冷い夏、熱い夏 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1990年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117270

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冷い夏、熱い夏 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 作者の弟の癌が見つかってから臨終までの、約1年間のドキュメント。
    この頃はまだ告知をしないケースが多かったようで、癌を疑う本人に、
    何としても隠し通す親族の葛藤と、傷みと闘う弟の詳細な描写に読むのが苦しくなる。
    現在とは時代背景が違うので、しかたのないことだと思うが、癌を隠し通されたことで、
    命が尽きる瞬間まで、誰とも腹を割って本音で語り合えなかった彼は、本当に可哀想だ。

    全編を通じて重苦しく凄まじい内容なので、闘病中の方、
    またはご家族がそうである方にはお勧めしません。

  • 徹底して事実に立脚し、客観的に出来事を記述する一見ノンフィクション風の文章でありながら、
     巧みな構成と深い心理描写をもって、読み手の心の奥深くにくさびを打ち込むような小説。
     深い絆で結ばれた弟が肺癌を発症し、50歳の若さで亡くなるまでの約一年間を綴った作品です。
     末期癌の激しい苦痛や日に日に死に向かって衰弱する弟の様子など、
     身内なら目を背けたくなるような事実も冷徹かつ克明に描きつつ、
     それを看取る側の辛く切ない心情もしっかり書き留めていて、心が揺さぶられます。
     弟に癌の告知をせず徹底的に隠し通すあたりは昭和50年代という時代を感じさせますが。

     なお、吉村さん自身も2006年に亡くなっていますが、その彼の最後の日々を、
     吉村さんの奥様で小説家の津村節子さんが『紅梅』(文芸春秋)という、
     これもまた端正な佇まいの小説にしたためています。
     こちらも併せて読むと、吉村さん自身の人生の幕の引き方が印象深く、
     誰の身にもいずれ訪れる人生の終幕について色々と考えさせられます。

  • 文章をじっくり味わいたいけれど、 あまりにも壮絶で読むのがつらく、将来への漠然とした不安やイヤな想像など始めてしまうので、3日で読んでしまった。
    吉村さんの、ちょっと「特殊」な部分が見えたような気がした。 

  • 作者の弟の癌への闘病生活を描いた小説。
    刻一刻と、病気が進行していく様子、主人公である作者の弟への愛情、癌の非情さがリアルに描かれていて、胸が詰まる作品。

    癌がどういう病気なのかがわかってくる。

  • P258
    毎日文芸賞受賞作品

  •  母を癌で亡くしたわたしとしては、当時を思い出し共感するとともに、いたたまれない気持ちにさせる内容であった。身内の死は必ず訪れるのだが、亡くなったことに整理をつけなければ、残された者たちは不幸である。人生折り返しを過ぎ、自身の死生観をあらためて問われた作品である。

  • 途中で読むのを止められず、一気読みしてしまった。
    最後までガンだと告げられなかった弟さん、それでも末期がんで痛みに苦しみながら、ガンの薬を打ってくれという…

    兄にも弟にもガンを隠し通し、そして周囲に「あなたが私にガンじゃないよと言っても信用しない」とまでいわれる著者のすさまじさ。身の中から食われていく気持ちだったのではないか。
    そして当人も最後はガンになり、自ら管を抜いて死んでいったことを思うと鳥肌が立った。

  • 小説というかノンフィクションにいれてもいいと思われる。
    著者の体験記。ガンを宣告され余命1年の弟にガンということを隠し通し、死に至るまでのお話。
    やはり自分にも弟がいるので、こういうことは可能性はなくはないかと。
    でもその際に助け合えるのが兄弟なんだろうなと感じた。
    重苦しくて悲しい一冊。

  • かなしい兄弟の話。
    緩和医療科にいたころをどうしようもなく
    思い出しました。
    人の死は悲しくも美しく、激しく動揺させるものだと思います。

  • 弟に癌が見つかったが、それを隠し通す兄。
    少し前の時代では、癌であることを本人に証すことをせず、隠し通すことが多かったようだ。
    今では本人への告知は当たり前のようになり、医学も多少は進歩している。
    ただ、告知も辛いが隠し通すことも辛いんだと思う。

    2014.7.14

  • 心にズシンと突き刺さる話だった。もしも近しい人が同じ病に倒れたら・・と思うと恐ろしい気持ちになった。

  • 実体験を元に描かれているので、言葉のひとつひとつに重みと説得力を感じます。
    ただ、筆者の主張がそのまま呑み込めるかというとそうではなく、
    「私なら…」「私だったら」など反駁しながら読み進めていきました。

    癌の進行や闘病の様子はリアルなのに登場する医師や看護師、葬儀社が
    みな信頼のおける「いい人」ばかりなのには違和感を覚えました。

  • 弟が癌になり、死まで1年に及ぶ闘病と周囲が献身的に看病する。癌であることをひた隠し、1ヶ月前から葬儀の手配をする自分を冷たい人間だと責めつつ、自身の闘病経験から行動せざるをえない。深い愛情を感じる。14.1.13

  • 『戦艦武蔵』『破獄』に続いて吉村作品は3つ目。
    前述の2作品は重々しい空気漂う、男気溢れる表現に満ちた小説だったが、本作品は末期癌に向き合うテーマながらもどこか爽やかで、暖かい空気のながれる小説だった。
    癌患者への向き合い方、死を間近にした人間との接し方、現実との戦い方など、そう長くはない作品の中に答えの無い問題が多く提起されている。患者の痛みがこちらの呼吸まで苦しめるように伝わってくる。夏から夏までの1年。冷たい/熱いは物理的なものだけでなく心境にも反映されており、変わり果てていく弟を前にした周囲の人間の悩みも実に胸を苦しめる。
    吉村昭の作品は一見ノンフィクションともとれるほどに仔細まで取材してありリアルそのものだ。お気に入りの作家の1人である。

