水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

  • 1105人登録
  • 3.59評価
    • (83)
    • (108)
    • (234)
    • (9)
    • (4)
  • 96レビュー
著者 : 安部公房
  • 新潮社 (1973年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121079

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
安部 公房
遠藤 周作
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。

  • 政治色の濃い短編集。「言うまでもなく、ドレイがドレイらしくなり、支配者が支配者らしくなること、そのためにはドレイの力を分裂させる必要がある。神兵たちは結局海賊にすぎない」という一行が読後も日常に潜む影のようにじわじわと重低音で響いてくるようで、本書の中ではちょっと毛色の違う『イソップの裁判』はデマで裁かれてしまう世の風刺が印象深い。ユーモラスに欠ける、とあとがきには書かれているけれども、不穏な空気が漂う昨今の世界情勢とその背景に目を向けたとき何度か読み返したくなる作品でもあると思う。それから強烈なのが『闖入者』で、ある集団に寄生された宿主のその悲劇には、民主主義を背景にしたマイノリティの末路が一欠片の救いもなく描かれており、絶望感と嫌悪感で読んでいてもの凄く疲れる内容。死へと追い詰められていく主人公の姿に、悪夢から目覚めることなく逝ってしまった人の不条理を生々しく味わうことになり、また次のターゲットを求めて移動していく搾取側の姿からは、まるで稲を食い尽くしたイナゴの飛蝗(西部劇でみられる惨状にも似ている)が思い浮かんで不快極まりない。人の世の本質が純粋に抽出されているような作品群に思えた。

  • なかなかグロい表現も散りばめられてましたが,読みやすい寓話集でした。
    空中楼閣の場面展開が一番ついていけなかった感じ。
    闖入者のあまりにも傲慢というか無慈悲というかそういうテイストは生理的にキツイです。
    水中都市と鉄砲屋がスイスイ読めました。
    「男は一生に一度妊娠して死を産み出す」が一番強烈な節だったなぁ。

  • 安部公房の短編集で、やはり不思議な世界観が詰め込まれた作品です。砂の女や箱男を気に入った人が読むと、この世界感がついていけない人が多いと思う。最近、小説は安部公房ばかりを読んでいて、その世界感と文体に想像の仕方になんだか変な癖ができてしまった。濃いメタファーの味付け料理で、なんだか舌が飽きてしまったような気がする。安部公房の作品はとても好きなのだけれど、どれも作品の根底にあるものが似ている気がしてならない。これは村上春樹にも感じる感覚。色んな深海に潜っても、見える世界は同じというか。

  • なんだかおかしな話ばかりだなぁ、という印象。ドナルド・キーンさんが解説で言っているように「深く考えず、まずは感じろ!」ということかな。
    この本に収録された作品の中では、『手』が好きだ。なんとなくオスカー・ワイルドの『幸福な王子』を思い出した。
    社会を皮肉っているのかな、と思う箇所もところどころあったが、それが話の主軸ではない感じ。人が植物になったり、魚になったり、なんだこりゃな展開があるかと思えば、突如ハッとする文章が織り込まれていたりして気が抜けない。読む人読む人それぞれ違った感じ方ができる作品たちだと思う。私は漠然とだけど「怖い」と感じた。何が、と言われると困るのだが、たぶんこの変な話の中だけでなく現実でだって理不尽でおかしなことはたくさんあるのに、それを「変だ」と思わず当たり前のこととして受け入れているだけなんじゃないのか、と言われている気がするからかも。

  • 安部公房作品としてはイメージを想像しやすい小説です。私の場合、これまでに読んだ安部公房の他の小説は、感じることに加えてかなり考えないと心と脳に浸透してこない感じなのですが、こちらはどの時代の何がモチーフになっているのか想像力の手が届きやすいと思いました。

  • 私は長編が好みなのだが、この短編集はそれはそれで面白かった。ドナルド・キーンさんの解説に同意。カフカと比較されることが多いし、結末は大抵不幸なのだが、なぜかカフカ作品に漂う救われなさは低め。

    それと、作者本人しか分からないことをほじくったり、カフカの影響のあるなしの論議にとらわれず、楽しめばいいに烈しく同意。読書会なるものにも参加し、夏目漱石の「こころ」については解説本なるものを読んでしまったが、その経験を経て、あまり重要ではないと思った。

