長英逃亡〈下〉 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1989年9月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117263

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長英逃亡〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • いやはやこれは力作でした。人間長英の逃亡劇。史実に忠実に、硬質なタッチで描く。
    わたしも一緒に逃亡している気分になった。

    彼を獄に投じた目付鳥居耀蔵が、彼の脱獄後失脚したことを知ったときの身もだえするような後悔。
    「長英は、自分が早まったことを強く悔いた。わずか2ヶ月余の差が、運命を大きく狂わせたことを知った。」(p.268)
    「悔いても悔いきれぬことであった。2ヶ月余牢にとどまってさえいれば追われる身にならずにすんだと思うと、胸の中が焼けただれる思いであった。」(p.269)
    「過ぎ去ったことを悔いても仕方がない、と自分に言いきかせた。運命というものは人智でははかり知れぬもので、自分が負わされたかぎりそれを素直にうけとめ、新しい活路を見出すべきなのだ、と思った。」(p.270)

    こんなふうに、とても人間らしい面が描かれる。

    赤松氏の解説が的確で素晴らしい。「自身の語学力、医師としての技量、西洋事情に関する学識などに絶大な自負をもつ長英は、ややもすれば倣岸不遜な振る舞いがあったらしい。しかし脱獄後、追われる身の罪人をどこまでも救援してくれる人びとの親切に接して、謙虚に反省する姿や、……」」。
    そう、これがまたとても人間らしいと思った。

    長い長い逃亡劇の果てに、手に汗握るようなクライマックスが待っているという構成。
    江戸に戻り、顔を焼いて町医者として生計を立てるも最後は捕らわれの身に。十手で半殺し状態にされ、護送される途中で息絶える……。
    じつに、時代に早すぎた者の悲運…日本には、鎖国を批判してこんな目にあった人がいた。胸を打たれる。

  • 一流の学者として、世が世なら栄光に包まれた生涯を送っていただろう高野長英の攻めの逃亡劇。

    捕らえられば死罪。高い捜査能力を持つ捕方の目を掻い潜る逃亡の描写にはスリルが満ちている。ただそこに感動が伴うのは、多大なリスクを顧みずに彼を匿う学者仲間とその縁者たち、入牢時代の恩義を忘れぬ侠客たちの助力が描かれるから。高い識見を出る杭として罰するような歪んだ体制がある一方、危険を承知で価値ある学者を守ろうとする人々、そのコントラストが強烈。その中で主人公は、決死の覚悟で破牢した意義を、他者では成し得ない洋書の翻訳業、すなわち国防への貢献によって見つけていく。それが「攻め」と表現した理由。けれどもそれが命取りにもなる。

    物語の最終盤は読むのが辛いが、それは長らく捜査網をすり抜けてきた長英の苦心を、いつの間にか我が身のように共有していたからと思う。彼は牢を破って逃げただけでは、仮に生を全うしてたとしても生き甲斐がなかった。才能を活かす為の逃亡よって彼は本当に生を見つけたというのが著者がこの小説を著した動機でもあり、その主題はストレートに伝わってくるだろう。

  • これが史実に根ざしていなかったとしたら、まったく読む気にならないだろな。いくらフィクションだからって、こんな馬鹿な話を読んでられるか、って。

  • 2013/12/01完讀

    「歴史そのものがドラマだ。」--吉村昭

    在俠客的幫忙下,長英回故鄉見了母親一面。之後他到福島、米沢等地,決定回到江戶,進行他脫獄的目的;翻譯。江戶的警戒已經不再那麼嚴格,他從鈴木春山處獲得蘭兵書,在內田的安排下也和妻子在麻布宮下町住了下來。後來江川英龍安排他離開江戶,過一陣子他在搬回江戶住。他向島津家世子齊彬獻上譯書,宇和島藩主伊達宗城招聘他去宇和島譯書(高島秋帆入獄前的藏書)。於是他在宇和島家臣陪同下,驚險地渡過東海道之旅,在大阪拜見宗城。到達宇和島之後進行翻譯,但是最後不知為何被幕府查知,他離開宇和島,本想前往薩摩,但是薩摩當時正發生お由羅之亂的血腥屠殺,齊彬也無力保護他,他只好前往廣島,但又回到宇和島取辭典,並決定回到江戶。回到江戶之後,繼續和妻子一起生活,幕府當時正逢開明派的阿部正弘老中執政,原本長英抱持希望,但此時幕府害怕時人批評時政,並全面禁止洋書。長英失去翻譯支持家計的方法,但又想要自立,於是當掉自己的辭典(這想必是錐心之痛,不過為了生活、妻兒和即將出生的小孩,也是要放棄自己最重要的初衷),最後甚至用火燒傷自己的臉,在青山以假名沢三伯繼續行醫。幕府當時查知他的譯本,認為能有這麼高水準的翻譯能力的非長英莫屬,又開始警戒,並且找了當時同獄的人當線民四處搜索,長英就這樣被發現,捕快們偽裝病人衝進他家,長英竟然在逃走過程被十手圍毆致死,幫助他的人都被審問嚴懲。三個月後,島津齊彬終於成為薩摩藩藩主,終於有力可以庇護長英,但是他已經不在人世。

