生麦事件〈下〉 (新潮文庫)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (2002年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117430

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生麦事件〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 生麦事件によって引き起こされた事象と影響を描いた小説。僅か「6年間」が生麦事件から明治維新を迎えるまでの時間で、変転の早い現代ですらその短さに驚かされる。国法に抵触した1人の殺害事件をテコに、恫喝と暴力で利権の拡大をはかる英国をはじめとする西欧諸国、対して交渉の引き伸ばしに終始する幕府、そしてこの頃から露骨に独自の意志と行動と持ち始める薩摩と雄藩。ことに薩摩の、武力をもちながらも、同時に分析力、交渉力を併せ持つ様は、幕府の態度に比して頼もしく、薩摩という「国」が日本を先導する運命にあることが明示されているようでもあった。それも英国との戦争を契機とした藩論転換あればこそで、この事からもタイトルを生麦事件と銘打った意義がわかる。最後の方は、記述が史実の羅列になり、ドラマ感はうすれたが、薩英戦争のくだりなどは緊迫感があり、映像化したらかなり面白い物が出来そうな内容。

  • 薩英戦争だけでなく、長州による赤間関を通過する外国艦隊への砲撃なども扱われている。

  • 生麦事件により薩摩藩とイギリスの戦争に発展し、その最中、長州藩とフランスも戦争となる。その後、さらに長州藩と英米仏蘭各国連合軍との戦争が勃発する。そして薩摩と長州は幕府とともに戦後処理に苦慮を重ねた。これだけでは話は終わらない。蛤御門の変、長州征伐、大政奉還、鳥羽伏見の戦いと幕末の一連の出来事が分かりやすく描かれていました。アメリカの南北戦争が、幕末の日本に少なからず関わっていたことを知りました。

  • 幕府崩壊、明治維新への流れを作った一太刀。生麦村で起こった事件が、藩や幕府、国を巻き込む大騒動の発端となり、日本は結果として大きな一歩を踏んだ。つぶさに歴史を読み取ることで、ひとつひとつの大きな流れの発端が見えてくるから面白い。史実としてだけでなく、物語としても魅力的に描き切る吉村昭の力にはただただ驚嘆するしかない。

  • 淡々とした吉村昭の作品の中でも最も淡々とした部類に入るのではなかろうか。
    そんな余分な主観の入らない淡々とした描写の中でも、何も決められず交渉にあたっては回答引き延ばしするだけで右往左往して何もできない徳川幕府と比べた時の、トップダウンでまとまってぱっぱと動く薩摩藩の「賢さ」と、下がわーわー騒いであちらこちらへ暴走する長州藩の「幼さ」が際立つ。

    薩英戦争(そういえば藩と国の戦争なんてありえるのだろうか)、死傷者はイギリスの方が多かったなんて知らなんだ。
    悪天候が味方したとは言え、圧倒的に装備が劣る中、意気盛んに周到に準備して、精一杯戦って、現実を見て無理せず和解を決め、素早く交渉をまとめ、イギリスと仲良くなって、公武合体に見切りをつけて、圧倒的な軍備を蓄えまくって、長州藩と結んで、幕府を倒す薩摩藩。単純な経済力だけではない。現実を正しく見て、判断・決断が早くて、方針に従ってまとまって柔軟に動く。なにがこうまで違ったのだろう。

  • 一つだけ参考になるのは、末期に差し掛かった幕府の無能ぶり…
    これだけ無為に引き伸ばされたら、さすがに当時のイギリス人も腹に据えかねたでしょうが、しつこく交渉する姿勢に、英国の底深さを感じました。

  • 幕末ものはどうして面白いのかな!

  • 2012.6.8(土)¥300。
    2012.7.12(木)。

  • 生麦事件からどんどん話が広がっていき、気づいたら明治が始まっていました。ラストが特に印象的です。

  • 生麦事件から薩英戦争、倒幕へと流れていった。
    とすると、薩長をのさばらせることになったこの事件の意味は大きい。というか腹立たしい。

  • 生麦事件後の日本。イギリス艦隊と薩摩藩の間に薩英戦争が勃発。互いに被害を被り、明確な勝敗はつかなかった。しかし、軍備レベルの歴然の差を痛感した薩摩半は和議を持ちかけ、開国へと舵を切り出す。同時期に四ヶ国連合艦隊と戦争した長州藩も開国に傾き出す。
    薩摩と長州が討幕に向いてから急速に進んでいく政局がうかがえる。
    生麦事件は、桜田門外の変などと同様、江戸時代終焉を実現せしめた重大な要因である。

  • 生麦事件から明治維新まで、わずか6年。その間に、薩英戦争があり、長州征伐があり、鳥羽伏見の戦いがある。同じ「尊王攘夷」を唱えながら、生麦事件をきっかけに、薩摩、長州の考え方、対応が大きく変化していくのが実によくわかる。

