長英逃亡(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117256

作品紹介・あらすじ

シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて5年、前途に希望を見いだせない長英は、牢屋主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄絶な追跡をはじめる。

感想・レビュー・書評

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  • 幕府の政策を批判して収監された高野長英が脱走してからの逃走劇を描く。

    逃走生活は長年にわたるが、そのあいだに長英は色んな人を頼る。人は一人では生きていけないし、いざという時に頼れる人がいることの大切さが分かる。
    若干長くて、読むのに体力を要した。

  • 火事による切り放し、義務付けられた3日以内の回向院への集合。知己の人を訪ね歩く。もちろん、戻る気はない。放火は長英の策略。始めからの計画。しかし、読者は葛藤に駆られる。戻って欲しいとも思う。もしかしたら寛大な処置が得られるかもしれない。言い含められ火をつけた栄蔵は後に捕らえられ火刑。逃亡中匿ってくれた隆仙は拷問を耐え抜き、元に戻らない体に。後少し待っていれば、厳罰を強いた町奉行耀蔵は左遷される。不当な裁きでも従うべきだったのか。個人の視点だけではなく、歴史的見地からも考えたい。逃避行は続く、下巻へと。

  • 現代に事実を知っているだけに、非常に読むのが辛く、苦しかった。

    氏いわく、「事実と事実の間を埋めて行く資料が乏しい中で。考えをめぐらす作業の辛さ、面白さを語っている。が、これほどまでにリアリティに迫る文学があるだろうかと息をのむ。

    間道、街道が好きでちょくちょく行くことが多い為、場面と人の息遣いを想像しながら読んだためになかなか進まなかった。

    蛮社の獄による処刑としか習っておらず、1850年という時間にさらし首になった彼。逃亡の時間は13年。科学のツールが無い現代とは違うとはいえ、捜査から逃れる我身を守るツールもない。灼熱、豪雨・暴風、極寒積雪、そして捕縛に寄与するミラ美との目と口から逃れる全てが描かれている感じ。
    上は上州・信州・越後への旅。山歩きで少しは知っているエリアだけに、わらじで着物で歩くその姿、食事の粗末さ、体力に驚嘆するばかり。

  • 吉村昭が描く、逃亡物語は、本当に息が詰まるような緊迫感で、リアリティがすごい。
    どんな取材をすれば、ここまで迫真迫る物語が描けるのだろうか。
    他にも、逃亡を描いた物語にも当てはまる。
    物語にグッと引き込まれてしまう。

  • 現代に比べてSNSやインターネットなどの情報拡散ツールが圧倒的に少ないのに、各藩の村人たちの結束力や幕府の徹底した捜索により現代より遥かに逃げ延びるのが困難な世界で行く先々で多くの人に協力してもらいながら間一髪で逃げ延びる高野長英。
    歴史の授業では「蛮社の獄で捕らえられたが牢屋に放火して脱獄、後に捕らえられて自殺」程度しか教わらなかったので詳しい背景が分かりとても面白い。下巻も楽しみ。

  • 幕末の蘭学者・高野長英の入獄、脱獄、そして逃亡を描く歴史小説。上巻は江戸を出た長英が、様々な知己に助けられ、上州を抜け、越後を超え、奥州に辿り着くところまで。
    淡々とした文体により、むしろ逃亡者の閉塞感と切迫感が強く感じられる硬派な小説。下巻の展開が気になる。

  • 政治犯として捕まった高野長英の脱獄と息詰まる逃避行。2019.1.15

  • 昔読んだのだけど、また読みなおす。
    息の詰まるような文体である。吉村昭の小説が読めることは幸せなことだと思う。

  • 政治犯として無期懲役を食らったところ金を使い脱獄。
    行き先々で迷惑をかけながらも生き抜いていく生命力の強さは
    史実では傲岸不遜な長英先生を表しているといえなくもない。

  • 2013/11/29完讀

    蘭方醫高野長英曾經跟シーボルト學習,蘭學能力是日本第一人,不但翻譯了醫學並撰寫相關濟世的論文,後來焦點更轉到海防之上,想要翻譯這一類的書上。然而他因為渡邊華山的案件被無辜牽連,由於南町奉行鳥居耀藏出身林大學頭家,最怨恨蠻夷之學,長英就被判處永牢。入牢的長英因為醫術獲得求人尊敬,一年就破格升為牢名主。然而他不想終其一生待在牢中,希望還有機會翻譯兵書,在入獄第五年,他要求了下男栄蔵幫忙放火,趁切放し逃出去。切放し果然實現了,長英帶著當牢名主儲蓄的兩百多兩,四處找認識的人寄住。三日過後他並沒有回到本所回向院,正式挑戰幕府的權威,開始他的逃亡生涯。他在江戶的移動,剛好可以用手邊的尾張屋江戶切絵図嘉永慶應版完全對照,讓我也在紙上跟隨他的腳步一遭。他受到很多醫界和蘭學界的幫忙,但幕府的搜查能力超強(能逃過一劫真的是奇蹟),他逃離江戶之後,前往上州,越過清水峠。他聽說鳥居失勢了感到很扼腕,因為如果他還在牢中說不定會被釋放。但是長英既然已經逃亡,也只能繼續逃下去。到達越後直江津,剛好經過一場大火,但在大肝煎福永七兵衛的保護和安排之下往他的故鄉前進。俠客忠吉幫忙散布假消息,把幕府的吸引力引到蝦夷去。


    因為國家的政策,讓這樣一個語言天才過著這種狼狽的生活,實在是是糟蹋和浪費人才。想到長英當時的心情,尤其是出來逃亡的時候每天只能噤聲躲藏,更不要說能夠看書,就覺得實在很難過。有一幕是他潛在向島料亭的離れ裡面,暌違五年之久拿到蘭書的感覺,令我印象很深刻,我不禁也想像一下他的心境,那是所有金銀財寶都無法買到的一刻,那種感動還有所有一切千言萬語都無法言喻的情緒吧。一個對知識和翻譯無比渴求的人,必須度過這樣的生活,情何以堪!

    此外,讀這本書,幕末的醫界和蘭學者相關人士真是眼花撩亂的登場。而關於牢獄制度的介紹、幕府的搜索能力的描述也令人咋舌,而長英在許多人情味的相挺之下度過逃亡生涯,這種非常東洋、和式的人情味也令人感動。我相信的人所相信的人,我願意冒著生命危險去保護他、尊敬他,沒有第二句話。這種非常獨特的民族性,是我非常喜歡的地方。另外,能夠看著切絵図讀小說,這也是日文小說的一大樂趣之一阿。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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