桜田門外ノ変(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117331

感想・レビュー・書評

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  • 拙いです。拙いです。拙いです。
    頭痛が痛い、に類する重複表現が頻発するくらい日本語が覚束ない。心理描写がヘタクソ。小説としての質の低さには心底驚嘆してしまう。
    これは完全にダメなときの吉村昭ですね、間違ってもお薦めはできない。

    史実からはみ出すことを嫌うのは別にいい。記録的文体がどうたらという主義主張もけっこう。
    しかしそういったって、関鉄之助という主人公を設定してその視点で物語を進める以上、彼の心理描写にリアリティがまるでないことを「そういう文体だから」で片付けるわけにはいかないよ?

    この限りなく紙クズに近い文章を救うのは、高橋多一郎や安島帯刀(「陽だまりの樹」)、住谷寅之介(「竜馬がゆく」)といった別の著者による有名作品の登場人物たちの消息に触れることができる、という一点だ。
    そのことが吉村昭御大の文人としての名誉を救うことになるのかどうかは、はなはだ疑わしくはあるけども。

    この人、よくぞ「漂流」みたいな名編を書けたもんだよなあ…。ほとんどが駄作の中にキラリと光る、例外中の例外を求めてつい読んでしまう。

  • H28.6.29-H29.5.8

  • 本書は、井伊直弼の側ではなく、襲撃した方の水戸藩の方、もう少しいうと、襲撃を取り仕切った、関鉄之介という人物を中心に進む。
    元々、水戸藩と彦根藩は仲が悪く、それが尾を引きづって、最終的には井伊大老の暗殺へと進んでいく。
    水戸藩は尊王攘夷の魁であり、また総本山というものであり、幕末は明治維新を引っ張て行くべき存在であったが、水戸藩の内部のごたごたにより、優秀な人物は捕まり、獄死するなどし、その力は、維新前夜にはほとんどなく、維新回天に直接的に役立ったというわけではない。非常に残念な話である。おそらく、主人公の関は、非常に優秀な人物で、決して、一時の激情に駆られて、井伊を暗殺したわけではなく、主君である水戸斉昭への執拗なまでの嫌がらせ等に対し、我慢できず、また、藩内の決起はやる若者たちを抑えることができず、このような結果になってしまったのであろう。
    著者の本をいくつか読んだが、歴史小説というよりも、伝記のようで、主人公に成り代わって、人物移入して物語が進んでいくような作風ではない。あくまで、淡々と、歴史的事実が述べられながら進んでいく。私としては、多少の作者の思い入れも織り交ぜながら、物語が進むような、司馬や宮城谷のような作風が好きなので、星2つとした。著者は、どちらかというと、塩野七海のような感じの作風かな。
    全2巻

  • 2010.10.30新宿バルト9

    映画の感想です。DVDがないので、原作本での登録。

    中高年向けに作られたまじめな時代劇、という印象。
    音楽の使い方とかが古くさく感じてしまったけど、それも時代劇的といえば時代劇的なのかも。

    あと、途中でところどころ挟まる現代語(語尾や話し方ではなく単語とか?)が気になったんだけど…時代劇ってそんなものなのかな?分かりやすくするためには仕方ないのか…

    途中、関と剣豪との一騎打ちシーンがあったのは、あれ史実なの?サービスシーンなの?(笑)

    冒頭、唐突に井伊直弼暗殺実行の準備の話から始まるんだけど(途中から、黒船来襲からこれまでのエピソードが挟まれていく)、襲撃側たちの心情をそれほど書き込むことなく第三者的な視点で淡々と描かれているので、多少眠くなったり…^^;

    しかし後半、主人公関鉄之介(大沢たかお)が逃亡し、逃げ回りながら再決起を志すあたりから面白くなってきた。
    やっぱり心情部分が描かれるからなのかな。
    これまで協力を誓ってきた藩たちからも協力も得られず、自分以外の仲間が次々に捕まっていく過程のなかで、自分たちのしたことには何の意味があったのだろうか、と自問自答する鉄之介。
    時代の流れって容赦ないよね…

    ていうか、昔の日本人ってすごすぎる。
    お家のため、お国のために本気で命を賭けた人々がいる、っていうのがねー。自害のシーンが壮絶で、胸に迫るものがあった。
    歴史的事実を元にしたストーリーだからこその感動だね。

著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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