  • 生麦事件を中心に、その後の薩英戦争~戊辰戦争までの流れを舞台にした小説。

    特にどの人物に主眼を置いた訳でもなく、特に後半は淡々と、主に薩長における事実を述べるだけに見えたのが若干残念。

    ただ、当時来日していた欧米列強の軍人・公使達の思惑や人物像を少し知ることが出来たのはためになったと思う。

  • (2008.09.22読了)(2008.02.01購入)
    イギリス艦隊がやってくるのに備えて、鹿児島では、台場を整備し、軍事訓練を繰り返して待っていた。
    6月28日、イギリス艦隊が現れた。薩摩藩から使者が送られた。
    イギリス代理公使ニールから使者に国書が渡され、30時間以内に回答するように求められた。国書の内容は、リチャードソンを殺害した加害者を死刑に処すこと、リチャードソンの遺族に2万5千ポンド支払うこと、の2条件であった。
    薩摩藩が、この条件を承諾しない場合は、戦闘行動を開始する。(18頁)
    薩摩藩の回答は、「わが国法によって全国諸藩は、何事をなすにも幕府の命令に従っている。賠償金の支払いの件は、幕府から何の指示も受けていない。」また、「わが国には、旅をする大名の行列に非礼をしてはならぬという定めがある。行列を乱すような無礼者は斬り捨ててよい。」であった。
    話し合いは、決裂した。
    7月2日、明け方、イギリス艦隊は薩摩藩の「天祐丸」「白鳳丸」「青鷹丸」の3隻の蒸気船を拿捕した。交渉を有利にしようとしたのである。天候は急激に悪化し豪雨となり、風は東南風になり吹きつのった。
    薩摩藩は、宣戦布告と受け取り、台場から一斉に砲撃が開始された。
    イギリス艦隊は、薩摩藩からの攻撃は予想しておらず、反撃の準備に時間をとられたのと、天候のため、艦隊に損傷を受けた。
    それでも、砲撃で台場は全部破壊し、薩摩藩の3隻の蒸気船は焼却し、鹿児島城下には、火箭を放って火災を起こし、引き上げていった。
    7月9日、横浜にイギリス艦隊が帰ってきた。イギリス艦隊に同行した新聞記者が、観戦記を新聞に掲載した。イギリス側の戦死者は13名、負傷者は50名。艦隊の被った損害は大きかった。
    鹿児島では、イギリス艦隊が再度来襲すると考え、防衛力の強化を開始した。長崎のイギリス商人グラバーに依頼し、新型の大砲を斡旋してもらった。マカオにあるアメリカ製鋳鉄砲89門、ロシア製鋳鉄砲42門。火縄銃も、ミニエー銃に変えることにし、グラバーに5千挺依頼した。
    長州藩は、尊王攘夷を主張し、それの同調する公卿を動かし、天皇自ら兵をしたがえて、政党の途にのぼり、幕府を壊滅させるべきだと主唱し、京で活動していた。
    孝明天皇は、公武合体を望み、攘夷親征論に危機感を抱き久光に上洛を求めた。
    イギリスと戦闘状態では、久光は上洛できない。
    実際にイギリスと戦って、兵器の力の差を実感し、攘夷は無謀であり、和議を結ぶことにする。ただし、和議を申し入れるのではなく、自然に気運を醸成し和議に持ち込む形が望ましいとした。
    8月10日、薩摩藩の和議のための使者が、横浜に到着した。
    和議に持ち込むには、幕府を間に立てるのが妥当と判断し、幕府に「薩摩藩の所有する蒸気船三隻を宣戦布告せずに拿捕したのは、不法な行為である」と訴えた。(108頁)
    8月13日、朝廷が攘夷親征の議を確定して公布。
    8月18日、攘夷親征の中止。薩摩藩と会津藩により長州藩が京都から締め出された。
    9月28日、イギリスと薩摩藩との談判が開始された。和議を結ぶことに双方異議はなかった。談判を繰り返し、11月1日、賠償金を支払い決着した。(148頁)
    1月24日、イギリス公使オールコックが横浜に戻り、代理公使のニールが上海経由で帰国した。
    4月25日、イギリス、フランス、オランダ、アメリカの代表が横浜に集まり、会議を開き長州藩の不法行為に対して懲罰のため痛撃を与えることを決議した。
    長州は、抵抗をしたが惨敗し、和議を結んだ。伊藤俊輔(博文)と井上聞多(馨)が間に立って奔走した。
    この後は、薩摩と長州が手を組んで、討幕へと進むことになる。

    この本の面白さは、折衝の駆け引きにあるといえる。交渉の場に立つ人の駆け引きが実に面白い。
    作者が、この本で描きたかったのは、生麦事件でイギリスと戦った薩摩藩とアメリカ、フランス、オランダと戦った長州藩が日本を変えることになったことのようである。
    (2008年9月26日・記)

  • 難しい時代をわかりやすく、しかもずっと緊張感があり、飽きさせない重厚な小説。

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