幽霊はここにいる・どれい狩り (新潮文庫 あ 4-6)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121062

感想・レビュー・書評

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  • 昭和33年6月20日 俳優座にて初演された安部公房の戯曲。今月 主演・神山智洋で上演されるので予習。
    この文庫も絶版になっちゃってるので、図書館で 昭和46年発行の本を借りる。

    つまり、64年前に書かれたお芝居なわけだが、テンポよく軽やか、ドタバタ感もある詐欺コメディとでもいいましょうか、ただお話の核には 濃厚に戦後の空気がある。

    主人公の深川が ある田舎町にひょっと現れる、そして「幽霊が見える」「幽霊は自分の身元を知りたがっている」というところから話が始まる。

    幽霊が見えるなんて嘘だろう、いやホントだ、嘘ついてるにちがいない、にゃーにゃーにゃー 実は...... という展開を容易に想像しちゃうわけだが、面白いのは そこから金儲けの話が展開し、どんどん膨らんでいく。

    安部公房氏自身の言葉によると 幽霊のような非存在物は論理化される(例:幽霊=枯尾花)ことにより消滅するのだが、この芝居ではそうはならない。商品という門をくぐらせて 社会的存在物にしてしまう。
    そのように資本主義社会を軽やかに嗤うんだよね、この戯曲。でも、そのど真ん中で、主人公の深川は魂をかかえてずっとうずくまっているのかもしれない。。。

    60年も前の作品なので、女性の扱いなど 今の感覚にそぐわない部分もある。戦争の残像も 説明抜きではわかりづらい年齢層の観客も多いだろう。
    今回の舞台化演出は 稲葉 賀恵氏。
    https://www.kaeinaba.com/about-me

    初演演出 千田是也 主演 田中邦衛も 楽しみに見に来そう。新潮社さん、文庫復刊してください!

  • 安部公房 「幽霊はここにいる どれい狩り」戯曲3編。小説と比べると、シュールや奇抜な設定は 抑え目。表題2作は 滑稽な人物設定、言葉遊びのセリフが目立つ。


    「どれい狩り」は ドリフのコントみたい(子供が好きそう)


    「幽霊はここにいる」は ミュージカル風。
    幽霊を有形化、人間化、商品化することにより、畏れを お金に変える展開。資本主義に対する皮肉?


    誰かが 金を払うから モノに値打ちが生ずる〜幽霊に 人間のような 自尊心や姓名を与えたり、幽霊の保険や服など 商品化することにより、誰かがお金を払うなら、幽霊にも価値があるという論調


    「制服」誤った権威が横行する 戦争占領下の朝鮮 を舞台とする人間の狂気の物語。制服は 権威の象徴。重いテーマだが 善悪がはっきりしていて 人物像や物語は 単純。舞台で見るには わかりやすいと思う


    「制服」
    *停年した巡査が退職金で 日本に戻り 妻と安泰な生活を過ごそうとしたのに 妻に殺される不条理
    *巡査の制服による権威を 自分自身に備わったものと信じていたが 停年して権威を失った男の滑稽さ
    *狂気の世界「腹が減りすぎた犬に食えねえ肉の塊を見せりゃ 気が狂うのは 当たり前」


    「幽霊はここにいる」
    *幽霊の自尊心〜生きている人間らしくしたい
    *幽霊後援会や幽霊会館の設立、幽霊保険、幽霊服

  • 2016.12.1(木)¥100(-2割引き)+税。
    2016.12.5(月)。

  • 「幽霊はここにいる」の朗読劇を読書会でやった。帰りに駅で某人に会い、こういうのをやった、と話してたら、ま、安部公房だから話は「砂の器」じゃなかった、「砂の女」の話になり。で、某人が「ナポレオン狂・・・?」と仰った。
    ・・・
    ここで小生は思ったねー。

    言っちゃなんだが、安部公房と阿刀田高。いくら現・日本ペンクラブ会長の直木賞受賞作とはいえ、知名度は・・・でしょ?直木賞受賞作ったって、150以上あるんだし。

    (受賞作一覧。
    http://www.bunshun.co.jp/award/naoki/list1.htm
    パッと内容思い出せるの、いくつあります?
    私、10もないです・・・)

    にも関わらず、だ。
    それくらい「ナポレオン狂」ってタイトルは
    内容とリンクしやすいタイトルなわけだ。

    だからどーよ、って話じゃないんですが。
    ま、ほどほどに酔っていたので〜

  • 「幽霊はここにいる」「闖入者」が面白い!

  • 「笑う月」でウエーの事が書かれていて、興味を持ったので読んでみました。
    この作品、戯曲だったんですね。読み始めて気づきました。
    ご本人自身、小説家でありながら劇作家・演出家であり、劇団も立ちあげていらっしゃっいましたもんね。
    これ、劇で見たら面白そうだな〜〜って思います。

    「制服」「どれい狩り」「幽霊はここにいる」の三作品が収録されています。
    表題作2作、面白かったです。制服も面白かったですが、短めで、私の中ではちょっとインパクトに欠けました。
    「どれい狩り」は哲学的な作品ですね。ウエーイズム・・・。
    「幽霊はここにいる」は、最後に、タイトルの意味が解ります。おお!って感じですw
    これが発表された、1959年だったらまた違った面白さがあると思うんですが、現代だったらちょっと有りえない話ですね。悪徳商法としてあるかな?

    いずれも溌剌とした女の子が活躍する作品で、小説とはまた違った雰囲気です。
    さらに、お金にまつわる話が多かったです。
    人間のさもしさを感じます。

    安部公房スタジオに田中邦衛が居たとは・・・知らなかったな。
    これ舞台で見たらすごい面白いだろ〜な・・・・。

  • 霊感商法まがいの某スピリチュアルなんぞが罷り通っている現代日本を予見しているかのごとき「幽霊はここにいる」をはじめ、佳作揃いの戯曲三篇。全篇、黒い笑いに満ちています。

  • 『制服』 『どれい狩り』 『幽霊はここにいる』の戯曲三作品。

    個人的には『どれい狩り』が一番面白かった。
    「ウェー」という人間そっくりの生物。
    「ウェー」を人間であると証明できないくだりが『人間そっくり』の火星人とだぶる。

  • 2008/8/26購入

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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