    夢十夜もゆりがなにを意味するかを考えるより、私はその幻想的な光景を頭に描き出す方が好きだ。

    でも、この短編集は人間誰でもが持つ性情を大げさに描き出すとどの性質も怖いなぁという感想。

    「手」伝書鳩とその飼い主の輪廻転生の関係を描いた作品。なんだか、心に残った。

    「飢えた皮膚」は、ただ怖い。

    「闖入者」は民主主義の多数決に対する警鐘なのかな?ある日、家族が家や生活、お金を乗っ取り、反抗すると多数決による正義を主張されてしまう。少し怖い。

    「鉄砲屋」もどこか実際にありそうな範囲なのが安部作品の怖いところだ。死の商人についての話。

  • 箱男が個人的に難解だったので少しとっつきにくい印象を抱いていたけれども、この短編集に入っている作品はどれも話の展開がわかりやすく、伝奇的で面白かった。「闖入者」が好き。

  • デンドロカカリヤって言いたいだけやん。

  • 安部公房の一部ドタバタも含むSF中心の短編集。青年が突然、珍しい木「デンドロカカリヤ」に変化する。夜中に突然現れた見知らぬ家族によって家が乗っ取られるなど、わかりやすい恐怖から、世の中が知らぬ間に水の底になって、人間が人喰い魚に鳴ってしまうなど、常識の根本が覆されてしまうものまで、多彩な作品群。

    様々な表現が文学的で、理解するのに時間がかかることを除けば、筒井康隆や小松左京を読んできた人にとっては、非常に面白い本と感じるであろう。特に気になるのは、作中人物の思考だと思って読んでいると、急に第三者の視点のような表現が織り込まれるところ。

    こういう作品群から、現代文の問題を出されたら、絶対解けない自信がある。

    それはそうと、いくら文学的な表現が多くとも、この本全部がエンターテインメントである。面白くて楽しくて恐い。おそらく作者も楽しんで書いていたはずで、そこを踏まえて、ついている解説が結構的はずれではないかと思うのだが、読まなきゃ良いんだな。

  • 多分初めて読んだ安部公房だったと思う。
    ここで無頼派にハマった。
    若いうちに読んどいて良かった。

  • 大半は理解出来なかったが、引き込まれる何かがある。

    手と闖入者が好き。

  • 安部公房の短編集。全体を通すテーマは変形と擬人化といえようか。些か読者を突き放した感は安部作品の特徴といえよう。それが何かは説明せず物語は進み、何を描いているかぼんやり見えてきたとしても、それが何を示しているのかははっきりさせない。それは著者の世界観の作り込みと作り上げた世界への移入が完全なものなため、読者に立ち入る隙を与えないのだろう。

    「デンドロカカリヤ」は星新一の「クラムボン」を思い起こさせたが、あちらが童話的なのに対しこちらは寓話的である。しかし何を風刺しているかは筆者にしかわからない。それでよいのだ。何か異次元の世界を描き、読者が一端を垣間見る、それが安部公房作品の楽しみ方でもあるのだから。

  • 2015/10/12/Mon.〜10/28/Wed.

  • 期限が来て途中で返してしまった。また借りよう。
    このひとやばいわね。
    文体とか物語のセンスが図抜けてやばい。
    すごい好きかも。
    気になってて手に取ったことなくて、この前恩田さんの小説に出てきたから読んでみたのだけど。

  • 2015/05/10

    デンドロカカリヤ/手/飢えた皮膚/詩人の生涯/空中楼閣/闖入者/ノアの方舟/プルートーのわな/水中都市/鉄砲屋/イソップの裁判

  • 『手』『闖入者』『水中都市』が好き。 三つとも毛色は違うけど、気に入ったのだから仕方がない。
    安部公房で始めて手に取った文庫。 動物や植物への変身を物語に組み込んでいることが多く、それが他著者の変身物語と比べて当然のことのように取り扱われている。著者にとって肝心なのは変身そのものではなく、そこから生み出される雰囲気であり、象徴性であったのだろうかと感じた。
    常識の破綻を当然とする展開のおかげで、夢を見ているような気分にさせられる。楽しい夢ではないことが多いが、進行のテンポが良いため、夢だからそんなもんだよねとやや強引に納得させられてしまう。

