってくる・・・。

    「鯛の島」
    ・・・なんともやるせない。敗色濃厚な戦況が国民には隠されていたということ事態は、歴史に疎い自分にも周知の知識ではあったけれど、その隠蔽のためにあんなことが・・・。

    「他人の城」
    ・・・巻末解説文で「神の名によって許されさえする」と描かれた、極限状態での選択……。
    生き残った後に心を保てるのかどうか?
    ・・・自分だったら?・・・
    平成日本に生きる我々には、想像すらできないな。

    「珊瑚礁」
    ・・・その“地獄”を生き延びた人達が実在したのだよね。
    ・・・その彼ら、彼女らが、高度経済成長に浮かれる日本を、どんな気持ちで生きたのだろうか。そして、平成日本をどう見るだろうか。

    ★4つ、8ポイント。
    2016.12.27.古。


    ※子供の頃、夏になると「火垂の墓」などを授業で見せられた記憶が。金曜ロードショー等でも、夏になるとよく流れていたかと。たしか中学生くらいの頃だったかと…。

    中学生に「火垂の墓」も、、、まあいいけど、、、、

    本書を、高校生の必読図書指定してもよかろうかと思った。

  • 第二次世界大戦、終戦ごろを舞台にした、民間人の生と死を描いている。

    小説だけれど、この5つの短篇に描かれていることは、本当にあったかもしれない。
    あるいは、筆者が人から見聞きした、または筆者自ら実際に
    見聞きし、肌で感じたことが大いにあるだろう。


    特に「玉音放送」の前と後の人々の感情のありようは、戦争を知らない世代にとって、知らないことばかりだった。


    個人的には、沖縄が舞台の「他人の城」、サイパンが舞台の「珊瑚礁」が胸に刺さる。

  • 面白いんだけど、良くも悪くも小説なんだなあ、と思った。

  • 第二次大戦において民間人の生と死の修羅場を描いた5つの短編。屍体を物としか感じず、他人のことをお構いなく般若となる。取材による事実なのだろう。後世に残すべき小説。2016.1.31

  • P249

  • 「脱出」「焰髪」「鯛の島」「他人の城」「珊瑚礁」を収録。離島で戦争にあった少年たちの戦争体験記、といったようなもの。
    しかし、単なる体験記にとどまらないのが、吉村昭の作品の見事なところ。
    戦争の影響が比較的少ない場合が多かった離島にありながらも、戦争に段々と巻き込まれていった少年たちの姿が見事に描かれている。

  • 住民を巻き込んで戦場となった場所もあれば、
    「鯛の島」のように取り立てて被害のない場所があったことにはちょっと驚きでした。
    島に連れて来られた少年たちはその理不尽さを目の当たりにしたのだと思うと
    その行き場のない憤りが伝わってくるようでした。

    本書はどの話を読んでも「日本の敗戦」という事実から目を逸らせなくなります。

  • 淡々としているからこそ、恐ろしい。
    自分だったらどうなるのだろうとつい考える。
    気づけば自分も登場人物たちと同じ時間軸に立ってしまっている。

  • 終戦直前から終戦直後の戦いの中の少年を掌編で纏めた一冊。スタートは樺太の住民の少年がロシア軍の進行で北海道にたどり着き苦労しながら生きていくさま。中でも沖縄からの疎開船対馬丸に乗り、母・弟・妹ともに潜水艦の攻撃で沈没。死の海の中を弟とともに生き延び、戦後沖縄に戻る少年の姿は痛ましい。まず沖縄で戦闘要員として戦っている中学の同級生達に引け目を感じ船に乗り込み、攻撃を受け沈没での人間性(自分だけの気持ち)、疎開先の宮崎での地元住民からの蔑視。沖縄に帰ってからの米軍の好き放題。結構読み応えがあった。

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