R62号の発明・鉛の卵 (新潮文庫)

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著者 : 安部公房
  • 新潮社 (1974年8月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121093

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R62号の発明・鉛の卵 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 『犬』が個人的にはツボで、人物描写でこれほど笑えるのは漱石やドストエフスキー、町田康(『河原のアパラ』の辺り)だろうか。全体的には、理不尽で残酷な現実に対置された誠実さ・純粋さが物語の中で渦巻いて、いつしか逆転しているようなシュールな結末が鮮やか。ゴヤの描く『我が子を食らうサトゥルヌス(クロノス)』のような迫力があり、登場する子供達の背負った不幸が印象深い(特に『死んだ娘が歌った』)。

  • 表題作2編の結末の色合いが全く異なるので、上手い本の題名つけたなぁ、と別なところで感心。
    久しぶりの安部作品。彼の永遠の命題はアイデンティティー。
    どの作品も、なにか、なにかが揺さぶられる短編ばかりです。

  • 機械になったり幽霊になったり、盲腸だけ動物になったり、棒になったり……もとは人間だったものがこの1冊の中であれこれ変わっていくのだが、その変化に個人の意識がもっと抵抗するかと思いきや、意外と順応性があるので、けっこう内容的にはグロイ面がありながら笑ってしまいそうになる。ところがそういう展開が短篇の形で繰り返されると、表面的には諦めて適応しようとしているように見える思考の裏で、自己が消えてしまいそうな不安を抱えて右往左往している様子が目に浮かんでくる。これは、登場人物たちの「器」に引っ張り込まれた読み手が動揺して抗うせいなのか。
    それまでの己の立ち位置や価値観が崩壊した後の自己構築は、容易ではない。

  • 安部公房との出会いは、高校2年生の時に使用していた現代文の教科書の中だった。
    本書にも収録されている「棒」という素っ気ないタイトルが冠せられた10ページ程度の作品で、非条理、無説明、急展開な内容に惹きつけられた。
    数年後に「砂の女」を読み、少し違う雰囲気だけど良いなと思い、「棒」を連想させるタイトルの「壁」の世界観は自分にははまらず、「箱男」にもそこまではまらなかった。

    しかし、短編集である本書は、良い意味で作者の混沌さが薄れており、良質なSFものとして楽しめる。
    それらはサイエンスフィクションでもあり、藤子不二雄に絵を付けてほしい 少し不思議な物語でもある。
    時代背景や設定も現代、近未来、遠い未来、ディストピア化した社会など豊富で飽きさせない。

    個人的に面白いと思ったのは、犯罪行為を生業とする会社の社員心得だ。
    「犯罪者は、犯罪を生産するばかりでなく、また刑法を、刑法の教授を、さらにこの教授が自己の講義を商品として売るために必要な講義要綱を生産する」という挑発的な序文から始まり、犯罪という行為から生まれたものや、美徳についての文章に唸らされる。

  • 「砂の女」「箱男」など長編小説のような 永遠と続きそうな 不条理は 感じないため読みやすい

    死の世界や悪夢を描いた小説が多い。気持ち悪い小説だが、終わりまで 止まらない

    現実社会の設定の中に グロテスクな空想が入ってくると 頭が混乱する

  • 長編作品とは違って「ありがち」な印象の結末が多いような気がした。
    ただ「棒」は60年前の作品とは思えないほど斬新な印象があったし、「変形の記憶」はちょっとワクワクさせられる面白さがあった。

  • 久しぶりに安部公房読んだなあ。20年ぶりくらいか?やっぱり祖父江慎デザインの全集買えばよかったかなー。

    鉛の卵が素晴らしかった。着想が奇抜で、文章がきれい。感情に流されまいとしながら最後脱力、落胆に見舞われるひとびとがありありと浮かぶ。

  • 「世にも奇妙な物語」と言えば分かりやすいと思います。短編ですからね。読みやすいですが、あっさりとしていて、私はどちらかというと、同氏の長編のほうが好きなようです。

    <掲載作品の一覧>
    R62号の発明
    パニック

    変形の記憶
    死んだ娘が歌った
    盲腸

    人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち
    鍵耳の値段
    鏡と呼子
    鉛の卵

  • 40年以上前の作品とは信じられないような先見性に富んだ短編集である。特に表題作の「R62号の発明」は昨今盛り上がりを見せる第三次ロボット・AIブームの将来を極めてシュールに予見しているようだ。効率性を追求した結果、ロボットの一部として人間を組み込むという発想はなんともシニカルである。

    本書は、各作品のみならず解説もなかなかの鋭さを持っている。無機質と有機質を等価に相互交換しながら描く安部公房の手法をとき解いており、なるほどなと思わされる。

  • 安部公房にしては、アバンギャルド具合がそこまで高くなく、比較的読みやすい。
    R62号の発明、鉛の卵は、星新一的SFの匂いを感じた。

  • 単純な「SF」でもないのだけれど。
    不可思議で怪しげな短編集。

  • 「鉛の卵」が一番良かったかな。カフカ的迷宮と不条理を備えた短編集。当時はかなり前衛的作品だったのだろうなと思う。最後にドンと突き放される不気味さは安部公房の魅力の一つであると思う。安部公房作品時間をかけて少しずつ読破していきたい。2012/679

