けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)

  • 247人登録
  • 3.54評価
    • (13)
    • (20)
    • (39)
    • (3)
    • (1)
  • 20レビュー
著者 : 安部公房
  • 新潮社 (1970年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121031

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドストエフスキー
安部 公房
安部 公房
フランツ・カフカ
谷崎 潤一郎
三島 由紀夫
安部 公房
遠藤 周作
有効な右矢印 無効な右矢印

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)の感想・レビュー・書評

  • 満州時代の経験が生きた佳作。哲学書じみた『終りし道の標べに』に比べると読みやすい。

    本作は、生と死の境目を綱渡りする決死の逃避行劇である。安部公房が生涯追い続けた「疎外」「人格の証明」といったテーマが既に表出している点が興味深い。また、夢や幻覚を用いた前衛的な雰囲気や、ひりひりするような現実的レトリックといった、後年の作風と繋がる面があるところも気になる。

  • 古本屋のワゴンセールで100円で投げ売られているのを発見し、お迎えする。今は絶版なので書店では手に入れられないので長らく探していた。ネットでは価格が高騰しているため手が出ず……
    『終わりし道の標に』のようなとっつきにくい作品を予想していたので随分読みやすかった。公房のほかの作品とは少し毛色が違うけれど、公房作品に漂う不条理はここでも健在である。公房の満州時代の体験が生かされているのだろうな、と思う。タイトルがとても作品の雰囲気にあっていてよい。登場人物が少ないがその分濃密な人間ドラマが描かれている。

  • ヤマザキマリのオススメ本として紹介されましたので初めての安部公房。終戦直後の満州から日本へ帰国する壮絶な旅。生きることの無条件の渇望に勇気をもらう。

  • 他人を利用し、利用される。戦時中の不幸な話と片付けられるだろうか。平和な生活をしていても、命のやり取りまではしないというだけで、基底にはそういう精神が伏流水のように存在しているのではないだろうか。私たちもまた、けものなのだろうか。

  • 凍てつく大地、果てしない曠野—極限の状況での生々しい描写により戦後の満州引揚の凄惨さが伝わってきた。希望も不条理も包含したリアルな物語が胸を打つ。

  • レビューによると、本作品単作の文庫本は絶版らしく、残念です。
    安部作品の根底には、アイデンティティの追求がある。
    渇望するからこそ、の結末に、胸が苦しくなりました。きっと現実はこのようなものなのでしょう。

  • 古風で、ぶっきらぼうな文体。

  • 敗戦直下の満州エリアを舞台としているが、今後の安部作品にはないリアリズム文体、語彙の豊富さが新鮮。冒険小説としても最大限おもしろい。おもしろいのだが、ラスト数行が安部印。現在、文庫版が絶版らしいのだか、これが一番好きという人もいるのではないか。

  • (1973.06.26読了)(1972.12.24購入)
    *解説目録より*
    ソ連軍が侵攻し、国府・八路軍が跳梁する敗戦前夜の満州―日本という故郷から根を断ち切られて、強力な政治の渦に巻き込まれた人間にとって脅迫のなかの〝自由〟とは何か? 既成の神話は地に墜ち、実在は裸形の姿を露呈する雪と氷に閉ざされた満州から、故国=日本をめざす人間の生の条件を描く長編。

    ☆関連図書(既読)
    「飢餓同盟」安部公房著、新潮文庫、1970.09.25
    「第四間氷期」安部公房著、新潮文庫、1970.11.10
    「反劇的人間」安部公房・キーン著、中公新書、1973.05.25
    「榎本武揚」安部公房著、中公文庫、1973.06.10

  • キメラ 満州国の肖像からの発展

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101121036
    ── 安部 公房《けものたちは故郷をめざす 1957‥‥講談社 197005‥ 新潮文庫》
     
    …… 「いよいよ明日に決まったぜ、南行きの列車が出るんだそうだ。」
    と入ってくるなり、熊中尉が言った。外套の肩にはりついていた雪の結
    晶が、ちぢんで水滴にかわる。
    「明日だって?」アレクサンドロフ中尉はかがみこんでいたスープ皿か
    ら半分だけ顔をあげて、疑わしげに相手をみた。
    「じやあ、十二号鉄橋地区の国府軍は、どうなった?」
    「消えちゃったらしいね。」「消えた?」
    「逃亡したんだろうと思うな……それで、明朝九時に出発ときまったわ
    けだ。」(それじゃ、おれの脱出も、とうとう今夜に決まったな。)
    ――とストーブの灰をかきまぜながら久木久三は思った。そのはずみに
    手がふるえ、ロストルが傾き、赤い火の塊りが床にこぼれてしゅうしゅ
    う音をたてながら煙をはいた。「注意!」とアレクサンドロフが匙で軽
    く皿の緑をうって、事務的に言った。
    「鉄嶺(テイエリン)まで直行らしいよ。」と熊がストーブの上のスー
    プ鍋をのぞきこんで目をほそめた。
    「うまくいくとおれたちも、来年のいまごろは、ウラル越えだな……」
    「そいつをいっぱい、ためしてみるかね?」(第一章 錆びた線路 1)
    ── 安部 公房《けものたちは故郷をめざす 195701‥-04‥ 群像》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/B000JAV43S
    ── 荒 正人・編《新日本文学全集 29 1964‥‥ 集英社》福永 武彦・安部 公房 集
     
