ニコライ遭難 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1996年10月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117379

ニコライ遭難 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 明治24年にロシア皇太子ニコライが来日し、長崎、鹿児島、京都、滋賀と回る中で大津で警備を担当していた津田三蔵巡査に襲われた事件、いわゆる大津事件について描かれた小説。小説というか、吉村昭の作品は(というほど多くの作品を読んだわけではないが)、事実関係を丹念に取材して周辺情報まで含めて細かく書かれている一方で、小説が小説たる感情のもりあがりだとか登場人物の内面描写がないため、まるで解説記事を読んでいるような気分になる。それはそれでとても勉強になるのだが、ハマって一気に読破!みたいなことはない。
    長崎でのニコライのお忍びに対する長崎県庁の苦慮や、津田三蔵の処分に対する政府対裁判官の戦いなど、なるほどフムフムと思いながら読んだ。今も昔もVIP対応は大変だ。

  • 吉村昭の初読み。

    堅苦しい文体だが、不思議と最後まで引き込まれて読み続けられた。“事実”が持つ重みがそうさせたのだろう。

    読前、筆者についてWikipediaにて検索してみた。吉村昭の特徴は“記録文学”であるという。
    筆者の主観・創作は一切交えず、取材に基いた記述をただひたすら積み上げる……。
    例えば、乗った列車の発時刻や史実上の天候に至るまで、資料に取材し忠実に描写する“ノンフィクション文学とも呼べる”的な記載があった。

    そういう執筆姿勢で描かれた作品であるという事実が、歴史の重みを作品に加えていたのだろう。だからこそ“引き込まれ”た、と思う。

    ただ楽しく読んだだけでなく、得るものの多い一冊だった。

    ★4つ、7ポイント半。
    2015.09.11.図。

    ●ニコライは……何の悪気も、腹の一物もなく、典型的に無邪気な“良家のお坊ちゃん”だと感じた(笑)。よい意味で“育ちが良い”と。
    (一国の皇太子を指して“良家”もないものだろうけど)

    ※皇后(母)の、盲目的な溺愛ぶり(今の世にも通じそう)が、見ていて哀しくなった。



    ●巻末解説者の「勇気と誠意の物語」に、共感。

    ●司法関係者たちの勇気と判断と、実践に感銘。

    ●津田三蔵の死……唐突な発病と病状の急変。
    残された資料が語る“史実”は描写の通りであるとしても、史料に残されない闇の動き(?)によっての暗殺である可能性もあるのでは……?と、下品な想像も働いてしまった(笑)。

    ●↑の仮定をもとにした、大津事件を題材とするフィクションで映画など作ってみたら、なかなか面白いエンタテイメントになりそうだな・・・。

    ●同じ題材、同じ史実をもとに、他のフィクション作家が描いたら、どんな作品になるだろう……と妄想してみた(笑)。

  • 4-10-111737-3 379p 1996・11・1 ?

  • 発展途上の明治期日本を描いた秀作。著者の詳細な調査力には何時もながら驚かされる。

  • (「BOOK」データベースより)
    明治24年5月、国賓のロシア皇太子を警護の巡査が突然襲った。この非常事態に、近代国家への道を歩み始めた日本が震撼する。極東進出を目論むロシアに対し、当時日本は余りにも脆弱であった―。皇太子ニコライへの官民を挙げての歓待ぶり、犯人津田三蔵の処分を巡る政府有力者と司法の軋轢、津田の死の実態など、新資料を得て未曾有の国難・大津事件に揺れる世相を活写する歴史長編。

  • 明治24年に起こった大津事件の前後を描いた歴史小説。

    史実が淡々と積み上げられていくので、どこまでが本当のことで、どこに作者の想像が入っているのか全く分かりません。非常に細部にまで史実にこだわった作品です。

    日本のロシア皇太子の歓迎ぶりは現代に生きる自分が読んでいると、滑稽にまで感じてしまうのですが、それだけ当時のロシアの力の強さ、開国から間もない日本の苦慮の部分が見えます。ロシア皇太子のはしゃっぎぷりはなんだかかわいらしく思えたのですが(笑)

    事件が起こってからの司法と内閣の犯人の量刑をめぐっての軋轢は描写は決して多くないのにそれでも引き込まれます。司法側が頑なに法律を守ろうとしただけでなく、国益や国の威信のことも考えた上での判断だということが印象的でした。

    自分の教科書では数行で片づけられてしまっていた大津事件ですが、こうして小説で読むと全く違う見方が得られました。教科書だけじゃ歴史の面白さってわからないなあ。

  • 吉村昭氏の「史実を歩む」を読んで、この作品を読みたくなった。
    明治24年、まだ、明治維新から24年しか経っていない日本に、当時、世界一の大国・ロシアから皇太子ニコライが日本に訪れた。
    国賓でも最大級のもてなしをし、長崎、鹿児島、神戸、京都と訪れ、滋賀の大津で暴漢に襲われる。
    その大津事件までと後の展開がみごとに綿密につづられている。
    いつもながら、淡々とした書き口のようで、登場人物であるニコライ皇太子、天皇陛下、西郷ほかの大臣、児島大審院長官などの「人物像」がよく伝わってくる。
    この事件の後に起こる、日露戦争、ロシア革命と、主人公の運命にも感慨深いものがある。

  • 山風の「ラスプーチンが来た」しか知らないので、大津事件の実相、興味深かった。児島惟謙だけが偉いのではなく、裁判団や新聞がこぞって死刑に反対していたという話は興味深かった。

  • 2011.3.27(日)

  • ページ数は多くないのに読むのにかなり時間かかりました。日本のニコライの歓迎っぷりがすさまじいんですが、ニコライの紳士ぶりにもかなり感動しました。こんなにみんなで頑張ってこの事件で戦争が起きなかったのに、結局日露戦争が起きてしまったのがなんだか微妙ですね;

  • 楠精一郎氏『児島惟謙』(中公新書)を読むと、児島の刑法の皇族への傷害に対する死刑適用を、ロシア皇太子には適用しないという判断の裏側を豊富な資料に実証しようとしていたが、吉村昭の歴史を見る作家の眼にはお見通しなのかもしれない。
    もちろん吉村昭も膨大な資料を前提としているであろう。
    児島の国家理由、藩閥への反骨の姿勢があの決断の背景にあったことが淡々と語られる。

  • 平成20年6月26日読了。

  • 大津事件をめぐるお話。

    大津事件は司法の独立の問題としては知っていたけれど、それ以外の面はほとんど知らなかった。
    犯人の心情やその当時の日本の立場などを知る事ができたのは良かったなぁと。
    でも、裁判の部分はもう少し掘り下げて書いてみてほしかった。

  • 事実を淡々と積み重ねていく。最初のうちはこれがどのように物語の筋につながっていくんだろう、なにか伏線があるのだろうかと思っていたが、人物や当時の社会の動きを浮かび上がらせていたということだ。
    そのうち大津事件が起こり、話が盛り上がっていく。司法と行政がそれぞれの思惑で事件を解決しようとするが、、、
    この事件は話としては知っているが、それがその当時の社会にどのような意味を持っていたかは知らなかった。
    歴史の勉強と言うものはこういった物語を読むことによってもすべきだと思う。(図書館)

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