    讀到あとがき,才知道吉村是經過多麼緻密的調查與考證,不禁為這部作品感到十分佩服。他以非常客觀及考證的立場在寫作(而且一切的路線都可以在地圖上找得出來),連成一氣,十分有說服力。對長英本人情緒的描寫,極度壓抑作者的存在和主觀的感情散溢(這也是吉村文學的特色,「記錄感」很強),但是還是在限度內有把主人公的感覺描寫出來,他和母親見面的那一幕,還有和妻子ゆき事隔七年重逢的那一段令我印象很深刻。(不過讀完這麼壓抑的一本書,突然很想讀情感很奔放的感性文章。交替閱讀,輪換主題的的感覺很棒)

    翻譯是一件神聖,也是無比困難的事。可以流暢地意譯,並且精準地予以註釋說明,並且譯出正確的譯文,是很困難的(也是我覺得功德無量!!!!!的工作)。尤其在當時的時代,他可謂是無可取代的唯一人才,因此他那種懷才不遇的鬱悶感是很正常的(其實是整個國家和大環境對不起他)他那悲劇性的人生,讀完之後一種哀傷的情緒還是一直留在心中(無辜被牽連、入獄後兩個月鳥居就下台、想拜託島津結果島津家無力救他、時政頒佈禁止譯書令、他因為自己的仁慈反而被獄友背叛、死後三個月島津齊彬就執政了),他花了很多無謂的人生在逃亡,要是讓他好好可以不擔心財源進行翻譯,諒必幕末史又會有另外一番風貌(如果阿部正弘重用他,說不定幕府不會那麼快垮台,洋式軍隊和防禦會更早並且健全地建立…等等,有好多可能性。)他身邊有好多人具有道德勇氣並且拔刀相助,但也因此受到牽連,這部份也讓人覺得很難過。但是能夠透過吉村的文章,認識這位一百多年前的悲劇英雄,跟著他的腳步審視他的生命,還是覺得,要是高野地下有知,一定會很欣慰吧。卷末的解說提到,吉村不接受編輯部想題目、提供鉅額的酬金給他來寫作的方式,他認為 「そのような仕事をするのは、自分をゆがめることになる」,凡是他寫的,都是他有興趣的題目。我非常能瞭解這種感覺,也對他的骨氣與堅持感到佩服。只寫自己想寫的,也讓吉村文學的作品中燃燒著一種靜謐但執著的火焰與愛着。

  • 再び江戸に戻った長英は妻子と共に生活を始めるが・・・。宇和島藩主の庇護を受け、伊予に入り、蘭書の翻訳、蘭学の教えに貢献する。漸く平和が来たかと思ったが、やはりそこも幕府の手が忍び寄る。極めて優秀な人材がこのような追われる身になることの惜しさ。そして本人の悔しさ。そして再び江戸で迎える最期の時。斉彬があと数か月早く薩摩藩主になっておれば、保護を受けられたのに・・・。運命の悪戯。長英亡き後の家族も悲惨である。吉村昭の詳細な調査により150年前の史実が忠実に再現されます。素晴らしいお奨め本です。

  • 一方、下巻では長英に影響を受ける人たちが確かにいたこと、また「志士」という人たちがどんなものなのかと考えさせられた。やはり現代において、ここまで気高い志を保つ人にならねばと思って仕方がない。
    しかし、不運。不運だが、気高い。