  • 肉親が亡くなることよりも癌細胞の増殖によってヒトの臓器が破壊されていく様子がすごかった
    しかしやはり癌は本人に告知すべきだと思う

  • 今とはガンの告知に対する認識が違うのか。徹底的に弟に嘘を突き通す主人公の態度に、ある種の自分勝手さや独善を感じてしまう。本当に隠すのが良いことなのか、告知が患者にとって本当に悪いことなのか。深くて重いテーマの作品でゆっくり考える必要がある。

  • 肺癌になり、五十歳で死んだ弟の一年ほどの闘病過程を「私」=吉村昭の視点から「事実そのまま」描い(───引用:解説)た長編小説。
    医療技術や、告知の概念など今とは違う常識が興味深かった。

    ノンフィクションとは知らずただ小説として読んだが、壮絶。
    弟が衰弱し幻覚に囚われ苦しみ死へ向かう過程は胸が苦しくなるようなものだった。だが、「私」と双生児のようなといわれるほどの弟本人に癌であることをひた隠し、兄弟達にも妻にも隠し、悪化を隠し、嘘を言い連ね死の前に自分ひとりで葬儀を手配し、まんじりとしていてもどうにもならぬと仕事に出、弟が病状を悟らぬよう子供達に見舞いを禁じ、弟の友人が会いに来たのを病室に入れることを断りと、もうダメかもしれないとの連絡に何度も夜中に病院へ掛け、とひたすらに続く「私」の葛藤や蓄積する疲労、絶望感がなにより苦しかった。

  • 本当はハードカバーで読んだんですが,こちらにレビュー。
    文庫版も解説読みたいなあ。

    吉村昭さんの弟さんが肺癌に侵され,亡くなるまでを描いたノンフィクション。

    辛いですね。読みながら何度も涙ぐみました。
    これは身内や親類を癌などの病魔で亡くした人にとって,色々なことを想起させるきっかけになる本です。
    私は祖母が癌で亡くなった時のことを思い出しながら読みました。

    吉村さんと弟さんのつながりの深さや愛情が感じられました。時折元気だったときの弟さんの回想が入るんですが,それが病気の描写よりも切ないです。

    弟さんの心臓が強いことが,命を存えさせるのに役に立った,との記載があり,私の祖母は心臓が弱かったために,長い間苦しむことなく息を引き取ることができたのが幸せだったねと話していたことを思い出しました。
    弟さんの闘病記を見る限り,心臓が強くて存えられることも,結構辛いことだなと感じました。本当に最後のほうは読むのが辛い。

    でも,最後は弟さんを看取ることができてよかったなと思います。
    私の祖母は,たった数十分,タオルを取りに伯母がその場から離れた間に突然急変して亡くなり,病院関係者しか看取ることができませんでした。ベッドの上で誰かに看取られて息を引き取ることができてよかったね,と話したけれど,最後を看取ることが出来なかった伯母や母は当然のことながら悔いていました。
    吉村さんの弟さんは信頼できる親族みんなに見守られながら,息を引き取ることができて,きっと幸せだったろうなと思います。

    吉村さんと弟さんの体験を通して,考えるきっかけを与えてくれる本。

    きっと誰もが経験する肉親との死別。私もこれから父や母との死別が必ず待ち受けています。その時を考えると辛いですが,この本はそれまで心の片隅に置いておきたいです。

  • 末期癌に冒された実の弟の、1年にわたる凄絶な闘病の記録。

  • シンプルに医療ものかと思ったら、吉村昭氏の最愛の弟の、末期がん診断から死までを綴った壮絶なノンフィクションだった。
    末期がんで余命が少ないことを本人に告知するなどとんでもない、という時代背景があるので、現代からしてみると無理があるんじゃないかと違和感がどうしても否めず、(実際に治療の非常に難しいがんであったにせよ)ここまで絶望的な筆致は読んでいて苦しい。
    しかし、さすが作家だけあって、感情的にもかなり突き動かされている状況でありながら、一方でかなり冷静に物事の成り行きを見ているところは驚き。

  • もっとも読みたかった本

     この夏亡くなった作者。最期は妻が看取る前、自身で自身の命を絶ったと報道されれている。

     それを聞いて読みたかったのがこの本だ。弟が自覚症状のない末期肺ガンになり、それをひたすら隠し通しながら弟の死を看取る兄の心模様を描く。私小説であり、主人公である兄は自分自身だそうだ。

     凄絶という言葉がふさわしい弟の闘病の様子、それを見守る兄弟たちの葛藤、そして隠し通した主人公の心模様が赤裸々に小説として記録されている。

     いつ電話が鳴るかわからない状態の中で小説は進行する。主人公が弟の急変を聞きつけて病院に駆け込むが、病室に入らず自身の心の準備をするという下りがある。

     現在の世の中のように「もし携帯電話があったら?」と思うとおもしろい。情報はすぐに流れるだろうし、情報そのものの正確になっていることだと思う。

     よって、判断もより正確だろう。しかし、人の行動はその速度と正確さについていけるだろうか。もっと遅く、もっと受け身で、もっとあいまいなものになるんだろうなぁ。人の死ってそんなものなんだろうなぁ。

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