海馬(トド) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117300

感想・レビュー・書評

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  • 猟師や料理人など、動物とともに生きる人々を描いた短編集。

    写実的な描写、そして綿密に描かれる人々の生活の様子や、動物との関わり合いがまず見事の一言に尽きる。
    「闇にひらめく」の料理人の鰻さばきの様子もそうだったし、「研がれた角」は日本での闘牛の様子が描かれます。
    日本での闘牛ってあまりイメージがわかなかったのですが、牛の個性や性格と闘牛の関わりというものが単なる説明に終わらず、描写を伴って描かれているのがさすがです。

    他に収録されている短編も海馬や鴨の猟から、蛍の世話、鯉の売買など個性的な登場人物たちのそれぞれの生活の綿密に描かれる。吉村昭さんの描写はいつも緻密かつ詳細であるけれど、普段なじみのない動物たちの習性や、それにかかわる人々の生活の様子も見事に切り取られています。

    各短編の内容はどれもいぶし銀の内容。男女関係の描き方というものは、さすがに時代を感じるところもあるけれど、それを今の時代に読むと、いい意味でレトロでロマンチックに映える。
    各短編の真摯な描写も相まって、どの短編も今の時代にはなかなかお目にかかれない、文学的な雰囲気と著者である吉村昭さんの職人気質のようなものを感じる一冊でした。

  • くくりは「動物小説集」だそうで。

    吉村昭に期待するのは、こういうのではないんだけどなあ・・・、というのが率直な感想(苦笑)。

    けれどもいつものごとく、自然の描写の美しさには脱帽。

    印象に残ったのは、鴨撃ちの父子の話。

    ★3つ、7ポイント。
    2018.03.24.新。

  • 著者没後10年記念復刊。「羆」と共に発売。動物と関わる人の生活を著した短編7つ。表題作「海馬」が良かった。2016.7.30

  • 吉村昭の動物ものです。どのテーマを見てもそうですが、上手いですね。何処から拾ってきたんだ、と唸るテーマが多いです。
    ただサブテーマに男女の感情を横糸としつにいれてきますが、個人的に感情移入ができません…。
    なんでなんですかねぇ。
    「銃をおく」が一番すきです。あ、男女の話がない奴だ。

  • たしか、役所さんの映画『うなぎ』の原作短編収録だと思います。(かなり前ですねぇ)動物をテーマにした短編集で、切れ味がよかった記憶。このあと、吉村氏のエッセイを図書館で借りて読みました。

  • どの短編も設定は似てて若干飽きたけど、動物の知識はふむふむ。

  • 主に翳を持った男女の心象風景が、とある動物を基軸にした物語世界で描かれる短編集。やや非現実的な展開が目立つ分、暗さの無いラストが特徴的。唯一ノンフィクション要素を持つ熊撃ちの小編は、三毛別事件を舞台とした『羆嵐』の後日談的側面があり、興味をそそられた。

  • うなぎは、映像化されただけあって、ロマンチックな最後だった。ぜひ、映像作品も見てみたくなった。

著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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