    http://uraaozora.jpn.org/abekemono.html(リンク切れ)
     近現代日本文学史年表 1868~2007
    http://uraaozora.jpn.org/index2.html(リンク切れ)
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20080520
     鮭の実家 ~ さかなたちは故郷をめざす ~
     
    (20110601-20140612)
     

  • あと一歩なのにっ。自身の満州体験を活かした、大陸を渡る冒険の旅。男たちの無骨さと間抜けさをジリジリくる表現で描き、ラストまで気を許させない。ニュアンスでいう国籍の本質に迫った、絶版の佳作。

  • 息苦しい。もどかしい。救いがない。
    どこかに救いが与えられる場所はないのかとあがき続ける彼ら。その方法がどんなに卑怯でも愚かでも、それは生きてゆくための術。
    …どこでも同じなんですよ、苦しい場所は。

  • ソ連軍が侵攻し、国府・八路軍が跳梁する敗戦前夜の満州、敵か味方か、国籍もわからぬ男とともに、ひたすら南を目指す少年久木久三―(中略)―雪と氷に閉ざされた満州から故国=日本をめざす人間の生の条件を描く長編。
    (裏表紙より引用)

    中期〜後期の作品とは一味違った安部ワールド。
    とてもリアルなストーリーで、じわじわと生への狂気が感じられます。
    創作物語といえ、「こんなになっても生きていられるんだな・・・」と思えてきます。
    痛いシーンもあり、目を背けたくなる(活字を読んでるのだから、この表現は不適切かも・・・)ことも。

    読みながら、不安が広がっていったんだけれど、最終的にその不安が杞憂ではなかったことを確信させられます。
    途中、精神的にも身体的にもズタボロになっても、なんとなく希望を感じましたが、いざ故郷を目前にしたときほど恐ろしく絶望した瞬間はありません。
    ラスト、若干飢餓同盟に似てるような。

    そういえばこの作品、女性がほとんど出てきませんでした。
    それがリアルさに拍車をかけていたようです。
    安部さんの描かれる女性って、どこか幻想的なので。


    色々な作品を読んで気づいたんですけど、刷新前の作品は「基本的に」真知さんが表紙絵を描かれてたんですね。
    この作品の表紙、不安を煽るような絵ですごく好きです。

    アマゾンで注文しよーかなーと思ったけど絶版ぽいですね・・・(´・ω・`)
    中古で入手するか・・・と思って検索かけたら高いwwwww
    頑張ります。

  • 『砂の女』と同じく読んでてひたすら疲れてくる。

    ―――人間関係と自然観鏡とが、悪意をもって身に迫ってくるとき、既成の社会秩序は意味を失うほかはない。―――   解説より

  • 仮想現実に凍えつつ読了。読んでっと寒くなる程の悲惨な境遇、ロシアの道行き。鼻の内側が吸った空気で凍りむずがゆくなるような感覚!かくして主人公は逃げるわけだけども、結局自分が逃げるところまでが想定内の動きなんであって、逃げることで何も変わらないばかりか寧ろますます相手の思うがままに行動している事になるんではなかろうかと考え始めると止まらなくてもがくようにやはり逃げるんだけどもそれだってつまり・・・・焦燥感にクソ寒さが加わって肌の外側が赤くて痒くてかきむしられるようなのは胸の内だけどもやるせなさが収まる事はまるで無く いつになったら檻の内側に入ることが出来るんだろう・・そう、つまりこの話は檻から外へ出ようと逃げる話ではなく、逃げて逃げてほうほうのていで庇護の檻に通じる入り口を見つけたにもかかわらず、いつまで経っても締め出しを食らわされ続ける少年の物語なのである。
    自然は逃亡を阻み、けれど街は侵入を拒む。
    そういう話。

  • 折角なので手持ちのアベキミ本をまとめて追加。中でも水中都市を別にして一番好きなのはこれです。

  • 何回でも読みたいと思う

全20件中 1 - 20件を表示

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)に関連する談話室の質問

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)を本棚に「積読」で登録しているひと

ツイートする