- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101117348
感想・レビュー・書評
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2011.4.3(日)¥210。
2011.4.8(金)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ついに主人公関鉄之助を中心とする水戸藩士の井伊直弼大老暗殺、つまり桜田門外の変がようやく下巻にて達成。
しかし、この事件自体はわずか5分の出来事。小説内での描写もあっという間。その後、藩士たちは逃亡を続け、ほとんどが死を迎える。桜田門外の変は前フリで、作者が描きたかったのは、関鉄之助たちの逃亡生活だったのか。
桜田門外の変から2年、関鉄之助は水戸藩内で捕縛され、江戸に送られて処刑される。37歳だった。 -
桜田門外ノ変自体は数時間のものだろうからそれだけでこれだけの小説のテーマになるのかと思っていたら圧倒されました。
あとがきを読むと資料を丹念に読み砕き、現地に行き、そこでまた人と会い資料を得て、それを骨格として作り上げてその間を想像で補い紡いでいくという作業をしていることがよく分る。
著者は当日の雪がいつ止んだのか色々な文献をあたるが不明で、不明ではあるが気持ちが入っいくと想像できるというようなことを言っていた。本の中では午後2時に止んだとしている。
尊皇攘夷派は今になると分の悪い立場だが、安政の大獄の件を読むと事件を起こすのもやむなしかと思う。井伊直弼の弾圧は過酷を極めている。
襲撃の描写は息を呑む。剣の修行なんて関係ない。怖いので刀のつばぜり合いとなり、刀同士がぶつかったとこで刀を振るので鼻とか耳とか指が散乱していたなんてリアルだ。
井伊直弼は合図も兼ねていたピストルが腰にあたっていてその段階で襲撃は成功だったわけである。雪も幸いした。敵は刀が濡れないようにカバーをしているし、刀にサビがこないようにボロな刀を持っていた人もいて、結果、曲がった刀があちこちに落ちていたとある。
話はこれで終りかと思ったら、主人公の関鉄之介のその後の足取り、最後は逃走に移っていく。このタッチは大好きな「長英逃亡」に似ていて緊張感を呼ぶ。ここまで資料が残っているものかと思ったらあるんですね。
あまりの労作に圧倒されてページを閉じた。 -
学校で習った桜田門外の変や安政の大獄。
ただただ丸暗記してただけの歴史的事件が、複雑な人間関係を絡ませながら起こっていたことにびっくり。
読みながら何度も「そうやったんかー…。」の連続でした。
ほんとは映画を観に行く前に原作を…だったんだけど、原作で十分堪能できてしまった。 -
上、下巻でとても読み応えがありました。
資料を取材して書かれているということで歴史を知る上でも大変勉強になりました。
暗殺に至るまでの時代の状況や経緯、そして暗殺、その後の諸藩の動き、逃亡生活、まさにドラマのようでした。 -
桜田門外の変の詳細が、残されていた各種の資料から精密に描き出されていた。襲撃した元水戸藩士のほとんどが直後に自刃などにより清冽な死を遂げる中、生き残った元藩士たちがどのように行動するのか、深く追求されている。歴史だけでなく、戦う者、藩邸に逃げ帰る者など、まるで現代に通じる人の生き様のようなものも感じた。
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桜田門外の変について、劇的ではなく淡々と実行責任者関鉄之助の足跡をたどった内容。小説というよりもノンフィクションな感覚。
ハイライトであるであろう桜田門外の襲撃のシーンすら数ページでそっけない。歴史というのはきっと何かの瞬間のイベントではなく淡々とした事柄の連続であとから振り返ると劇的な瞬間があったということか。
あとがきにあった「桜田門外の変から明治政府樹立までわずか9年」、「226事件から太平洋戦争終結までも9年」。歴史的大転換はごく短期間に凝縮しておこる、というのに納得。いまはそういう時期なんだろうか?この2つに比べると、まだ凝縮して大事件が起きてる感じではないなあ。 -
羆嵐がきっかけて吉村昭に嵌り込んだ。
読み始めて8作目にて初めての歴史小説。歴史小説はもう少し後でいいかと思っていたが、今度映画が公開されるということで、予習の為にも読んでみた。
歴史小説は元から割と好きな方で楽しみではあったが、勤勉で詳細な下調べはやはり吉村昭、といった感じ(まだまだ既読は少ないが)。安心して読み進められた。そして歴史的に有名な事件、『桜田門外の変』がどのようにして起ったか、その後どのように歴史の流れに繋がっているか、まったく知らなかったことに気付く。
硬質で無駄のない文章と緊張感がたまらない。
要するに歴史小説でも吉村昭は面白い、ということだ。
ますます好きになってしまった。 -
桜田門外以後の逃避行についても随分と紙数が割かれている。
薩摩藩の挙兵計画が頓挫してしまう失望ぶりは読むに値する。
ただ、こんなことを書いてしまうのも問題だが、
いちばん読んでよかったと思ったのは“あとがき”だった。
著者の意図を窺い知ることができ、目を通すべきだろう。 -
2008.1.5