    あとがきではカフカやリルケを似た作品として挙げていたけど・・・夢野久作あたりも近・・・くもないかな? いや、目指している方向は違う気がする。もしくはアンナ・カヴァン? それも違う気がする。

    まあ類似を探すよりも、作品が醸し出すこの素晴らしい夢の雰囲気を素直に楽しむのが一番。ひとつ読んで気に入ったら片っ端からどうぞ。

    自治医大店 田崎

  • 安部公房は短編のほうが輝くような気がするのは私だけかしら。「デンドロカカリヤ」がすばらしい。

  • 圧倒的想像力というか空想力!
    安部公房の頭の中ってどんなことになってるんだろう。
    実存への不安感とシュールさでぐらぐらする、面白い!!

  • 脳内宇宙です。
    いつも誰かに見張られているような視点があり、逃げたり、対峙したり、無視したり、囚われたり。
    脳内世界へようこそ。

  • 父親を名乗る男が奇怪な魚に生まれ変わり街が水中世界に変わっていく。青年が見慣れぬ植物になっていく。等々、阿部公房の傑作短編集。もちろん優れた文学なわけだが、まーぶっちゃけカフカのような世界観がマジキチw

  • 『水中都市』
    男が妊娠して産むのは死だ、というくだりがすごく印象的。面白い。

  • 初期の作品に社会主義革命的思想があったことはちょっと驚き

  • ≪デンドロカカリヤ≫
    不気味な語り口で綴られた、“コモン君がデンドロカカリヤになった話”。
    ぼくらはみんな、不安の向うに一本の植物をもっている。伝染病かもしれないね。植物になったという人の話が、近頃めっきり増えたようだよ。(p.9)

    “植物になる”ということが、現在の喪失、自殺した人間、精神分裂などのパラフレーズとして使われているのかな。
    結末にはゾッとした。

    ≪手≫
    この物語の展開には思わず唸ってしまった。
    かつての伝書鳩“おれ”が、観念化され銅像となり、
    さらにその銅像の足首を鋸で切ろうとしている“手”
    この設定だけでも脱帽したくなるのだが、そこからさらにストーリーが加わっていく。
    なんとも言えない読後感を味わった。

    ≪飢えた皮膚≫
    貧乏人が金持ち夫人に復讐する話。
    夫人が薬物にはまっていく姿がブラックに描かれている。
    身体の色が変わってしまう病気というアイディアが安部公房らしい。

    ≪詩人の生涯≫
    糸車に巻き込まれた老婆が糸になり、その糸からジャケツが作られる。
    買い手もなく彷徨いはじめたジャケツは、詩人である息子の前に立つ。
    冬の厳しい寒さと春の訪れを感じさせる文章が印象深い。

    ≪空中楼閣≫
    無職の男のアパートの前に貼られていた“空中楼閣建設事務所”の工員募集。
    実体のない職業に、採用されたと思い込んだ男はどんどん狂っていく。

    ≪闖入者≫
    夜更けに突然やってきて、住み込み始めた闖入者9人家族。
    彼らをなんとかして追い出そうと、男は奮闘する。
    この設定も怖いな…特に一人暮らしには。
    都市伝説とかでありそう。
    孤独になっていく現代社会の生への皮肉だと思う。

    ≪ノアの方舟≫
    私はノア先生を見捨て、方舟を見捨て、そして村を永久に去ることにしました。今となって、私にねがえることはただ、この愚かなアル中患者に関する伝説が、せめて誤り伝えられぬことをねがうだけでした。

    この最後の文章がすべてを語っている気がする。
    ノア先生のめちゃくちゃな天地創造論も面白かった。

    ≪プルートーのわな≫
    猫に鈴をつけに行くのは誰だ?
    安部公房版イソップ童話。

    ≪水中都市≫
    魚になるとは、どういうことか?
    父親を名乗る男が、魚になっていく描写は、生臭ささえ漂ってくるようで、
    想像するとかなりグロテスク。

    ≪鉄砲屋≫
    安部公房には珍しい、政治色が濃い作品。
    その中でも、“雁もどき”の大群の襲来に備えて銃を売るという、
    奇想天外なアイディアで異世界感たっぷり。

    ≪イソップの裁判≫
    少し分かりにくかったけど、“噂”というもののいい加減さを皮肉った作品なのかな。

全96件中 1 - 25件を表示

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)に関連する談話室の質問

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

ツイートする