  • 安部公房の珍しい短篇集というか、ショートショートなのだけど、解説を読むとそうでもないとのこと。たくさん短編を書いていたらしい。

    表題作2作は、最後のオチがえげつない/薄気味悪いのを除いて、星新一が書きそうなショートショートSF。「R・田中一郎」もこれが元ネタだったりして。その他はちょっとした事件の話だとかなんだけど、なんとなく全てに「死」というテーマがあるように感じた。

    作によって傾向が違うところがあるものの、短編ともあって読みやすい。引っかかるとすると、安部公房独特の形容詞(名刺で形容するのだ)遣いであり、そこを乗り越えるとスッと入ってくる。ただ、「砂の女」「人間そっくり」「燃えつきた地図」「方舟さくら丸」のように、1冊丸々を畳み掛けるように読む醍醐味は味わえないので、読みやすいからといって初心者向けではないように感じる。

    とりあえず、作と作の間のギャップが大きくて、読んでいる時間以上に時間がかかったように感じた。わかりやすくて面白いのは間違いないですよ。

  • 風刺とかそういうのが一番の魅力なんだろうけど、やっぱり登場人物が抑圧され続けるのが面白い。戦場の物理的な不快感や、自分の状況からくるどうしようもない絶望感とか、そういうのが何重にも押し潰そうとしてきて、でも何もできない。一番好きだったのは、死んだ娘が歌った…

  • ①R62号の発明
    機械vs人間。現在だとどっちが勝つかな?

    ②パニック
    ①と同じで失業者から話が始まります。
    “パニック商事”って、三島で似たようなのがあったような??

    ③犬
    ネコが喋るようになるのがサキにありますが、
    これは・・・気味悪い。中勘助のみたい。
    犬が嫌いになるな・・・ ^^;

    ④変形の記録
    敗戦期、戦場でコレラに罹り味方に射殺されたK。
    そりゃ成仏できませんわ。

    ⑤死んだ娘が歌った
    ④の女性版。想い人の名がKってことは、スピンオフ??

    ⑥盲腸
    羊の盲腸を移植した男、K。
    これって、アルジャーノンでは??

    ⑦棒
    デパートの屋上から墜落して棒になる父親。
    カフカの「橋」みたいです。

    ⑧人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち
    「なぜ私らが君たちを食っちゃいけないのかね?」わはは~。
    紳士達が盲人や隻腕なのが、
    ダールの「南から来た男」を思わせて不気味。

    ⑨鍵
    訪ねて行ったら、すごい変な叔父さんだった・・・
    嘘発見器の盲人の娘って ^^;;

    ⑩耳の値段
    保険金詐欺、なんでしょうか。ドイルの「ボール箱」とか
    「ブルーベルベット」とか、耳って痛そう。

    ⑪鏡と呼子
    「陥穽と振子」くらい格好いい題名ですが、
    ただの遺産争いなんで、あんなに怖くないです ^^
    街全体でグルな感じがイヤ~ん! 

    ⑫鉛の卵
    出だしは面白かったけど、オチが星新一みたい~

  • 重い暗い。さらに「空の怪物アグイー」と一緒に借りたのは失敗だった。

  •  安部公房著。12篇収録。
     割と初期に書かれたものだからなのか、いろいろな話を著者が書こうとしている気がした。
     表題作の「R62号の発明」や「鉛の卵」などのSFは、それほど面白いと感じなかった。当時は新鮮だったのかもしれないが、今読むとそこまで衝撃はない。
     個人的に好きだったのは、「犬」「変形の記録」「盲腸」「棒」の四つだ。どれもいかにも安部公房的な、現実的だがシュールでブラックユーモアあふれる設定、常識とされている価値観の転換、乾いた文体のグロテスクな表現、が堪能できる。そして何よりラストが秀逸だ。ストーリーとしてはこれで終わりだが主人公達にはこれから徒労に満ちた旅が待っている、といった余韻。短編小説としてはベストな終わり方だと思う。

  • 【500】

    3ヶ月くらい読み終わるのにかかった。
    表題の二つはイメージもしやすく面白かったー。
    でも時代背景とか人物背景をもうちっと知らないと分からないとこも多いんだよな…

  • 以下引用。

    「それじゃ教えてあげるが、法律というものはだね、なにもしなかったということに保証をあたえてくれたりするものじゃないんだよ。必要なのは、具体的なあることに関して、それをしなかったという事実だけ。つまり法にかなった人生というものは、あらゆる行為がつねになにかのアリバイになっているように、きちんと計画された人生のことなんだ。やれやれ、君らにこんなことを言うなんて、私はまたなんて親切なおせっかい屋なんだろう。さ、これ以上は、もう何をいっても駄目だよ」(p.236)

