燃えつきた地図 (新潮文庫)

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著者 : 安部公房
  • 新潮社 (1980年1月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121147

燃えつきた地図 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「失踪した主人を探して欲しい」
    この時点で、安部公房を何冊か読んできた人なら、見つかることはないことは想像に難くないだろう。したがって、見つからないのである。
    いなくなった人を探して見つからないというテーマは「密会」と似ており、安部公房作品らしくどの登場人物ものらりくらりと本質を語らない。主人公もフラフラと本質に突っ込まず、心理描写を見ながら、読者がどんどん焦らされていく。プロットとしても「密会」の昼間版というところ。とはいえ、あちらほどディープでえげつない描写が有るわけでもないので、慣れていなくても割と読みやすい1冊となっている。安部公房の準初心者におすすめしたい。
    安部公房作品の読み解きの難しさの一つとして、やたらと複雑な建物などが出てくることがあるが、本作は車であちらこちらに移動し、それらの位置関係がしっかりと描かれているために理解しやすい。沿う感じてドナルド・キーンによる解説を読んだら、しっかりと書かれておりました。安部公房に興味を持ったのなら、解説付きの文庫本版をおすすめします。

  • 現実と夢の間で交錯する真の記憶と偽の既知感、表と裏が反転した世界。レモン色のカーテンが白と焦茶の縦縞に変わった時、失踪人を追跡していた主人公と失踪人の妻の世界はひっくり返り、主人公と失踪人の影がぴったり重なり合っていく。「自分が何処にいるのか…自分が、本当に、自分で思っているような具合に、存在しているのかどうか…それを証明してくれる他人」の存在と共有された記憶は、自分が自分で在り続けるための地図でもある。どこにも帰属できなくなった孤独な主人公のアイデンティティーの崩壊と、都会の壁の中に埋没していく過程は、生と死の境を目撃しているような恐怖感があり(デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』でいえば、レストランの裏にいた、顔が判別できない浮浪者の放つ恐怖感。社会での「死」を象徴する存在)、終盤の主人公にはこの世に存在していない人間のような非現実感が漂っている。

  • 失踪した男を捜してもらひたい。といふ依頼を受けた興信所の調査員。
    依頼人は男の妻。しかし彼女の話は要領を得ないのであります。手掛りも顔写真1枚とマッチ箱だけ、といふありさま。
    重要なことは何も答へず、すべては弟が仕切つてゐる、と繰り返すばかりなのです。

    調査員の「ぼく」は、僅かな手掛りから調査を開始しますが、その肝心の弟(胡散臭い)は死んでしまふし、情報提供者だつた筈の田代君の証言は二転三転し、「ぼく」はますます迷宮に迷ひ込むのでした。
    読者も「ようこそ迷宮へ」とばかりにふらふら誘ひ込まれ、不安に苛まれてゆくのでございます。

    いたづらに観念的にならず、物語としての作りがしつかりしてゐますね。小説の面白さといふものもたつぷり読者に与へてくれる作品と申せませう。『砂の女』-『燃えつきた地図』-『箱男』と連なる作品群は、今から思ふとほとんど奇跡と呼べる存在ですなあ。
    たぶん今でも入手は容易であります。読みませう。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-212.html

  • 夫が失踪した、という女性からの依頼を受けた調査員が巻き込まれる不可思議すぎる出来事のあれこれ。
    弟も謎なら夫も謎だし、決着つくかと思いきや、ラストますます迷子になるという……やはり安部公房であった。

  • 今まで読んだ安部公房の本は、独白系が多かったのだが、この作品はめちゃくちゃ会話がある。会話もまた素晴らしい。間の取り方が恍惚的。

  • 安部公房は好きだけれど余り入り込めなかった作品でした。当時の町の様子や時代を知っている大人が読むと、もっと感じる事が出来るのかもしれない。
    当時とかけ離れた街に住む僕ら世代には、理解できない事が多いのかもしれない。それほど街は変化したのだと思う。
    安部公房は演劇にも力を入れていて、演劇での要素が徐々に小説にも表れている気がする。

  • 安部公房らしい、じわりじわりと気づくと嵌る異世界感。とりわけ秀逸に迫ってくる感じが読後の余韻になる。

  • かなり面白かった、が、すこし冗長すぎるところがあり、後半はこっちが息切れする。

  • 安部公房の不条理は、さまざまな形を変えた自己喪失であることがほとんどだと思うのだけれど、この長編もそのカテゴリ。失踪した夫を探して欲しいという依頼者と、胡散臭いその弟に振りまさわれる興信所の調査員が主人公。彼自身も自立して成功した妻と別居しており、ふわふわと根無し草のような一種の家出状態。

    基本的には探偵ものっぽい趣で、行方をくらました男が自ら出て行ったのか、それとも依頼者である妻と義弟が共謀して何かを隠ぺいしているのか、さまざまな可能性を疑いながら、一見それなりの真相に近づいていくように見えるのだけれど・・・

    そこは安部公房なので無事に事件が解決してめでたしめでたしで終わるわけがない。個人的には探偵自身がその探している男ではないのかというエンジェルハート的オチを予想していたのだけれど(ある意味あながち間違いでもない?)こうしてまた新たな失踪者が増殖していくのだなと思うと虚しい。自分自身もまたいつかふと、その虚無に陥らないとも言い切れないのが怖い。

  • pon

    失踪したある男を追っているうちに気がつけば自分自身のアイデンティティが失われていきいつしか自分の地図を失い失踪してしまう……燃えつきた地図というタイトルはアイデンティティの喪失の比喩かしら?メビウスの輪のようにぐるぐる回る安部作品特有の世界観。追うもの、追われるものがいつの間にかするっと入れ替わっているというのは安部作品では良く見るモチーフ。映画になってるみたいだけどどんなんなんだろう。2013/227

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