ニコライ遭難 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117379

感想・レビュー・書評

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  • 遭難って海で起きる事故と思ってた

  • 明治24年に起こった大津事件の前後を描いた歴史小説。

    史実が淡々と積み上げられていくので、どこまでが本当のことで、どこに作者の想像が入っているのか全く分かりません。非常に細部にまで史実にこだわった作品です。

    日本のロシア皇太子の歓迎ぶりは現代に生きる自分が読んでいると、滑稽にまで感じてしまうのですが、それだけ当時のロシアの力の強さ、開国から間もない日本の苦慮の部分が見えます。ロシア皇太子のはしゃっぎぷりはなんだかかわいらしく思えたのですが(笑)

    事件が起こってからの司法と内閣の犯人の量刑をめぐっての軋轢は描写は決して多くないのにそれでも引き込まれます。司法側が頑なに法律を守ろうとしただけでなく、国益や国の威信のことも考えた上での判断だということが印象的でした。

    自分の教科書では数行で片づけられてしまっていた大津事件ですが、こうして小説で読むと全く違う見方が得られました。教科書だけじゃ歴史の面白さってわからないなあ。

  • 読み切れるだろうか、と挫折前提でページをめくり、気づけばラストまで到着。吉村昭さんの本は毎度そのパターン。
    日本史で確かに知ってはいた、大津事件。
    それをタイムマシンで遡り、透明人間になってその場にいたかのような気にさせてくれる。
    お蔭様で、まるで体験したかのような気持ちに。
    艦船に乗り、桜島を眺め、人力車に乗り、琵琶湖を眺め、サーベルが振り下ろされるのを見て、眠れぬ天皇を見て、司法の誇りを感じ、北海道の刑務所の寒さを感じ、上野の小さな墓の前に立つ。
    読めてよかった。ニコライの最期も哀しい。

  • 明治時代に起こった大津事件に関する小説。
    大国ロシアの動向を気にすることで、行政府と司法府とが対立。
    両者は近代国家形成期の愛国心を違う観点から共有していたため対立することとなった。
    その後の日清戦争〜第一次大戦までの両国の動き、関係者のその後が物悲しい。

  • 図書館借り出し

    日本の転換期に起きた事件
    にしてもすごい細かく記録が残ってるものだな。
    まるで事件の調書を読んでるみたい。

  • ずいぶん前から積み読になっていて、読み始めるも冒頭で挫折を何回も繰り返しやっと読破!
    いや結果、面白かったし、為になった!
    この事件、凄い出来事なのに、多分知られていない。こと無き得たから良かったものの、一歩間違えたら歴史が変わってたであろう。

    この前に佐木隆三氏の「司法卿 江藤新平」を読んでいたので、裁判についても興味深く読めた。

    法律とは、漠然と守らなければならないものという認識しか無かったけど、これを読んで法の何たるかを少し理解できたように思う☺️

  • 平成20年6月26日読了。

  • 大津事件をめぐるお話。

    大津事件は司法の独立の問題としては知っていたけれど、それ以外の面はほとんど知らなかった。
    犯人の心情やその当時の日本の立場などを知る事ができたのは良かったなぁと。
    でも、裁判の部分はもう少し掘り下げて書いてみてほしかった。

著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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