  • ≪R62号の発明≫
    失業し、自殺を決意した男が、居合わせたアルバイト学生から「死体をゆずってほしい」と頼まれる。しかも、生きたまま、死んだつもりになって…。
    連れて行かれた事務所で、男はR62号という工作用ロボットに改造されてしまう。
    偶然にも“生前”クビを切られた製作所に派遣されたR62号は、「人間合理化の機械」を発明し、人間に復讐する。

    ロボットの形体の描写は少なく、R62号は自由意思を失った人間のよう。
    ロボットのように働かされ、ロボットに仕事を奪われ、ロボットによって働かされる。
    そんな現代の合理主義への皮肉が込められているようだ。
    人間への復讐が果たされたようなラストシーンにぞっとする。


    ≪パニック≫
    これまた失業者“私”が主人公。職業紹介所の出口で“パニック商事”の求人係から呼び止められ、就職試験を受けることになる。指定された飲み屋でKという男と出会い、酒を飲んで酔っ払った“私”。翌朝どこかのアパートの一室で目覚めると、ベッドの側にKの血まみれの死体とナイフが。“私”は妻を残したまま逃げまわり、自首することなく盗みを働き、しまいには【本当の】殺人を犯してしまう。なぜ【本当の】なのか?実はKは死んでいなかった。Kの死体はその後の“私”の行動を調べるためのドッキリだったのだ。“私”は見事採用され、そして“パニック商事”の正体が明かされる……。
    犯罪者はまことに生産の発展にコウケンするものである。泥棒が錠前を発達させた。
    贋金作りが、お札の印刷を発達させた。詐欺が顕微鏡の需要をました。犯罪者は社会のために不可欠な要素である。P70
    安部公房らしい皮肉たっぷりの視点。
    最後の、殺人犯になるか、ばれずに犯罪を続けるかの二択は、道徳的な問いだった。
    またしても結末は不気味。

    社会のブラックな部分を見せるかのような、ホントウにあったら怖い話。
    特に失業者問題が深刻な現代じゃ正直笑えないかも。


    ≪犬≫
    犬嫌いの画家S君が愛犬家の女との結婚をためらい、S君以上に犬を心底憎む“ぼく”に相談しにきた。いや、相談というよりは、弁解のほうが正しいだろう。その後、S君が描いた気味の悪い犬の絵に手違いでついた「妻の顔」というタイトルがきっかけで、妻は出て行く。さらには、犬が突然しゃべりだし、犬との闘いの果てにS君は死んでしまう。

    読んでいて、自分も犬が嫌いになりそうな話。
    飼い主と犬の関係をひっくり返すことで、犬も人間も同じようなものなのかも知れないと思わされた。


    ≪変形の記憶≫
    敗戦期、戦場でコレラに罹り味方少尉に射殺されてしまったK。
    その魂が肉体を離れて生きた将校たちに着いて旅を始める。Kを殺した少尉も途中で自害し魂となり、死体から離れた魂の視点から語られる話。

    肉体の不自由さを魂となって知りながら、なおも生にしがみつこうとしてしまう人間の滑稽さを表現した話だと思う。


    ≪死んだ娘が歌った≫
    「変形の記憶」と同じ発想で、舞台を戦後の貧困層、主人公を女性にした話。死後の女性が記憶をめぐるように魂の旅をする。過去の恋の相手の名前がK。


    ≪盲腸≫
    自身の盲腸のあとに羊の盲腸を移植した男、K。人類の飢えを克服するための新学説の研究材料として、高額な月給の代わりに実験台となった元失業者。
    食事は藁を、顎の力を振り絞って摂る。藁しか食べなくなってしまったKに家族は戸惑う。
    藁を食べ続けるうちKは性格まで変わってしまい、新しい人類の可能性を目の当たりにした世間の賑やかな反応とは裏腹に、家族は普通の暮らしができなくなる。Kは次第に衰弱し、実験は失敗、Kは普通の人間に戻った。Kに向けられた最後の一行が怖い。

    外では飢えが、本当の飢えが、再び彼を待ちうけて... 続きを読む

  • 「鉛の卵」は面白かったがあまり安部公房の作品ぽくなくて、
    海外のSF作品のように感じた。くせが無いというか。
    「棒」は昔教科書で読んだ。これが一番好きかも。

  • 安部公房の作品は書評や解説などで深い意味合いを指摘されているが、
    自分はそういうのが理解できないためか、イマイチ面白味がわからない。

    しかし、この短篇集は非常に読みやすく、多分にSF要素を含んでいながらも内容が理解しやすい。
    また読みたいかと問われたら悩むが、十分面白かった部類に入る。

  • 表題作2編を含む全12編の短編集。
    社会風刺に満ちた作風や秀逸な比喩を交えた特徴的な文体、シュールなアイデアなどとても楽しめた。
    特にSF色の強い表題作の2短編がお気に入り。
    「盲腸」での食事の描写が良くも悪くもとても気持ち悪く、一番印象的だった。

  • 「鉛の卵」が一番オススメ!

    結末にドキリとさせられますΣ(゚д゚lll)

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