  • (「BOOK」データベースより)
    放火・脱獄という前代未聞の大罪を犯した高野長英に、幕府は全国に人相書と手配書をくまなく送り大捜査網をしく。その中を門人や牢内で面倒をみた侠客らに助けられ、長英は陸奥水沢に住む母との再会を果たす。その後、念願であった兵書の翻訳をしながら、米沢・伊予字和島・広島・名古屋と転々とし、硝石精で顔を焼いて江戸に潜伏中を逮捕されるまで、6年4か月を緊迫の筆に描く大作。

  • 長英の脱獄後、わずか2ヶ月で鳥居耀蔵が失脚してしまうとは。また、長英が警吏に殴殺されて3ヶ月後に島津斉彬が藩主につくとは。数ヶ月のタイミングのズレに運命を翻弄された長英は、哀れというしか言いようがない。しかし、5年もの間牢獄生活を続け、その後も人目を忍ぶ逃亡生活の中で、知識や分析力が衰えることなく、蘭書を翻訳し、国際情勢を分析した建白書を執筆するなど、常人技ではない。まさに超一流の蘭学者だったのだろう。

  • 不運だった人には違いない。
    しかし、この作品を通じて『偉大』と感じられるのは、高野長英本人ではなく
    彼の才能を認め、庇い、手を差し伸べてくれた人々のほうだった。
    あの時代の人々の器の大きさ、優しさに触れられたことのほうが、むしろ収穫だったな。

    翻訳家として偉業をなしたことは事実だが
    人間としては時代ゆえの理不尽さによる僅かな同情以外には
    好きにはなれなかった。



    奇しくも、これを読んでいる最中にオウムの逃走犯二人が捕まった。
    高野長英は6年半。
    彼らは17年。

  • 上巻は逃亡生活を克明に描くところが中心で高野長英の当代への影響については余り触れられていなかったが、下巻に入り島津斉彬や伊達宗城から評価を受け、彼の兵学書の翻訳が当時の開明的指導者に多大な影響を与えていたことが記されている。
    高野長英が幕末の思想的な中心人物であったことを今更ながら理解することができた。

    また、本著では彼やそれを匿う多くの人々の人間味あふれる関係にも心を動かされる。単に長英の博学ゆえだけでなく、江戸時代にはあった功徳の精神からなのであろうか。

    幕末維新からもっとも学ばなければならないことは、当時の人々の志の高さと、その志の高さを以ってのみ偉業を成し遂げることができる、ということである。
    高野長英も逃亡する中で安全な場所に留まれば生き延びることができたのだが、世の中を正しい方向へ動かしたい、という強い志ゆえに自らを危険に晒し、自分の志を実現することを行動基軸とした。

  • 奇しくも、オウム逃走犯平田が自首してきたタイミングと近い。もっとも、長英は捉えられてすぐさま殺されたのであるが。
    それにしても人望が厚かったのと、類まれなる才能を持っていたのは間違いないようだ。

  • 教科書で習った高野長英は『戊戌夢物語』で幕府の政策を批判
    、蛮社の獄で投獄された、でおしまい。
    そのあとの脱獄し、逃亡し続ける様子を描いた。

    驚嘆すべきは江戸幕府の警察能力。探査の網が広く深く、警察国家だったんだなあ、と感心。
    そんな中、長英の逃亡に手を貸した人は誰も裏切らないところがまた。人との付き合いや、長英の語学や先見性の高さがそうさせたんだろう。
    おれが今同様の理由で逃亡したらどれだけの人が手を貸してくれるだろうか。

    常に不安や迷いの中で逃げ続け、最後は国への情熱を失いあっけなく御用に。
    これはほぼ史実だろうから、拍手。

  • 2011.4.14(木)¥210。
    2011.5.6(金)。
    メモ:高野 長英(たかの ちょうえい)文化元年5月5日(1804年6月12日) - 嘉永3年10月30日(1850年12月3日)、江戸時代後期の医者・蘭学者。wiki http://goo.gl/yUlfg

  • もちろん☆5つ!

  • ---------------
    Gaku Fujihashi

  • 平成19年12月21日読了

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長英逃亡〈下〉 (新潮文庫)の作品紹介

放火・脱獄という前代未聞の大罪を犯した高野長英に、幕府は全国に人相書と手配書をくまなく送り大捜査網をしく。その中を門人や牢内で面倒をみた侠客らに助けられ、長英は陸奥水沢に住む母との再会を果たす。その後、念願であった兵書の翻訳をしながら、米沢・伊予字和島・広島・名古屋と転々とし、硝石精で顔を焼いて江戸に潜伏中を逮捕されるまで、6年4か月を緊迫の筆に描く大作。

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