水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121079

感想・レビュー・書評

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  • 表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。

  • 安部公房の作品という感じでとても良かった。この世界に身を浸すことが楽しい。意味や風刺はもちろん私には読み取りきれない。でもそれでもいい、そのまま作品を楽しめばいいと解説に書いてあって楽な気持ちになった。純粋に安部公房の描く世界の美しさと不可思議さと、その文体の見事さに浸って良いのだと思った。

  • 11の無慈悲な短編集
    シニカル・ウィット・刹那・苦悩に溢れ
    あらゆる人間の負の感情を曝け出すも
    対極にある無頼な世界に帰結する

    タイトル2作も情け容赦ない末路を辿るが
    “何か”を犠牲にする事で救われたような…
    無責任な安堵が心を満たした

  • 面白い

  • 箱男を数年前に読んだ以来の安部公房。
    この人の文章によって思い描く景色は、古いビデオテープに録画した古い映画のような、ざらざらした触感の音声と映像で再生される。
    そうして再生された景色も、埃と砂でざらざらしている。

    また、この与太話の説得力は何だろうか。
    「ショウチュウを飲みすぎると魚になる」とか、酔っ払いの戯言のようなのに、なんとなく「そういうもんかな」と思わせる。
    起承転結が夢のようにチグハグで、読み終わってすぐは「なんだこれは」と思うのに、なんとなく腑に落ち…いや落ちないわ。全然落ちない。その腑に落ちなさと不条理が良い。

    あまり深く考えない方が楽しく読めるのかもしれない。
    ざらざらした貧しい雰囲気と与太話を楽しむには。

  • 安部公房は以前別のを読もうとして全く入り込めなかった過去があったので避けてたけど、今回これを読んでみたらすごく面白くてすらすら読めました。

    シュールで不思議な雰囲気で、社会や政治への風刺が多い短編集だったかなという印象です。
    とんでもなくシュールってわけでもなく入り込みやすい気がします。
    後味は全体的に良くはないですね。ハッピーエンドではない…。

    『デンドロカカリヤ』が一番好きで、『手』『闖入者』あたりも好きです。

    これを機に安部公房作品もっと読んでいきたいなぁ。

  • 安部公房の一部ドタバタも含むSF中心の短編集。青年が突然、珍しい木「デンドロカカリヤ」に変化する。夜中に突然現れた見知らぬ家族によって家が乗っ取られるなど、わかりやすい恐怖から、世の中が知らぬ間に水の底になって、人間が人喰い魚に鳴ってしまうなど、常識の根本が覆されてしまうものまで、多彩な作品群。

    様々な表現が文学的で、理解するのに時間がかかることを除けば、筒井康隆や小松左京を読んできた人にとっては、非常に面白い本と感じるであろう。特に気になるのは、作中人物の思考だと思って読んでいると、急に第三者の視点のような表現が織り込まれるところ。

    こういう作品群から、現代文の問題を出されたら、絶対解けない自信がある。

    それはそうと、いくら文学的な表現が多くとも、この本全部がエンターテインメントである。面白くて楽しくて恐い。おそらく作者も楽しんで書いていたはずで、そこを踏まえて、ついている解説が結構的はずれではないかと思うのだが、読まなきゃ良いんだな。

  • 多分初めて読んだ安部公房だったと思う。
    ここで無頼派にハマった。
    若いうちに読んどいて良かった。

  • 圧倒的想像力というか空想力!
    安部公房の頭の中ってどんなことになってるんだろう。
    実存への不安感とシュールさでぐらぐらする、面白い!!

  • 『水中都市』
    男が妊娠して産むのは死だ、というくだりがすごく印象的。面白い。

著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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