彰義隊 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117508

作品紹介・あらすじ

皇族でありながら、戊辰戦争で朝敵となった人物がいた-上野寛永寺山主・輪王寺宮能久親王は、鳥羽伏見での敗戦後、寛永寺で謹慎する徳川慶喜の恭順の意を朝廷に伝えるために奔走する。しかし、彰義隊に守護された宮は朝敵となり、さらには会津、米沢、仙台と諸国を落ちのびる。その数奇な人生を通して描かれる江戸時代の終焉。吉村文学が描いてきた幕末史の掉尾を飾る畢生の長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 薩長両藩を主力とした朝廷軍が、鳥羽伏見から幕府軍を敗退させ大阪へと迫るなか、苦境に立たされた徳川慶喜が密かに大坂城から抜け出し、天保山沖に停泊する幕府の艦船「開陽」で江戸に還るところから始まる本編は、上野寛永寺の山主であった皇族出の輪王子宮(りんのうじのみや)が、朝敵となった「彰義隊」との命運を分かちながら会津、米沢、仙台と諸国を落ち延びる数奇な生涯を追った長編歴史です。 最後の将軍 慶喜が寛永寺、水戸、駿府で謹慎するなか、德川家に忠義を貫ぬかんとして果てた人々の心根に、鎮魂の思いが沸々と込みあがります。

  • (新宿区立図書館リサイクル(廃棄)資料)
    書名は「彰義隊」だが主に輪王寺宮を中心に描いた歴史寄りの時代小説。上野戦争自体はそれほど詳しくは描かれていない。彰義隊と書かれるだけで当然そこに含まれる関宿藩士による卍(万字)隊など諸隊にも言及は無し。それはともかく戊辰戦争でも庄内藩に言及がないのはちょっとどうなのだろうか。ということから歴史小説ではなく歴史寄りだが時代小説と言う所以。輪王寺宮のその後を知るための参考にはなるが、全体的に人物はあまりうまく書けていないようである。なお、有栖川宮熾仁親王は完全に悪役扱いだがどの程度歴史的事実なのだろう?

  • 幕末時代の流れに流されて、良い悪いも関係なく
    滅んでいった人達がいた。可哀想、会津に近いので
    (ToT)

  • 彰義隊というより、数奇な運命を辿った輪王寺宮が主役で、上野戦争で破れ東北へと落ちのびる苦難が淡々とした筆致で描かれる。平時なら(あるいは勝者側なら)悠遊の生活を送った筈の高位者の逃避行がハイライト。旧幕勢力や奥羽越列藩同盟の旗頭に推戴されながら、味方が雲散霧消すると放り出されるという、常に受け身の存在に過ぎなかった前半生。輪王寺宮についてはここまでしか知らなかったので、その後の顛末は、かつての「朝敵」としては本懐だったように思えた。

  • 戊辰戦争で朝敵となった皇族がいた。
    二十代前半の若さで、先の見えない中で奔走する宮と彼を守ろうと供をする人々の苦難。
    和宮との婚約を破棄させられた有栖川宮熾仁親王の怨念。
    日本史を学んでても、ほとんど理解していなかったあたりの歴史を、この機会に学び直すことができた。
    幕末に生きた方々のお蔭で今がある。感謝。

  • 幕末、戊辰戦争後。
    輪王寺宮の数奇な人生と江戸時代の終焉。
    あまりスポットライトが当たらないところについて知ることができ、興味深かった。

  • 輪王寺宮の生涯を通して、明治維新を見る。
    徳川方という敗者の視点から見た歴史は、今までの話しとちょっと違って新鮮。
    40代で台湾で従軍中に病死というのも切ないものがあるが、その理由は理解できる。

  • なぜ慶喜は戦わずして江戸に帰ったのか?
    その思いを多くは語られていない。
    慶喜の周りの人達の動きが興味深い。

  • 江戸城無血開城前の動きから戊辰戦争の終結までを描く。タイトルは彰義隊だが上野寛永寺山主・輪王寺宮能久親王を中心に物語は進む。上野戦争の描写も細かい。

  • 著者の小説は逃亡をテーマにしたものが多いが、本著も輪王寺宮能久親王とその側近の戊辰戦争に沿った逃亡劇となっている。なので、終章とあとがきで振り返って彰義隊の記述がなければ、題名に少し違和感をおぼえる。内容は、主人公の生涯を全うするまでで、相変わらず事実に対する調査の執念を感じる。2020.10.21

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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